LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/30 SUN
NEAL FRANCIS
Posted on 2023.8.1 01:02
ヘブンを文字通りヘブンたらしめるグルーヴ
フジロック’23、早くも最終日。夕方に差し掛かり、今年も着実に終わりに近づいている。寂しさが増していく時間帯の中、フィールド・オブ・ヘブン(以下ヘブン)へと向かう。今回の出演陣の中でも最も楽しみにしていた注目株の一人がこれからヘブンに登場する。アメリカはシカゴから遥々やってきたNEAL FRANCIS(以下ニール)だ。今回の取材で、初のヘブン出演アーティストとなるのが彼だ。
ヘブンに到着して、やっぱり私はここが好きなんだとあらためて実感。立ち並ぶお店が少し減ってしまったのが残念だが、ピースフルなヴァイブスが空間全体に広がっているのだ。それは、もちろんヘブン出演陣の音楽によるところも大きいのだが、フジロックではをヘブンを根城としている住人が大勢いる。その人たちによるラヴ&ピースで自由な会話こそが、この雰囲気を創り上げていると思っている。そして、ヘブンを愛する人たちが集うライヴは、めちゃくちゃ盛り上がるのだ。
ニールはコロナ禍のためキャンセルとなった2020年のフジロックに出演予定だった。なので、ようやく実現した念願の初来日にして初演となるのが本ライヴになるのだ。音楽は彼が影響を受けたアーティストを確認すれば自ずと分かろうというもの。アラン・トゥーサン、Dr.ジョン、レオン・ラッセル、ザ・バンド…ヘブンという場がドンピシャということがここからうかがえるだろう。過去にこれらアーティスト・バンドたちが繋がりのある先達たちが出演しているのだから。
開演時刻に今年亡くなった高橋幸宏氏と坂本龍一氏追悼の意を込めてと思われるYMOの“RYDEEN”がSEとして流れる中、ギター、ベース、ドラムを務めるメンバーが登場した。全員が上下赤のアディダスのジャージ姿(まさかYMOの赤い人民服を模しているわけじゃないよな?)。ニールが様々な花と鳥(鶴?)が描かれたスーツに身を包んでいて、長めの髪とともにヒッピーのような装いでステージに姿を見せた。1発目はニールがキーボードで弾き語りはじまる“Say Your Prayers”。大好きなのが、中盤以降に転調し盛り上げるパートだ。踊り、飛び跳ねるしかチョイスはないグルーヴがたまらない。ギターも畳みかけるようにソロをかましグルーヴに輪をかけていく。
「私の名前はニールです。ありがとうございます!」と日本語でとても流暢に挨拶をするニール。昨晩のキャロライン・ポラチェックといい、初来日を前に日本語を覚えコミュニケーションを取ろうと準備をしてきているアーティストが多い印象だ。愛とリスペクトが感じられ、こんなアーティストを大好きになってしまったのは私だけではないだろう。
続く“Change”も疾走感をもって転調し、終盤に向けてニールと3名のバンドが一体となって創り出す怒涛のセッションにオーディエンスは大盛り上がりだ。これぞヘブングルーヴ。みんな大好きだよね。そのままファンキーになだれ込んでくる“She’s A Winner”。原曲を壊し、まったく異質なファンクネスを即興で曲調も展開もどんどん変え、自由に表現している。絶妙なタイミングでドラムのソロを入れてきたりとバンドのスキルの高さはもちろんのこと、結束力の高さも相当なものだ。これだからライヴはやめられない。
ニールがキーボードをリズミカルに叩きはじまった”Very Fine”。「フー!」とのかけ声を契機に深く黒いグルーヴが渦を巻いていく。それにしても、ニールとバンドは何て楽しそうに演奏するのだろう。こちらも呼応してどんどん楽しくなってくる。バンドとオーディエンスの間のあるべきコミュニケーションがここに存在しているのだ。
「シカゴから遥々やってきたよ。フジロックに呼んでくれてありがとう!」と別のキーボードに移り、軽快にかついなたく引き倒す。そして、Can’t Stop the Rain”へ。はい、最高!60s~70sのヴィンテージなロック好きを唸らせるこのリフ、メロディに展開。中盤のセッションはまるでミーターズだ。バンド渾身一体の演奏力、オーディエンスとの一体感、そして楽しさ、間違いなく本セットのハイライトと断言して間違いないだろう。
流麗でグルーヴイーなキーボードの調べが入ってきて“Alameda Apartments”を発進。間奏部で息の合ったバンドによるセッションが飛び出だすと、頭を振り乱すニールの軽快なソロが乗ってくるんだ。こんなのもうひたすらに踊るしかないだろ!
入りと中盤のジャジーなセッションが圧巻だった“BNYLV”、往年のプログレッシブロックの雰囲気でキーボードとギターのソロパートが秀逸だった“Sentimental Garbage”を締めくくり、本来は予定されていなかったであろう“She’s A Winner”をアレンジを一新して再演。時間が残されている限り演奏し、集まってくれたオーディエンスを楽しませようとする心意気が感じられ、涙が出そうになってしまった。そして、高いミュージシャンシップを持つ彼らだからこそできる芸当だ。
彼らが生み出す音をいつまででも浴びていたくなるような至福の1時間だった。まだまだライヴで体験したい楽曲がたくさんある(“This Time”とかさぁ!)。ぜひとも単独公演ツアーで再来日を果たしてほしい!
[写真:全10枚]