FUJIROCK EXPRESS '22

LIVE REPORTNAEBA SHOKUDO7/30 SAT

與那覇有羽

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Photo by リン(YLC Photograpghy) Text by 石角友香

Posted on 2022.7.31 00:30

日本最西端の島から苗場に届いた歌声

ジャック・ホワイトとTRIBAL CIRCUSのサウンドチェックに挟まれたのはタイミングが悪いが、苗場食堂には少し珍しい演奏家がステージを始めようとしていた。沖縄音楽や奄美大島の音楽とも違う、沖縄本島とも違う独自の言語の与那国語で歌われる民謡がある。ちなみに日本最西端の島が与那国島だ。

そこからはるばる苗場にやってきてくれたのは與那覇有羽(よなは ゆうう)、36歳。民謡の世界では若い世代に入るのだろうか、幼い頃から与那国の音楽に触れ、沖縄県立芸術大学で琉球古典音楽の習得も目指したことがあるそう。が、与那国に戻り、民謡や伝統歌を歌い継いできたらしい。ステージは山口和昭の澄み渡る笛の音で始まる。新潟県の山の中で聴くことは二度とないかもしれないが、ここで鳴っていることになんの違和感もない。アンプリファイされた爆音に疲れた人たちが徐々に集まり、耳を澄ます。與那覇有羽は方言で喋って、自分で標準語に訳して話すのだが、沖縄の言葉以上に馴染みがない。旋律も微妙に違うのだが、やはり言葉の違いが印象を異なるものにしているようだ。

面白かったのがわらべうたで、子どもをあやすのだが、あまり泣いていると猫や犬に噛ませるぞと脅すのだそうだ。また、雨ごいの唄も、大人は10日に一度ぐらい降ってほしいが、子どもは降るなと願うという内容。民謡はただの祈りの唄じゃなく、いろいろな立場の人の気持ちを少しユーモラスに描くもののようだ。そう言えば奄美大島同様、大人になると出ていく人が多いそうで、悲しい唄も多いそうなのだが、最近では会うは一生の付き合いと捉えて、前向きな唄として解釈しているそう。

與那覇のまっすぐ腹に響く声と與那覇桂子のよくまわるこぶしと突き抜ける高音。あまり独特の唱法という印象はなかったが、人の生声のパワーは心地よい。振り返ると苗場食堂周辺にもまったり椅子でくつろぐ人がかなりいた。

与那国島ではカチャーシーでにぎやかに踊ったあとも、出会った人の命に良い風が吹くように祈るのだそうだが、今日はさらに、出会ったあなたにまた会いたいという感謝の唄も加えて、締めくくってくれた。いや、まだまだ知らない日本の言葉、たくさんあるなと思う反面、旋律に乗ると昔から知っていた心地になる。それが民謡の力かもしれない。

[写真:全10枚]

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