FUJIROCK EXPRESS '23

LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/30 SUN

BALMING TIGER

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Posted on 2023.8.2 21:49

熱狂のウォール・オブ・デス! 多国籍オルタナティブK-POPバンドの実力

「バーミングタイガーの新しくなった公演」「今から始まります」と明らかにGoogle翻訳っぽい日本語がレッド・マーキーのステージ上に映し出された。

念仏が聴こえ、木魚を叩くようなSEの流れるステージには、キャラ絵顔の箱を被った5人のメンバーがDJブースの前に静かに並んでいる。もう1人はDJブースに立っているようだ。割れんばかりの大歓声に迎えられて。

この日のレッド・マーキーの注目度は並大抵ではなかった。観客席前方に多くのフジロッカーが詰めかけていたが、日本人が多かったのか、日本以外のアジア人が多かったのかも判別がつかなかった。アジア系の海外勢フジロッカーがこんなに多いフジロックは個人的に初めてだ。年齢層も20〜30代といったところか。彼らが注目されていたのは知っていたけど、比較的若い世代にここまで人気とは。

バーミング・タイガーはアジアの有名な軟膏「タイガーバーム」からその名を取り、多様な才能が集まった音楽集団で、自分たちのことを「多国籍オルタナティブK-POPバンド」と表現している。メンバー総勢11人それぞれが個々でも活動を行う若手気鋭のクリエイティブ集団だ。

今回、フジロックのステージに登場したのは、メンバー11人のうち、パフォーマー4人とプロデューサー2人の計6人。リーダーでプロデューサー兼クリエイティブ・ディレクターのサン・ヤン、緑の髪がトレードマークで有名なラッパーのオメガ・サピエン、シンガーソングライターでラッパーのマッド・ザ・スチューデント、紅一点のR&Bシンガーであるソグム、低音ボーカルのBjウォンジン、ヴィジュアル・アーティストでプロデューサー兼クリエイティブ・ディレクターのホン・チャニだ。ステージに登場しなかったメンバーは割愛するが、他にもDJ・音楽プロデューサー、映像監督、マーケター、A&Rなど裏方仕事も含め、それぞれがパフォーマンスだけではなく、職種的にも違った個性を持ち合わせているハイブリッドさだ。

“JUST FUN!”を聴いたときからバーミング・タイガーのファンだったというBTSのRMをフィーチャリングし、話題を呼んだヒットシングル“SEXY NUKIM”(日本でもBTSファンに知られる存在となった)が、いまのところ日本では一番有名な曲であろう。

彼らの音楽性やPVに触れると伝わってくるが、彼らは現代の若者を代表して、新たな価値観を提示しようとしている。ヒップホップと韓国のK-POPをベースにしつつも、国境を越えたアジア文化をクールなものとして世界に発信していこうとする気概があるのだ。

1曲目は、力強いビート・トラックにオメガの男臭いフロウが乗る“Kolo Kolo”。“Kolo Kolo”は韓国語で咳を表すオノマトペだ。繰り返される「ハクナマタタ」のフレーズがキャッチーだが、ヤンチャ感が強い。ヒップホップやパンクなどがベースにあるが、最近こういった暴れ感のあるグループはあまりいないなと一発で思わせてくれる。“Jiāyóu”でソグムのラップが入り、会場から「わぁ!」と歓声が漏れる。リズム・トラックからヒップホップとプリミティブな民族音楽的要素との融合を感じられるし、振り付けも洗練された、というよりヒップホップに生物的な肉体表現や記号性を過剰に足している感じで面白い。というか、バーミング・タイガーってめちゃくちゃ踊るんだね。

「Fuji Rock! What’s Up!?」「Open your eyes! Right now!」と会場に呼びかければ、大歓声が上がり、もう場内はオーバーヒート状態。フジロッカーの反応だけで、彼らの注目度の高さが分かる。ライブ冒頭の日本語スライドは、“Armadillo”のPVで差し込まれた「バーミングタイガーの新しいミュージックビデオ」文字画像のセルフ・パロディだ。このPVはオメガが過ごした日本で撮影されている点も面白い。彼は母国・韓国を離れ、日本やアメリカ、中国で育った、いわゆるサード・カルチャー・キッズで、そのアイデンティティの複雑さがバーミング・タイガーの自由さの一因でもありそうだ。

とあるバースが近づくと、DJブースから松葉杖をついた(!?)マッド・ザ・スチューデントが飛び出してきて会場全員がビックリしたが、気にせずソグムに次ぐ高音ラップを繰り出した。どうやら怪我をしたようだが、それに負けじとマッドの元気なフロウが気持ちいい。ステージ中心で2人が踊っているときは、他の4人は端に避けていたり、振り付けがしっかり決まっていたり、彼らはプロダクションとしてかなり見せ方にこだわっている印象。曲が終わると、マッドはDJブースへと戻った。

ソグムをフィーチャーした“Moving Forward”から“BuriBuri”で観客は大盛り。ソグムは髪をかき上げてセクシーにダンス。「Shake it Shake it」「BuriBuri」のキラー・フレーズに、ダンスも含め、日本でもTikTokなどで流行りそうな気がする。もしや、もう流行っているのかな?

