LIVE REPORT - GREEN STAGE 7/26 FRI
THE KILLERS
20年ぶりに現る、ロック・エンターテインメントの頂点
ザ・キラーズが20年ぶりにフジロックに帰ってきた!20年前の出演ステージはレッド・マーキーで3番手のスロット。デビューアルバム『Hot Fuss』(今年リリース20周年!)をリリースしてすぐのタイミングでの来日だった。当時からUKロックファンを中心に話題になっていた本作を提げてのステージだったわけだが、残念ながら筆者はその時のライブを目にしていない。代わりとして翌年開催された初の日本ツアーでのライブを観たのだが、まだ青さこそ残っていたものの、その圧倒的な“楽曲力”でオーディエンスを驚かせた。
あれから20年。彼らは世界最高クラスのロック・エンターテイナーとなり、遂にグリーン・ステージのステージに立つことに。彼らのライブはいつ観ても最高だ。まだ青さが残った初日本ツアーの時も、2ndアルバム『Sam’s Town』の日本ツアーのライブの時も、そして成熟した2018年の武道館の時も、いつも最高であり続けた。だからこそファンは、まだスタートまでかなり時間があるにも関わらず、グリーンの前方エリアとPAの両サイドエリアを埋め尽くすほど集まっていたのだと思う。流れていた場内BGMが終わり、暗転とほぼ同時にオーディエンスの期待が一気に弾けるような大歓声が湧き上がった。照明がつくと、ステージセットの全容が明らかになった。ステージ中央横にはキラーズのロゴの頭文字「k」のオブジェ(以下kオブジェ)が置かれ、ステージ上のところどころには小さな高台が設置されている。そこにメンバーがステージに登場し、最後に現れた黒の上下に白いジャケットを羽織ったブランドン・フラワーズ(Vo/Syn)の姿が見えると歓声はさらに大きくなった。
今回の来日は、昨年リリースされた2枚目のベストアルバム『Revel Diamonds』を引っ提げ進行中の『Revel Diamonds Tour』の中に組み込まれたもので、セットリストはベスト・オブ・ベストな楽曲揃いだった。大アンセム“Somebody Told Me”から始まったライブは、のっけから曲通してシンガロングが起こり、ブランドンがkオブジェの後ろに設置されたシンセサイザーで弾き語った“Enterlude”から“When You Were Young”に続く流れは。セカンドアルバム『Sam’s Town』の“それ”で最高の一言に尽きる。1stアルバムがUKロック的と称され(一部では揶揄もされ)、彼らが自分たちのルーツに立ち返って作られた『Sam’s Town』。彼らの最初の大きな分岐点だ。ここから彼らは、自分たちの作りたいサウンドを大事にしつつも、常に故郷「ラスベガス」を心に刻み込み、楽曲をアップデートし続けた。そういった意味でも、1stの楽曲もまた、彼らにとっての音楽的ルーツなのである。
これもまた彼らのルーツである80sニューウェーブ風なロックソング“Jenny Was a Friend of Mine”から“Smile Like You Mean It”、女性コーラスをフィーチャーしたソウル・チューン“Shot At The Night”、そして音程キープとか関係なしに全力でシャウトするブランドンの姿が印象的な“Run for Cover”に見られる緩急ついた曲の流れも秀逸で、オーディエンスのテンションを煽りまくる。そして、中盤の目玉はなんと言っても“For Reasons Unknown”だろう。客席に「Can I drum?(ドラムを叩いてもいいですか?)」と書かれたプラカードを掲げる青年がいて、それを見つけたブランドンが、なんとその青年をステージに上げ“For Reasons Unknown”のドラムを叩かせたのだ。・・・というこの流れ、実は6年前にも行われていた。当時グラスゴーで開催されたフェスティバルにヘッドライナーとして出演したザ・キラーズが、同ライブにてブランドンが「Can I drum?」と書かれたサインを観客の中から見つけ出し、そのファンにドラムを叩かせた。もしかしたらそのオマージュを彼(ワタルさん)がしたのかもしれない。
もはや想像していた以上のエンターテインメントになってきたこのライブだが、締めるところはビシッと締めるのが彼らのキャリアが成す業だ。序盤の静かでドラマティックなメロディから後半にかけて壮大なポップへと展開していく“A Dustland Fairytale”。この曲名をリネームし、あのブルース・スプリングスティーンをフィーチャリングに迎えた“Dustland”をセルフカバーしたり、“Runaways”で拳を何度も突き上げオーディエンスのハートを再び鷲掴みにする。
終盤に突入すると、壮大なイントロから始まるポップなダンス・ビートの“Caution”でもうワンランク上にファンのテンションを上げつつ、キラーズのスタジアムにおける絶対的アンセム“All These Things That I’ve Done”では大量の紙吹雪が噴射され、エンディングが近いことを感じさせる。するとアンコールではもはや反則級のアンセム3曲の連投。堂々としたサウンドのシンセ・ディスコや、ハイパーグルーヴィーなベースライン。コーラス隊のハーモニー、それら全てが合わさりカタルシスが生まれる“The Man”、キラーズ印100%全開のスペース・ロック“Human”、そしてラストは完全無欠のアンセム“Mr. Brightside”だ。前半をエレクトロニックなレンジで、後半をオリジナルアレンジで展開するスペシャルな“Mr. Brightside”はグリーン全体に広がるようなシンガロングを生み出した。
今晩、目の前で繰り広げられたのは、現代最高のロック・エンターテインメントだった。2009年に残した忘れ物を取り戻すためにフジロックが求めていたものであり、誰よりファンが待ち望んだ至高の時間だった。
<セットリスト>
01. Somebody Told Me
02. Enterlude
03. When You Were Young
04. Jenny Was a Friend of Mine
05. Smile Like You Mean It
06. Shot at the Night
07. Run for Cover
08. Running Toward A Place
09. Spaceman
10. boy
11. For Reasons Unknown (with Wataru)
12. Dustland (Are You Lonesome)
13. Runaways
14. Read My Mind
15. Caution
16. All These Things That I’ve Done
──Encore──
EN1. The Man
EN2. Human
EN3. Mr. Brightside (50/50)
[写真:全2枚]