LIVE REPORT - PYRAMID GARDEN 7/29 SAT
MOROHA
Posted on 2023.7.30 13:11
真正面からぶっ刺さる、MOROHAの魂の言葉たち
キャンドルの灯が優しく光る、0時前のPyramid Garden。周りは寝静まり、ゆったりとした雰囲気。2日目のトリ。後方まで満員。後ろのカーテンから、UK、アフロの順にステージに登場し、「MOROHAと申します!よろしくどうぞ!」というアフロの大声で、会場にはピリッとした緊張感が走る。
アコースティックギターの強気なイントロが流れたと思えば、“チャンプロード”。ひとつひとつの魂が込められた言葉たち、大きな身振り手振り、掛け合いのようなギターの音が目も耳も奪う。特にMOROHAの2人にとってはフジロックの出演は特別なものなのだと思う。深夜だからとか、Pyramid Gardenだからとか、そういうことは一切関係ない。1時間1本勝負。目の前の私たちに向かって、本気でぶつかり、何かを訴えかけようとするのがわかる。
しんみりとしたギターのサウンドから始まる“革命”。この曲を聴くと、自分の人生でも何か大きなことが起こるんじゃないかといつも思わされる。言葉のままの意味が心にダイレクトに届くアフロの強すぎる言葉たち。人生は上手くいかないことばかりで、失敗のほうが多いのだと思う。だからこそ、響く。自分みたいな人間でも何かできるんじゃないか。今より明るい場所に導いてくれるような熱気が、あのステージの上にはあった。
前回のPyramid Garden出演後、Twitterでエゴサーチをしたら「うるさかった」「眠れなくなった」という苦情ばかりだったという。ささやかな笑いが起きたと思えば、「キャンプサイトの皆さん、おはようございます!!!!!」と今までで一番の大声で挨拶をするアフロの姿には笑ってしまう。今回も絶対に苦情の嵐になってしまうじゃないか!(笑)
“俺のがヤバイ”では、フジロックのこのステージに合わせた歌詞に変えて雄叫びをあげる様子には、歓声が上がる。そのあとは、“勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ”、“tomorrow”が続く。泥臭いな、と思う。暑苦しいな、とも思う。だからこそ、すべてが突き刺さる。抑揚のつけられたひとつひとつの言葉を絶対に聞き逃したくない。息をのむのを忘れてしまうほど、ステージの2人を見入ってしまう。後ろから男性がアフロを後ろからぎゅっと抱きしめるシーンもあったが……あれは誰だったのだろう。
どうしても切り離せない家族との苦い記憶を描いた歌詞を温かいメロディに乗せた“ネクター”、ライブができないコロナ禍で感じた葛藤を謳った“主題歌”は、6月にリリースされたばかりの新アルバムからの2曲。経過していく時間に比例して身振り手振りがどんどん大きくなっていくアフロ。身体を目いっぱいに使い、全身全霊だからこそ遠くから眺める観客たちにも伝わる。最後のMCでは、「どんだけすごくない奴かもわかって欲しい」「俺たちがどんな人間なのか見てやってください」と言っていた。かっこつけず、自分に近い距離の感情を歌うからこそ、魅了され、心を鷲掴みにされるのだ。
悔しくて眠れない夜を描いた“夜に数えて”のあとは。“エリザベス”と、“六文銭”。すべての力を振り絞って最後まで、細部まで気を抜かず、駆け抜けるようにギターをかき鳴らし、歌い終える。MOROHAのステージはいつも優しく背中を押してくれる。あと1日経てばフジロックも終わって再び日常に戻っていく。それでも何かできるかもしれない。才能なんて、何度失敗したって関係ないのかもしれない。私だって頑張らないと。いつもそんな風に思わされる。Pyramid Gardenは温かな拍手に包まれていた。
[写真:全10枚]