LIVE REPORT RED MARQUEE 7/30 SUN

SLOWDIVE

轟音の渦巻く耽美な白昼夢に浸る

今、冷静になってから思い返してもみても、心地の良い轟音を浴び続けた1時間のステージは最高だったし、もうあのまま美しい音に包まれながら息絶えてしまってもよかった。

19年ぶりに再結成して初の来日を飾った2014年のフジロックで伝説的なライブを行って以来の出演。かつ、22年ぶりの新譜リリース後でもあった。開始前から、レッド・マーキー内は想像以上に敷き詰められている多くの人々。フッと全ての照明が消えて真っ暗になると、大歓声が上がる。静かな空気感の中で、観客達が今か今かとメンバーの登場を待ちわびているのがピリピリと伝わってきた。ブライアン・イーノの“Deep Blue Day”と共に、メンバーが登場し、一層の大歓声が捧げられる。

まず、1曲目は最新アルバム『Slowdive』から“Slomo”。のしかかるようなヘヴィな音に、ニール・ハルステッド(Vo.Gt)とレイチェル・ゴスウェル(Vo.Gt)の2人の声が、ほどよく溶けあうように甘く響く。ボーカルは歌詞を伝えるためというよりも、音の一部として歌われている。リズミカルなドラムに、繊細なギター、そして緩やかなベースと、各サウンドがそれぞれに主張し、空間で混ざり合っていく。感傷的にも、白昼夢を見ているような気分にもさせ、とても居心地がいい。

中盤では、“Avalyn”や、“Souvlaki”、“When the Sun Hits”というSlowdiveをシューゲイザーという一つのジャンルでの代表格へと決定付けた曲たちと共に、最新作から“Star Roving”がセットリストの中に組み込まれている。新譜がリリースされてから約2か月だし、勿論実際に聴いたのは初めてだった。でもこの曲は、今後の表題曲と言ってもいいんじゃないかと思う。淡々とした心地の良いリズムの中に、ポップさが見える。どんどん轟音の鳴る美しい世界に引き込まれてしまう気がした。更に、新しくなっていくSlowdiveを見ることができるのではないだろうか。

“Suger for the Pill”の残響を残しつつ、最後は、シド・バレットのカヴァー曲“Golden Hair”の少々不気味なイントロが静かに鳴った。開始直後にレイチェルがステージを離れてから、他のメンバー4人での演奏が始まる。2分程度の短い原曲が、約10分にも渡って、美しいメロディが奏でられる。色鮮やかなライトが照らされ、耽美な白昼夢を見ているかのようだった。

もし、耳で得られるドラッグがあるとしたなら、Slowdiveのような音楽だと思う。気が付けば、音の波にどっぷりとハマり、しばらくの間は抜け出せなくなってしまう。一曲一曲が音の洪水のようで、トリップが止まらなくなる。しかし、大きな音に疲れてしまうことも、耳に負担を感じることも一切ない。大きくて温かな音にまるっと自分が包み込まれているような不思議な体験だった。

ロマンチックで鮮やかな照明に、思わずうっとりしてしまうほどに浮遊感漂う轟音の雨。あんな素晴らしい演奏を生で見ることができたなんて、未だに信じられない。単独来日公演は必ず近いうちに行って欲しいというのはさておき、次回は夜のホワイトステージで心地よい音に包まれたい。

 Photo by 古川喜隆  Text by あたそ Posted on 2017.7.30 15:50