LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/27 SAT
THEATRE BROOK
平和を信じる力
フジロックに何年か通っていると必ず目にする佐藤タイジという名前。ROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRAやアトミック・カフェトークなど、数々のステージに名前を重ねる彼のバンドこそ、THEATRE BROOKだ。フジロックは2000年から出演していて、来年デビュー30周年を迎える大御所バンド。初めて見るならば、やはりフジロックで見なければ。そう思い、13時すぎのフィールドオブヘブンにやってきた。中條卓(Bs)、沼澤尚(Dr)、2人のDJ(DJ 吉沢dynamite.jp、与西泰博)と、錚々たるメンバーとともに入場した佐藤タイジ(Vo,Gt)は、透明感のある白い羽織とパンツ、黒いTシャツで登場した。 ボリュームのあるグレーヘアがかっこいい。
DJがレッド・ツェッペリン“Immigrant Song”を流すと、そのまま“俺の手にはギター”。中條のベースが響き、佐藤のワウのきいたギターが軽やかに乗り合わせる。クリアかつ信念のある佐藤の歌声が、フィールド・オブ・ヘブンにまっすぐ広がっていく。そのまま佐藤はアコースティック・ギターに持ち替えて“ドレッドライダー”へ。晴れながらも雨がぱらつく会場に、さらに気持ちいい風を通すようなナンバー。右に左にステップを踏まずにはいられない。いえあ、と笑って“悲しみは河の中に”。DJのスクラッチと、力強いドラミング、知的なベースが絡み合う。佐藤はメンバーと目線をあわせ、力いっぱいにギターをかき鳴らす。
佐藤は「OUR GENERATION MUST END WAR」と書かれた緑色のプラカードを掲げ、「(ROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRAに出た)後藤くんにもらってきた」という。フジロックはこういうことやってもみんな理解してくれると思う、我々が生きている間に戦争を終わらせることができると思う、とまっすぐに語り、そのまま“無実の子”を力強く歌い上げる。するとヘブンの空はカッと晴れて、そこにお天気雨が降り注いだ。まるで天が味方しているようなこの瞬間は、とてもドラマチックだった。
続いて、新曲が続く。“わたしをアムスに連れてって”は、佐藤の妻がアムステルダムのホテル一覧を見ていたこと、「パパ、私をアムスに連れて行って」という娘のひと言から生まれた異国的なナンバー。会場はざっと雨が降ってきて、レインウェアの人々が踊り出すカラフルな光景になっていった。“白クマとボノボ”では、同じ遺伝子を持つチンパンジーとボノボそれぞれの習性を例に出し、「大事なのはprogress、no evolution。進化ではなくボノボです」と訴えかける。ボノボはメスがリーダーで、集団間で助け合うことができるそうだ。人間も大切なのは進化ではなく進歩だということを強く訴えかけた。
ラストは、いつでも音楽だけは最高や、と“ありったけの愛”。ありったけの力で歌う佐藤のなんとまっすぐなことか。会場はハンズクラップでひとつになり、それぞれが踊りながら、歌いながら、音楽へのありったけの愛を噛みしめる素敵なラストとなった。佐藤はふたたび、戦争は我々の世代で終わらせること、実現は可能だということを説いて幕は閉じた。
スケールの大きい話だけれど、佐藤の言葉にも行動にも説得力があった。私達はちっぽけで、ひとりが行動してもどうも無力に感じてしまうけれど、まずはTHEATRE BROOKを信じることからでいい。平和を信じる力こそが、これからの未来を作っていくんだと、彼らのライブを観てそう思った。
[写真:全10枚]