FUJIROCK EXPRESS '23

LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/28 FRI

君島大空 合奏形態

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PHOTO BYsuguta Instagram
TEXT BY石角友香

Posted on 2023.7.28 17:36

次に踏み出すアプローチを目撃できるフジロック

灼熱から逃げ場のないFIELD OF HEAVENで、長いサウンドチェックが行われている。君島大空(Vo、Gt)をはじめ、西田修大(Gt)、新井和輝(Ba)、石若 駿(Dr)の4人のそれはひょっとしたらトラックメイキングとか、曲作りもこんな感じで進んでいくんじゃないだろうか?というお得感たっぷり。そして、いい大人の男性ではあるが、楽器やエフェクト、シンセで“ツッコミ合う”感じは小学校高学年から中学生ぐらいの男子のノリだ。君島大空 合奏形態という名の部室。もとい、実験室かワークショップのニュアンスが強い。

今年頭についに1stアルバム『映帶する煙』をリリース。ツアーも行ったことで、実は歌のメロディのポップさ、クラシックギターからハードロックなど特徴的なギターのセンス、そしてこの合奏形態のメンバーとのアンサンブルをこれまで以上のリスナーに敷衍した君島。どちらかといえば2021年のフジロック出演のアプローチがアルバムを予見させるモノだったと思う。今回は既発曲はリアレンジ、さらに未発表曲も披露するという、アルバムのその先の試行が見て取れた。

1曲目の“世界はここで回るよ”では全員が何らかのシンセなど生楽器以外を駆使し、同じところでループしたり、ワープしたり、現実に異なる位相を作り出す。おそらくこのライブのためのアレンジを作り込んできたのだろう。短く、テクニカルな、まるでスティーヴ・ヴァイバリのフレーズのある短いインターミッションを挟んで、新井のぶりっぶりなベースサウンドが空気の壁を振動させる“笑止”へ。それにしても赤い口紅をさしたジェンダーレスな様子の君島が殺人的なギターサウンドを鳴らすと、無敵!という言葉しか浮かばない。

西田がギターでシンセっぽい音色を出す“装置”も、石若の重いキックに灼熱でやられた脳を揺らされる“火傷に雨”も、ことごとくこれまでの演奏より太々しくなっている。かと思えば、一切のてらいを排除したようなイノセントな歌が耳に入る“19℃”の隙だらけの美しさは何だ?

ここから、未発表の“玩具霊インター”と題された、シーケンスの暴走やコラージュ的な構成に、音楽にもあるスラップスティックな側面を感じて、誰がどの音を発しているのかに目を凝らし、耳を澄ます。平たくいえばこの日のナンバー・ワンやんちゃナンバーだった。そこから“散瞳”、や、配信されたばかりの新曲“嵐”につながる、このメンバーならではのキャッチーさが新鮮に響く。ポップの中にアバンギャルドは存在するし、逆もまた真なり。その最新版を聴くことができた。

フジロックのメインステージは大体、1時間の見応えあるセットだが、この日はさすがにカバンの中のミネラルウォーターがすぐお湯になる気温でもあり、終盤は4人のグルーヴにただゆらゆらしているだけで、限界に挑戦している気分になってしまった。そんな中、西田がメンバーの明日以降の予定を本編の流れの中で話し、「駿は明日は名古屋?和輝はレコーディング?俺は明日UAさんのステージがある」と言えば、君島は「明日はPYLAMID GARDENで一人でやります」と、告知。今年はこれでも掛け持ちが少ない方だと思うのだが、他のステージに出たり、形態違いでライブがあったりするのも、まさに“フジロックあるある”だ。あ、すでにぼんやりしていたが、ラストの“遠視のコントラルト”で、珍しく君島がオーディエンスを指さして“君は”と歌っていたのが珍しいな、と思った。バンドが次に踏み出す場面に居合わせることができる、それもフジロックならではだと思う。

[写真:全10枚]

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7/28 FRIFIELD OF HEAVEN