LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/26 FRI
TEDDY SWIMS
Posted on 2024.7.27 04:24
その世界観に魅了されっぱなしの1時間
フジロック初日も16時を回った。先ほどまであれほど照りつけていた太陽が隠れ曇り空に一変したホワイトステージ一帯。これからここに今回のフジロック出演陣の中でも必見必聴のシンガーソングライターが登場するのだ。アメリカはアトランタからやってきたテディ・スウィムズ。周囲を見ると様々な言葉が飛び交い、海外からやってきたと思われるファンが多い印象だ。“Lose Control”の驚異的なストリーミング再生回数ばかりが取り沙汰され、昨年予定されていた初来日を果たせなかったことも影響しているのか、日本での知名度、扱いはまだまだ低いと言えるだろう。あの心を鷲掴みにして離さない歌声が生だとどう響くのか。ブリトニー・スピアーズやマイリー・サイラスにイン・シンクなど懐かしのポップチューンに身を任せながらステージ前方で登場を待ち構えていた。
開演2分前になるとDJ Koolの“Let Me Clear My Throat”が大音量で鳴り響き、問答無用に座っていたオーディエンスを立ち上がらせウォームアップを促す。心臓音のようなビートが打ち込まれると、2ギター、ドラム、ベース兼シンセサイザー、キーボードの計5名のメンバーが現れ、それぞれの楽器がある定位置に収まった。バンドが一斉にハードロッキンな音をかき鳴らすと、テディがグラサンにテンガロンハット、ルーズなフジロックTをタンクトップに仕立て、ラフな短パンジーンズという実にアメリカンな出で立ちで登場。足元は靴なしの白ソックス姿で何とも愛らしいのだ。髭面にスキンヘッドで頭にタトゥを入れてる様はランシドのティム・アームストロングに見えなくもない。
初っ端の“Goodbye’s Been Good to You”から、目を見開きソウルが込められた豪快な歌声を披露する。バックで支えるバンドのアンサンブルが絶妙だ。テディの歌を邪魔せず引き立てるとともに、個々の巧みさが光る演奏。完璧な出だしで一気にフロアに熱を送り込んだ。
“Broke”でブルージーなグルーヴが繰り広げられる中、ファンがステージ向かって広げていたお手製の旗を投げ入れさせ、サイン。サインしている間は何事もないかのように歌を一切止めず、かつ乱れさせることもなかった。テディのファンに対する優しさとともに、シンガーとしての矜持を感じた瞬間だ。
初めての来日に感謝を伝え、「I love you!」と連呼。更には今ここにいる自分の隣や周りにいる人たちを大切に、互いに優しくしろよと投げかける。集ったオーディエンスに対するテディの愛がダイレクトに伝わってきて目頭が熱くなった。“911”では自ら手をウェーブさせ、ハンドクラップする。この所作があまりに自然で、フロアに一体感を醸成していく。
大人の渋さが漂う“Devil in Dress”から“Funeral”の流れで超絶ドラムソロに繋ぎ「世界一のバンドだって言っただろ」とバックバンドを称えるのだ。曲間でタオルをバンドメンバーを仕草したりしてふざけ合う様子からテディとバンドの関係がいかに素晴らしいものかが伺える。母に贈る曲とシャニア・トウェインの“You’re Still the One”をカバー。この人の表現の根底には愛しかないのかもしれない。
終盤にはキーボードがあのひたすらに美しいフレーズを感動的に奏で、バンドが順にソロを繰り広げていく。“Lose Control”が投下された。生で堪能するテディの歌声はやはり最高。締めの“The Door”まで、圧巻の歌声はもちろんのこと、その暖かくも愉快な人間性、テディ・スウィムズというアーティストの世界観に終始魅了されっぱなしだった。