LIVE REPORTNAEBA SHOKUDO7/29 FRI
おとぼけビ〜バ〜
狂乱の苗場食堂、凱旋のおとぼけビ〜バ〜!
BONOBOやヴァンパイア・ウィークエンド帰りの人々が憩いの時間を過ごすオアシス、時刻は24:30。ほど近くの苗場食堂は、前夜祭でもレッドマーキーを沸かせたおとぼけビ〜バ〜の出番だ。「この4人には少し狭いのでは?」とも思っていただけにレッドマーキーで遠目に見られたのはとても嬉しかったが、京都のライブハウスで何度も体験してきた身からすると、苗場食堂のいい感じの雑味こそが似合いそうな気がしていた。その予感は間違っていなかったようだ。
苗場食堂と書いたちょうちん、寄席のめくりのような紙にはおとぼけビ〜バ〜の名前。祭り囃子で登場した4人は早くも雰囲気が漂っているが、そんな苗場食堂に“あきまへんか”、“ハートに火をつけたならばちゃんと消して帰って”、“Love Is Short”など、激情のパンクスが次々と叩き込まれていく。
フジロックの不特定多数の前で演奏する姿は僕にとって逆に新鮮にも感じたが、“いまさらわたしに話ってなんえ”や“週6はきつい”でも、より直情的でとんがったバンドサウンドが清々しく刺さってくる。よよよしえ(Gt)のハイポジションに構えたSGがこれでもかと冴え渡っているじゃないか。
そして“ジジイ is waiting for my reaction”や“アイドンビリーブマイ母性”を矢継ぎ早にドロップ。ガレージの軽快さやハードロックのダイナミズム、ポストパンクのような変拍子も織り交ぜながら、そんなややこしいことは考える暇もない2分にも満たない一息の演奏にすべてをブチ込む圧倒的な明快さ。呼応するように前のめりに踊る人、なにかすごいものを見ているかのようにポカーンとしている人。色んな人がここにいる。
「日本のみなさんはじめまして」とシニカルに語るあっこりんりん(Vo)だが、Coachella FestivalやPrimavera Soundなど世界最大級のフェスティバルの熱狂を伝え聞いてきたオーディエンスからしたら、この4人の勇姿は半ば逆輸入的な凱旋のようにも感じられたことだろう。だがワンマン公演の宣伝をしたりギャラが少ないから物販を買ってくれと語ったりと、等身大のバンドのままここ日本の苗場で迎えられている情景は、なんだか感動的にさえ思ったものだ。
タイトルコールに爆笑しつつも絶妙に笑えない恨みつらみを、時にコミカルに、時に荒々しく表現するおとぼけビ〜バ〜。MCでも言っていたように“こんな時間まで残ってくれた物好きなジジイのみなさん”だからこそ、前夜祭以上に解放的なフジロッカー達も思う存分楽しんでいるようだ。
「どんどんいこうぜ!」と“リーブミーアローンやっぱさっきのなしでステイウィズミー”、“孤独死こわい”、“脱・日陰の女”と畳み掛け、最後は“あなたわたし抱いたあとよめのめし”まで一直線。アンコールも18秒の“いけず”で一瞥もくれず即立ち去るあっこりんりん。痛快すぎる。40分の濃厚な時間はあっという間に過ぎ去っていったが、終演後口々に感嘆の言葉をつぶやいていた苗場食堂の聴衆におとぼけビ〜バ〜の姿が強烈に刻み込まれたことだろう。
[写真:全10枚]