FUJIROCK EXPRESS '22

LIVE REPORTPYRAMID GARDEN7/31 SUN

MIZ

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Photo by 馬場雄介(Beyond the Lenz) Text by 阿部仁知

Posted on 2022.7.31 16:49

昼前のピラミッドガーデンがよく似合うMIZの優しい調べ

前夜祭から3日間を過ごしいよいよ身体にガタを感じはじめながらも、最後の一日を悔いなく過ごそうとする人々の活力を感じる、最終日昼前のピラミッドガーデンの空気感が大好きだ。残念ながらキャンセルとなった優河 with 魔法バンドに代わって出演したT字路sも、多分素晴らしいライブをしたのだろう。そんな残り香をほんのりと感じる11:30頃のステージ。MIZの2人がゆったりと椅子に腰をかけた。

MONO NO AWAREの八丈島出身の2人が組んだ、アコースティックユニットのMIZ。MONO NO AWAREは昨年レッドマーキーを沸かせていたことを覚えてるが、MIZとしてはじめてのフジロックだ。「虫の鳴き声より音が小さいことでお馴染みのMIZと申します」と告げゆるやかにはじまった“春”で、玉置周啓(Vo / Gt)と加藤成順(Vo / Gt)のアコギと歌声が響きわたる。“君にあった日は”でもみんな座ったり寝そべったりしながら、飾り気のないシンプルな弾き語りに耳を澄ませている。

普段は喫茶店や美容室など、音を出すために存在しているわけではないところでライブをしていると語り、はじまったのは“パレード”。MIZの音楽はどんな環境にもスッと馴染むのが特徴的だが、ここピラミッドガーデンとも抜群の相性を見せている。少し耳慣れない八丈島の言葉に行ったことのない遠くの風景を感じながら、ノスタルジックな気持ちにもさせてくれるどこか不思議な心地。19年の同じ時間にここで観たYAKUSHIMA TREASUREの姿もなんとなく思い起こさせる。

僕の目の前に座っていた5歳かそれくらいの子どもは、あまり関係ないかのように草と戯れていたが、2人の歌に不意に「やんやややんや〜」と呟いたり、こういう感じが愛おしい。(それからも奔放な様子がとても愛らしく詳細に書きたいくらいだが、あとはご両親と僕の胸に留めておこう)

例えばAlex Gのような海外のインディーフォークのニュアンスも感じさせる“空砲”でも、アコギのアンサンブルが心地よく響く。ちょうど日差しが強くなってきた“夏が来たら”に続いて、“夏の終わり”は後方のフードエリアの声も聞こえてくるほどに控えめな指弾きと歌なのだが、そういった環境音ごと肌で感じられるのもまた気持ちがいい。

そして2部構成らしい今日のセットの1部最後の“ジョーク”も、加藤のハイフレットのストロークが気持ちよく玉置のギターと絡みあっている。途中で1部最後と言ったのはまさかの間違いだったらしいが、本気なのかジョークなのか、いずれにせよこういうところも彼ららしい。春から夏にかけての季節の流れを感じさせる1部であった。

2部では昨日のヘヴンで石橋英子のバンドメンバーも務めていた、マーティ・ホロベック(Gt)が参加。“Where did you go?”や“かんかん照りの夏に”でベースのように奏でるマーティのギターの低音が絡みあい、1部ともまた違った広がりを感じさせる。

1部と打って変わって、今年3月リリースの最新作『Sundance Ranch』から立て続けに披露する2部のMIZ。玉置がギターでリズムを刻む“芝生”では、「寝転んで微睡むのにうってつけだった」という歌詞が辺りの状況と一緒すぎて思わず笑ってしまったが、MIZはこういう偶然が本当によく起こる。

牧歌的な“クロスロード”では「終わり方がわからん!」と玉置がギターをかき鳴らしジャムセッションのようになっていき(これ多分いくらでもやれるだろうな)、最後は“バイクを飛ばして”の美しい調べにうっとりとしながら潤沢な1時間は終幕。

この後ジプシーアヴァロンで代打出演することが急遽決まったそう(公式アプリの通知より早かった。こういうリアルタイム感も今年のフジロックの大きな特徴だ)。そちらでもシチュエーションで響き方が変わるMIZの音楽が楽しめることだろう。

[写真:全9枚]

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