FUJIROCK EXPRESS '24

LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/28 SUN

キタニタツヤ

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Posted on 2024.7.29 18:52

キタニタツヤの躍進はまだまだ止まらない

キタニタツヤという人間はとても興味深い。人間性、思想、背景、キャリア、視点・・・それらどれをとっても興味深い人間だと思う。言い換えれば特異でもあったりする。しかし、だからこそ、こんなにも共感や支持を得ているんだろう。彼の曲や言葉の意味を知ると、毎回得られる納得感がすごいのだ。そんな彼が一躍有名になったのは、2022年にリリースされた”スカー”(TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇』OPテーマ)と、“青のすみか”(TVアニメ『呪術廻戦』懐玉・玉折 OPテーマ)の大ヒット。それらの実績を引っ提げ、昨年の紅白歌合戦に初出場、今年5月にはデビュー10周年記念として日本武道館での初ライブを成功させた。そんなキタニがフジロックのステージに初めて立つ。

ライブ前、リハで本人が出てきて曲を丸々1曲2曲やるアーティストをたまに見かけるがキタニもそのタイプだ。そこで演奏したのが代表曲の“ハイドアンドシーク”と“スカー”の2曲だった。リハとはいえファンにとっては嬉しい選曲に、ライブ本編への期待値はより高まる。スタート時間の16時になると、ハードビードなBGMにキタニタツヤとバンドメンバーが登場。ライブは、ヘヴィーなギターフレーズのイントロが印象的な“聖者の行進”からスタートした。いきなりハンズクラップがオーディエンスから湧き起こる。曲通してヘヴィーでダンサブルでダイナミックなアレンジがファンのロック魂に火をつける。アウトロからシームレスにTVアニメ『戦隊大失格』OP主題歌“次回予告”へと続いていく。アニメとのリンク度が高いこの曲だが、ライブではそのことを忘れさせるほど、ロックでテクノで最高にエキサイティングな曲に変貌を遂げ、ファンに新鮮な感覚を与えていた。続く“悪魔の踊り⽅”では、聴き手を強く扇動するような歌詞とロックサウンドで、そこにライブならではの強いビート感だったり、アシッド風なアレンジが効いていて、「オマエら踊れ!」と言わんばかりのあおりに、踊らずにはいられない。

短いMCを挟んで、ファンキーなベースイントロから始まったのは初期のライブ定番曲“Stoned Child”。イントロからループされるベースとサンプリング音から生まれるグルーヴに乗せられるように踊るオーディエンス。そこにキタニの髪を振り乱しながら叫び歌う姿も相まって、最高にダンサブルな曲になっていく。矢継ぎ早に“Moonthief”が始まると、マシンガンのように歌うキタニにヘヴィーなビートが乗って、よりダンサブルな雰囲気を作り上げる。

ライブ中盤に突入すると、キタニのソングライティングの幅の広さがより如実に表れてくる。四つ打ちダンストラックの“夜警”、ポップ/エモ/ヒップホップが融合したような初期の名曲“I DO NOT LOVE YOU.”、キタニのヴォーカルにアヴァンギャルドなアレンジが印象的な“PINK”、インダストリアルなサウンドにダウナーなポエトリーリーディングパートやラップパートのある“夜がこわれる”、そして自身の至らなさをエモーショナルなメロディに乗せて吐露した“⼤⼈になっても”と、バラエティに富んでいて聴いていて全く飽きない。であって、キタニタツヤの人間人生哲学と多面性という共通項はしっかり持っている。そこに彼の凄さがある。

そんなキタニ・ワールド全開のライブはまだまだ続く。“人間みたいね”では「ナイル・ロジャース風のファンキーなギターカッティング」と「アーバンな雰囲気のメロディ」という相反する要素の組み合わせからくる違和感すらも心地よく聴かせ、ファンキーなギターカッティングはそのままにテンポアップした“憧れのままに”では、先ほどのアーバンな雰囲気から一転シティポップ風なアップリフティングなトラックにオーディエンスは思いっきり踊らせた。

リハでの2曲も含め“ほぼ”ベストヒット的なライブは、怒涛のようなクライマックスを迎える。デビュー10周年記念ソングとしてリリースされた“ずうっといっしょ!”は彼の原点であるバンドサウンドを意識したストレートなロックソングで、ライブがもうじき終わってしまうという予感を抱きながら聴いているとどんどん没入していくのを感じる。畳み掛ける壮絶なアウトロで曲が終わると、キタニが「みなさんに会えてよかったです。また会いましょう」と感謝の言葉を告げると、ラストはキタニの押しも押されもせぬ代表曲となった“青のすみか”だ。キタニの押しも押されもせぬ代表曲となったこの曲は、彼がデビューしてから培ってきたモノが全て詰め込まれた集大成的な歌で、多くの人に響くべくして響いた曲だと思う。たとえそれが仮にアニメタイアップでなくてもだ。

冒頭に「キタニタツヤという人間はとても興味深い」と書いたが、それは彼の誠実な姿勢、リスナーにクリエイティブに真摯に向き合う正直な人間性がベースにあるからだ。“ずうっといっしょ!”の前のラストMCでキタニが口にしていたこと──

「自分はキタニタツヤとしてずっと活動していて、普段あまり音楽に触れたことのないような人で音楽にハマりそうな人たちに向けての『音楽の入り口』になりたくてアーティストになることを選びました。けど、ここ(フジロック)に来てる皆さんは、普段から音楽に触れている人たちだから、今日は自分がやりたいように楽しみながら演らせていただいてます。みなさんのおかげです。ありがとう」

── この言葉が全てを物語っていると思う。

キタニタツヤの躍進はまだまだ止まらない。近い将来、彼がグリーン・ステージに上がる、そんな光景が観たい。そう素直に思えるライブだった。

<セットリスト>
01. 聖者の行進
02. 次回予告
03. 悪魔の踊り方
04. Stoned Child
05. Moonthief
06. 夜警
07. I DO NOT LOVE YOU.
08. PINK
09. 夜がこわれる
10. 大人になっても
11. 人間みたいね
12. 憧れのままに(yama x キタニタツヤ cover)
13. ずうっといっしょ!
14. ⻘のすみか

[写真:全9枚]

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7/28 SUNRED MARQUEE