LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/26 FRI
YELLOW DAYS
Posted on 2024.7.26 15:22
HOTEL HEAVENはここ苗場
いよいよ始まったフジロック2024初日。12時を過ぎたころのレッドマーキーは、屋根の暑さなのか、日差しの強さなのかはわからないけれど、どことなくジリジリとしている(例年に比べれば過ごしやすいけど!)。その暑さにわずかな清涼感を与えてくれたのは、Yellow Daysだった。UKサリー出身シンガーソングライター、ジョージ・ファン・デン・ブロークによるソロ・プロジェクトだ。ふだんソウルやR&Bはそこまでな筆者だが、インディーポップな質感とどこか気だるそうな雰囲気に惹かれて、つい観てみたくなったのだ。会場はステージ左奥にドラム、手前にギター、左側にベースと3人のメンバーがステージに上がり、“WELCOME TO HOTEL HEAVEN”が始まった。
この曲は『HOTEL HEAVEN』と名付けられたアルバムの冒頭を飾るナンバー。しばらくして、灰色のジャケットにパンツ、白いTシャツ、赤い帽子、手には茶色の旅行カバンでYellow Daysが現れる。まるでバカンスに訪れた若者のようだ。彼の髪型は両サイドを剃ったポニーテールという印象(東京リベンジャーズでいうドラケンのような)だったけど、今はさらに短く、頭頂部の髪を市松模様のように残した、ほぼスキンヘッドなスタイルだった。1曲目の熱量のまま“MRS MOONLIGHT”へ突入すると、さらに彼の歌声がきらめく。エコーとリバーブがかかっていてもずいぶん迫力ある。ため息ですらソウルフルだ。
旅行カバンの上に靴を置いてから“Money Honey”のカヴァー。のけぞって寝そべるくらいの力いっぱいの咆哮を見せる。彼のヴォーカルは、腹から絞り出すというよりは、腹いっぱいの声がすぐに口から出てくるようなタイプで、その飄々とした様子がすごい。バンドメンバーも、あまり感情は表に出さすに淡々と演奏していて、鳴らしている音楽とのギャップが面白い。
“YOU’RE SO COOL”は、歪んでサイケデリックなギターバッキングと、モダンなベースの響きがマッチする。差し込まれるシャウトはバチッと的確に決まるし、全く隙がない。“FINER THINGS IN LIFE”のくっきりと立ち上がりのよい低音に、ざらざらとしたギター、ちょっぴり無機的なドラムソロ。ものぐさで退廃的なボーカルアプローチもかっこいい。全体通して結構な曲数をプレイしてくれたものの、大きな振り幅を感じられなかったのは彼らの方針だろうか。持ち味そのままに、もっと観客を鷲掴みにしてくれるようなアクションは、今後にとっておきたい。
正直『HOTEL HEAVEN』のジャケット写真がどこかウェス・アンダーソンっぽいことに引っ張られているが、それを加味してもしなくても彼の音楽はヴィンテージで、どこか色褪せた質感がたまらない。大都会のシティホテルでバカンスするのもいいけれど、新潟県のペンションでのバカンスもまた最高だということ、彼らもわかっている気がする。
[写真:全10枚]