少し雨が降りそうな気配がしている18時過ぎのジプシーアヴァロンには、6人編成のYeYeバンドが登場。苦楽を共にしてきたこれまでの4人に、新たに2人を加えた新体制の初セットだ。

YeYe（Vo / Gt）のエレキギター弾き語りの“リマインド”からライブはスタート。メンバー5人もゆったりと聞き入っている。爪弾くタッチや後半で歪んだ時の音の質感にエリオット・スミスが重なるようなインディー然としたギターと、歌謡的で伸びやかな歌声が映える弾き語りに、聴衆もゆったり座りながら聞き入っている。

続く“Paddle”で徐々にバンドが合流し、抑制されたビートから一気に盛り上がる展開に、一人立ち上がった外国人のおっちゃんが陽気にはしゃいでいる姿がとても印象的。ハンドマイクで優雅に歌う最新リリースの“確かな午後”でもパッドの柔らかな打音がアヴァロン全体に広がり、和やかな時間が流れていく。

どうやら降りそうだった雨はあがったらしい。YeYeは「スペシャルゲストの虹さん出てるわ」と僕らの後方を指差し、振り返った空にかかる虹。ロマンチックな自然の悪戯もあいまって（他のステージからは見えたのかな？）、なんだか僕らもピュアで優しい気持ちになっていくようだ。

続いてはそれぞれのプレイを披露するメンバー紹介の時間だ。senoo ricky（Dr）、浜田淳（Ba）、そして田中成道（Key）は鍵盤ではなく踊り出したのもなんだかあたたかい、いつものYeYeバンド。そこにインターンとして（わざわざインターンTシャツを作ったらしい）加入した山内弘太（Gt）と吉岡哲志（Syn / Pad）。senoo rickyと山内はグリーンステージで出演した折坂悠太の重奏メンバーで、浜田と吉岡はエレクトロ・ミュージック・ユニットのSawa Angstromで共に活動。YeYeも含め京都の人間関係が色濃く現れた家族のような面々だ。

僕は普段京都のメディアで書いているので個人的にかなり馴染みのある面々だが、そういうことを知らないはじめての人でも、気の置けない関係性は伝わってくることだろう。メンバー紹介からそのまま移行した“STEP IN TIME”でも、以心伝心の滑らかなバンドサウンドは、目を閉じてまるごと感じたくなるような情感を伴って、アヴァロンの空気に浸透していく。

寝そべっている人もちらほらいて、続く“暮らし”でも、優雅な演奏を思い思いに楽しんでいるよう。MCも関西のノリを感じさせる漫談のような雰囲気。今回の衣装がウェス・アンダーソンの映画『ライフ・アクアティック』へのオマージュなことなどを和やかに語るこの感じは、YeYeバンドだからこそのもの。“おとな”や“素っ頓狂”でもハッピーなグルーヴを肌で感じる。疲れからか微睡んでいる人もいるが、それもまた幸せな時間だろう。

そして浜田のベースと簡素な打音がバンドを駆動する“I SEE THE FOREST YOU SEE”に続いて、最後は再びエレキギターを持ったYeYeと、山内のギターが柔らかく織り合う“アフターザムービー”。潤沢な余白を感じる弾き語りにしみじみと浸り、ジプシーアヴァロンは贅沢な時間を過ごした充実感で満たされていた。