FUJIROCK EXPRESS '23

LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/29 SAT

DERMOT KENNEDY

  • DERMOT KENNEDY
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Posted on 2023.7.29 15:52

甘く切なくソウルフルな歌声に酔いしれる

一聴して、その声と心に突き刺さるメロディにヤラれてしまった。

午後の日差しが容赦ないホワイト・ステージの一段上がったステージ後方にキーボード、ベース、ドラムのサポート・メンバーが歓声に迎えられ、並び立った。背の高い彼らがバックライトに照らされ、ステージに浮かぶそのシルエットは、まるでファッション・ショーのセットのように均整が取れていて、つい見惚れてしまうと、その隙に黒いスウェットと黒いパンツ姿のダーモット・ケネディがステージに颯爽と現れた。

この炎天下に黒づくめの格好は少々心配になったが、彼はギターを持つと、ハスキーかつ力強い声量で“パワー・オーバー・ミー”、“ワン・ライフ”と続けて歌い上げた。あっという間に観客たちを彼の作品に引き込み、ホワイト・ステージは大歓声に包まれる。彼の歌声はとびきりソウルフルで、誤解を恐れず言えばブルージーなのだ。その声1音で、聴く者をあの日の情景へと連れ去ってしまう。

アイルランド出身のシンガー・ソングライターであるダーモット・ケネディは、その力強く憂いを帯びた歌声と、心の痛みをすくい上げるような秀逸なメロディ・メーカーだ。多くの支持を得た2019年発表のデビュー・アルバム『ウィズアウト・フィアー』は全英アルバム・チャート初登場1位を獲得し、今回のライブでパフォーマンスを体感できることを楽しみにしていた人も多いはずだ。その証拠に国籍問わず、早くから観客がホワイト・ステージに集まっていた。

ライブでは音源よりも強く感じられる彼のしゃがれ声の成分が、焦燥や切なさをさらに増幅させていた。そして、信じられないくらいのイケメンボイス。さらに、本人も超絶イケメン。ステージに現れた瞬間に危うく夏の恋に落ちかねなかった。

楽器隊のメンバー紹介を終えると、“アン・イブニング”、“ドント・フォゲット・ミー”で心を直接揺さぶるようなメロディ・ラインを畳みかけてくる。楽器隊も曲の熱量に呼応するように、演奏の熱量を上げていった。ダーモットもまた、曲ごとにギターを頻繁に持ち替えているのも印象的だった。時には、アコギから別のアコギへ。彼自身の音へのこだわりもそこで見て取れた。

“グローリー”では、魂の叫びとも思える歌声がホワイト・ステージに木霊する。観客と一緒に「Singing to me Glory」のフレーズを熱を込めて歌い切り、「Thank you very much」とダーモットは客席に感謝。“アフター・レイン”でも「You won’t go lonely」のフレーズをスエットの袖で汗を拭いながら観客と一緒に歌い、大きな歓声と拍手が起こった。その光景を見たダーモットは「Beautiful!」と、彼の歌がフジロックの会場に届いていると大きな手応えを感じているようだった。観客も終始身体を揺らし、笑顔で歌声に酔いしれ、次の“アウトナンバード”のころには自然発生的に合唱が発生するようになっていった。

ダーモットの歌声に気を取られている間に、実はライブ中盤でサポート・ドラマーが交代していた。ダーモットの歌声に呼応するように力強いドラミングで観客を魅了していた彼(長髪に上半身裸の人)は途中から細かくドラム・セットを調整していたが、何らかの理由で交代となったのだろう。そこからもう一人のサポート・ドラマーは大忙しで、突然の交代からステージの進行を止めぬよう、曲のリズムを刻みながらスタッフと連携を取り、最後の曲直前までドラムの調整を繰り返していた。そのプロの仕事をここに一筆しておきたい。

ドラムのトラブルを乗り越え、甘い歌声に誘われるように“キス・ミー”へ。突き抜けた爽やかさを感じさせるサビに観客の気分も最高潮に。会場の後方から観ていると、外国人の観客たちはカップルが多いなと思っていたら、ライブが始まるや否や恋人同士あちこちでキス発生。いやー、こんなライブを観たらロマンティックな気持ちになってしまうのは大変よく分かる。それは、とてもピースフルな光景でもあった。あの歌声には抗えない。

ラストは“サムシング・トゥ・サムワン”をフジロッカーたちと大合唱。ダーモットは「Keep gose on. Non stop」とこの時間を惜しむように歌い、最後は演奏を止め、ホワイト・ステージに響く観客の歌声で幕を閉じた。

「Thank you so much Fujirock!」

人々は、ダーモット・ケネディという甘くほろ苦いソウルに酔いしれ、これから生きていく道を噛み締めるようにそれぞれの歌声を重ねて、最高の時間を過ごした。

<Set list>
1. Power Over Me (ext.)
2. One Life
3. An Evening
4. Don’t Forget Me
5. Moments / Glory
6. After Rain
7. Outnumbered
8. Kiss Me
9. Something to Someone

[写真:全10枚]

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7/29 SATWHITE STAGE