FUJIROCK EXPRESS '23

LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/29 SAT

SLOWDIVE

  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE
  • SLOWDIVE

Posted on 2023.7.29 21:53

没入のその先にあった、夢の果ての光

開演10分ほど前に向かうと前方の入り口が規制で入れないようで、慌てて後方から向かうもPA横くらいまで行くのが精一杯。レッド・マーキーは多くの人でごった返している。いや、わかるよ。再結成後の2014年も、22年ぶりのアルバム『Slowdive』リリース直後の2017年もレッドだったし、ここで観るスロウダイヴはもう、約束された最高みたいなもんだから。みんなそれを知っているからなのかどうなのか、5人のメンバーが登場した時にはものすごい歓声が湧き上がる。

サイケデリックな映像がスクリーンに投影される中、“Slomo”からライブはスタート。少しハスキーなニール・ハルステッド(Vo / Gt)の歌声と透明感のあるレイチェル・ゴスウェル(Vo / Gt)の歌声が溶け合うヴォーカル・ワークは健在で、重厚なギターサウンドとずっしりとしたニック・チャップリン(Ba)のベースが身体に響くあのサウンドスケープ。“Catch The Breeze”の後半ではクリスチャン・セイヴィル(Gt)のギターもガンガン歪み、粒が際立つサイモン・スコット(Dr)のドラムがこれでもかと暴れ回っていて、“Star Roving”の演奏もやたらとドライヴ感がある。まるで夢の中にいるような甘美な陶酔感に早速浸りつつも、僕は若干の違和感を覚える。

とはいえみずみずしいギターから幻惑の世界に雪崩れ込む“Crazy For You”や、ぐわんぐわんしたサウンドが恍惚へと誘う“Souvlaki Space Station”、甘美なギターが響く中でカプセルの錠剤をかたどった無数のネオンライトがスクリーンでたゆたう“Sugar For The Pill”など、音に揺られてまどろんでいるだけでも最高なサウンドは確かなもの。リズムという概念さえ空間に溶け出していくような身体のゆらめきに任せて揺れているだけで気持ちいいし、仮にこのまま寝落ちしたとしてもこの上ない幸せだろう。疲れも結構溜まってくる2日目の夜のライブは、17年のような昼過ぎよりもさらに映えているし、半屋外という環境が生み出す反響のおかげか、やはりレッド・マーキーはシューゲイズ・サウンドがよく似合う。ごった返したレッド後方からはレイチェルの髪型がSIAっぽいことくらいしか見えないが、そんなことはほとんど関係ないようなサウンドが響き渡っている。

だが続くインディー感のあるざっくりとしたサウンドが光った“Alison”あたりで、まるで睡眠時の途中覚醒のようにハッとさせられた。かつてないほどバンドサウンドがダイナミックになっている。無骨に刻むギターから暴風雨のような轟音に突入する“When the Sun Hits”だって、シューゲイズというよりむしろオルタナのような情感がある。9月リリースのアルバム『everything is alive』からの先行カット“kisses”もとてもシンプルな演奏ながらバンドのダイナミクスをこれでもかと感じたもので、最終曲“Golden Hair”も一人歌うレイチェルの歌声からゆったりと怒涛の演奏に移行し、レッド・マーキーを飛び越してどこまでも遠くへ響いていくようなバンドサウンドが鳴り渡っていた。

本当にびっくりした。僕はスロウダイヴを楽しむ作法のようなものをわかっているつもりでいたが、まだあの没入のその先があったのか。終演後にギターのフィードバックが鳴り響く中、僕はレッド後方でしばらくぽかーんと佇んでいた。前方ではずっと歓声がこだましている。その先にはまばゆくゆらめく光が見えた。

[写真:全10枚]

TAGS
7/29 SATRED MARQUEE