“梶原綾乃” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '24 | フジロック会場から最新レポートをお届け https://fujirockexpress.net/24 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Tue, 13 Aug 2024 04:03:22 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.6 あれもない、これもないフジロック https://fujirockexpress.net/24/p_7583.html Fri, 09 Aug 2024 07:18:03 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=7583 「おかえり!」と声をかけると「ただいま!」と応えてくれる……。前夜祭のレッド・マーキーにやって来てくれたみなさんと、そんな挨拶を交わして集合写真を撮影し始めたのは、2007年ではなかったか。初めてやったときには、オーディエンスがどう応えてくれるか、全くわからなくて、はらはら、ドキドキだったんだが、ものの見事にほぼ全員から「ただいま!」と返ってきたときにはめちゃくちゃ嬉しかった。フジロックが、あるいは、苗場が、年に一度、帰省するふるさとのようになっているのを実感したのは、この頃からだったかもしれない。

あれからすでに17年、相も変わらずそんなことを続けている。なにはともあれ、みんなの幸せな顔を見るのが嬉しいからだ。苗場音頭での盆踊りが一段落して、花火が上がったあと、レッド・マーキーの入口のテープがカットされると、この1年間、フジロックを待ちわびていた人達が、文字通り、堰を切ったように雪崩れ込んでくる。そして、DJ MAMEZUKAの絶妙な選曲で回されるレコードからあふれ出る音の洪水をかぶる彼らの幸せな表情ったら……ありゃあしない。それに魅入られた関係者や噂を聞きつけた出演者までもが、ステージからその光景を記録しようとカメラを構えている。どうやら、運営本部でもその様子が映像で確認されているようなのだが、ちっぽけなモニターで見るのと、現場にいるのとでは大違い。実際にそれを目の当たりにしてほしいと呼び出したのが、昨年までグリーン・ステージを担当していた、主催者スマッシュの新社長、佐潟氏。それに応えてわざわざやって来てくれた彼が「確かに、そうだね。実際に見ると……」と、口にしてくれたのが嬉しかった。

加えて、今年はステージ袖に腰をかけて、最初のバンド、USを待ちわびていたのが、フジロックを生み出した日高大将。言うまでもなく、彼の写真をフィーチャーして2021年に制作した「Wanted(指名手配)」Tシャツには「彼が最前線に戻ってほしい」という願いが込められていた。かつてfujirockers.orgが作ったTシャツで、これが桁違いのセールスを記録したのはなぜか? 多くのフジロッカーがそんな思いを共有していたからに違いない。嬉しいことに、昨年はクリスタル・パレスやどん吉パークに彼が出没。体調がすぐれないと耳にしていたにもかかわらず、今年はレッド・マーキーからグリーン・ステージにも姿を見せている。しかも、彼が惚れ込んだというUSのライヴを楽しんでいる姿を目撃したのは少なくとも2回。ひょっとしたら、それ以上足を運んでいたのかもしれない。

コロナ禍以降、なかなか本来のフジロックが戻ってこないことに苛立っているフジロッカーが多いことは百も承知だ。それでも、ここにいるだけで幸せを感じていた。奥地のカフェ・ドゥ・パリもストーンド・サークルもない。ジム・ウェストを中心に集まってきたDJたちがお気に入りの音楽を楽しむブルー・ギャラクシーは復活したものの、あの周りにあったワールド・レストランは見る影もない。昔からのフジロックを知っている人間にとってみると、かなり寂しい景色にも映る。それでも、「なにやら幸せ」な自分がいるのだ。どこかで読んだ記事に「フジロックで飲むビールがめちゃ旨い」というのがあったんだが、実にその通り。なにを食っても、なにを飲んでも、ここにいることでその全てが格別なものになっているのに気付くのだ。

何度もやってきている常連にとって、フジロックは盆と正月が一緒になった、里帰りのようなもの。懐かしい友や仲間に再会できる場所でもある。年に一度、ここでしか再会しない友人だって珍しくもない。それでも、どこかで同じような世界を引きずりながら生きていることを互いに確認したり、旧交を温めることになる。しかも、初めて出会っても、どこかで繋がっているような感覚に陥ることも珍しくはない。そして、この1年を振り返りながら、あ〜でもない、こ〜でもないと会話が続いていくのだ。

この1年でフジロックに馴染みのある人たちもこの世を去っている。そんな仲間やアーティストのことが頭をかすめるのも仕方がないだろう。そんなひとりがチバユウスケ。今年、1998年の「地面が揺れた」伝説のフジロックから、スタッフが記録し続けた彼の写真をフジロッカーズ・ラウンジで展示したのは、そんな勇姿が我々に焼き付いていたからだろう。土曜日にクラフトワークが、昨年亡くなった坂本龍一への敬意を示すように「戦場のメリー・クリスマス」を奏でて、「Radioactivity」への導入部のように使ったのが話題になっているが、彼も苗場に姿を見せたアーティストのひとりだった。