“Kamehameha”でも感じるこの民族音楽っぽさは、韓国の音楽から来ているのだろうか。韓国のその辺りの音楽を知らないので断言できないが、世界的な流行方向へ洗練されていくK-POPに、土着的な成分を色濃く注入しているようなミクスチャー感覚がある。曲名は、あのカメハメ波由来だし。

「F◯ckin’ Crazy Fuji Rock!」とサンが興奮気味にMC。資料ではパフォーマーの区分には入っていなかったリーダーでプロデューサーの彼もライブで歌うし、踊りまくっている。ホンも長髪を振り乱し、アグレッシブに踊っていた。一体これは。

ここで、マッドが「僕ノ足ハ怪我シマシタ」と原因不明だが怪我の報告。フジロッカーから心配の声が出そうになると、自身がラップをするアッパーソング“Field Trip”へ! 続く“Riot”では、オメガとともにラップし、杖を振り上げ、怪我をもろともしないパフォーマンスを見せた。大丈夫なのか。ソグムが「It over Frog」と曲紹介すると、幻想的な“Frog”へ。ソグムの高音ボーカルに対し、オメガがかなり低音のラップを乗せていく。アメリカや日本のヒップホップ、オルタナティブ・ロックなどの枠に収まっていないサウンドは刺激的だ。

「You sure are only sexy?」と、Bjウォンジンが官能的な低音ボイスで呼びかければ、“SEXY NUKIM”が始まる合図と歓声が上がる。重力場強めの重低音が鳴り響き、上半身裸のオメガとホン、真ん中にBjウォンジンが立ち、PVで魅せた「アジアン・セクシー」を体現する振り付けを踊りながら歌う。たぶん、普段はMCで参加しているマッドがホンの代わりに踊っているんだろうけど、松葉杖をついた足ではしょうがない。首をセクシーに回す振り付けや、セクシーすぎるBjウォンジンの超低音ボイスにみんなクギ付けだった(本当にセクシー)。マッドも自分のバースではやっぱり出てきて、片足ジャンプで歌うのだった。レッド・マーキーはアイドルを迎えたような熱気だ。

オメガが日本語で「アツイ、アツイ」「フジロック、カッコイイ?」と話したあと、バーミング・タイガーでフジロックに出ることは夢だったと語ると、観客から惜しみない拍手が贈られた。続いて行われたのは、メンバー全員で“Bodycoke”のサビでの振り付けを観客へレクチャー。一緒に歌い、一緒に踊り、観客との一体感を上げていく。ストリートなPOPさ全開の代表曲“JUST FUN!”、マッドがMCを務める超キャッチーなPOPソング“UP”(マッド何度も出てきて大変)、ハードコアめな“Sudden Attack”ではマッドは松葉杖を捨てて膝をついた状態でヘッド・バンキングするなど終始大暴れで、個人的に観た今回のライブの中で一番の熱狂がそこにあった。

メンバーは騒げフジロック!と煽りに煽り、「Are you ready? Sure!?」と壁をぶち破らんとするようなアグレシッブなビートの“POP THE TAG”へ。曲の途中で、観客に左と右に分かれるようにジェスチャーするメンバー。……ん、ウォール・オブ・デスをやろうとしている? 1回目は曲と観客のタイミングが合わず中途半端な感じになってしまったが、すかさず次の間奏部分で「Fuji Rock! Are you ready?」と2回目へ。フライングで動いてしまった観客たちに戻れ戻れとメンバーが指示を出すなど、この一連のやり取りにはメンバーも観客も大盛り上がり。気を取り直して“1、2、POP THE TAG!”で観客全力のウォール・オブ・デス!!! 久しぶりに見たレッド・マーキーでのモッシュ状態に鳥肌が立った。

「Amazing」「I love you!」と、次々にフジロッカーたちへ敬意を表すメンバーたち。君たちはあなた自身を信じているかい?と語りかけるオメガ。大歓声が会場に響きわたり、最後の曲“Trust Yourself”へ突入。オメガの高速ラップで沸き、「Trust Yourself!」と彼は観客に向け、時折胸を叩きながら何度も強く叫んだ。そして、またもウォール・オブ・デス。どんなけ好きなんだ、みんな!「Let’s go Fuji!!!」の合図でぶつかり合って大はしゃぎだ。オメガは「I love you Fuji Rock!」と叫び、メンバーも「Unbelievable!」と、フジロックの場で生まれたエネルギーに心を打たれているようだった。ダメ押し4回目のウォール・オブ・デスではメンバーも観客も残った力を出し切り、爆発的な盛り上がりを見せて、ライブは幕を閉じた。「Just a history day!」とオメガの手は高く上げられた。

観客から惜しみない拍手を送られる中、「Trust F◯ckin’ Yourself!」とオメガは叫び、舞台袖に消えたのだった。「ありのままの姿でいい」という彼らのアツいメッセージは、フジロッカーたちに確実に届いただろう。しかし、まさか今年ウォール・オブ・デスが観られるとは。その光景はコロナ禍前の日常と同じものだが、とても懐かしく、尊く、そして輝いて見えた。

バーミング・タイガーは、フジロッカーの胸に大きな傷痕と筋肉痛を残した。盛り上がり方、一体感を考えると、フジロック2023の中でもかなり上位に食い込むアクトではなかっただろうか。帰ったら筋肉痛に効くというタイガーバーム、塗ってみようかな。

<Set list>
1. Kolo Kolo Intro
2. Kolo Kolo
3. “Unreleased song no.1
4. Armadillo
5. “Unreleased song no.2
6. “Unreleased song no.3
7. “Unreleased song no.4
8. “Unreleased song no.5
9. Field Trip
10. “Unreleased song no.6
11. Frog
12. SEXY NUKIM
13. “Unreleased song no.7
14. JUST FUN!
15. “Unreleased song no.8
16. “Unreleased song no.9
17. POP THE TAG
18. Trust Yourself

[写真:全10枚]

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7/30 SUNRED MARQUEE