Photo by MITCH IKEDA

フジロック・エキスプレスの更新作業に使う本部テントの準備と取材活動のために、精鋭スタッフと共に苗場入りした火曜日、新たな訃報が飛び込んでいた。作業を終えた夕方、UKロックの源流と言っていいだろう、ジョン・メイオールが亡くなったことを知る。ご存知の方も多いだろう。彼の次男が、フジロックの第1回目から最重要スタッフとして行動を共にしてきたスマッシュUKのジェイソンであり、幾度となくDJとして、あるいは、ザ・トロージャンズというバンドを率いて出演してきたギャズは長男。いわば、ふたりともフジロックを語るときに欠かすことができない人物となっている。彼らにどんな言葉をかければいいのか……、かなり戸惑っていた。実の父親が他界したのだ。彼らが現場を離れても誰も文句は言えないだろう。が、ジェイソンは黙々とフェスティヴァルの準備に奔走し、少し遅れてやって来たギャズには予定通りにツアー続行することを告げられる。

規模で言えば、比較の対象にはならないことは百も承知なのだが、フジロックを触発することになった英国のグラストンバリー・フェスティヴァルに繋がる不思議な縁がメイオール親子かもしれない。後者の主催者で会場となる農場の主、マイケル・イーヴィスが大きな影響を受けたのは1969年に開催されたバース・ブルース・フェスティヴァル。そこで演奏したジョン・メイオールとブルース・ブレイカーズを見て、「自分もフェスティヴァルをやりたい」と思うに至ったと。今ではその中心人物として全てを仕切っている末娘、エミリーが口にしている。しかも、そのライヴのステージ裏にいたのが、まだまだガキンチョだったギャズとジェイソン。ずいぶんと大人になった彼らがフジロックで最もフェスティヴァル的要素を凝縮したパレス・オヴ・ワンダーからブルー・ギャラクシーの顔のような存在となっている。

1970年に始まったグラストンバリーは今年で54年目となり、1997年に始まったフジロックは、ちょうどその半分の27年目。苗場での開催が始まった1999年から25年の節目となることが今年は話題になっているのだが、フジロックのルーツと言ってもいい、アトミック・カフェ・ミュージック・フェスティヴァルが産声を上げたのは1984年と、40年前にさかのぼる。というので、あの時、スタッフとして関わった身として、今年はジプシー・アヴァロンで続けられているアトミック・カフェのステージに立って、当時の話をしている。

あれから、とてつもない時間が過ぎ去ったように思う。その間に多くの友達や仲間に関係者がこの世を去り、フジロックが始まった頃にはまだ40代そこそこだった筆者も、すでに高齢者となっている。今年、グラストンバリーの主催者、マイケルが車いすに乗ってザ・パークと呼ばれるステージに姿を見せている一方で、フジロック生みの親、日高大将は杖を片手に前夜祭のレッド・マーキーやグリーン・ステージに立っている。かつてのようにジープで会場内を走って、動き回っていた彼らを見られないのは残念だが、世界の西と東で目撃したこの光景は彼らの想いがそのままフェスティヴァルとなっているんだろうと思わせていた。

なにやら表向きには順調に復活しているように見えるかもしれないフジロックだが、さて、どうなんだろう。確かに、主催者からは「来年はあります」と耳にしているし、今年も会場を離れるときに見たゲートには、その日程が発表されていた。しかし、その言葉の裏に「再来年はわからない」というニュアンスを感じていた。なにせ、異常とも思える円安のピークが開催期間中。ギャラの支払いはドル建てが原則なので、おそらく、海外からやって来た出演者に支払われる金額が想定よりも遙かに膨らんでいるはずだ。加えて、チケットのセールスも全盛期から比較したら、貧しかったと聞いている。チケットが値上げされているといっても、利益が出ているとは考えられない。

だからなんだろう、どこかで唐突にフジロックがなくなってしまうのではないかという危惧感は拭えない。なんの前触れもなく、消え去ってしまうような怖さも感じているのが正直なところ。でも、もちろん、そうなって欲しくない。なぜなら、想像できないのだ。年に一度帰る故郷がなくなることは。フジロックのおかげで知り合ったり、仲良くなった友人たちと再会できる機会が失われるのには耐えられないように思う。

初めてここに来た人達はどうだった? 同じように感じる? また、来年もやってきたいと思った? もし、そうでなかったら、フジロックの魅力が失せているってことなんだろう。もし、そうだったら、フジロックがこれでも他に類を見ない野外コンサートではなく、フェスティヴァルと呼ぶにふさわしい存在だということを証明してくれているようにも思う。でも、かつてのフジロックを取り戻したいという想いは変わらない。

今回、嬉しかったことのひとつは、会場で、かつてワールド・レストランと呼ばれる場所で中心となって動いてくれていたエチオピア人の仲間、ソロモンを見かけたこと。なんと7年ぶりに来た彼がなにを思ったか? ひょっとして、また、彼を核にワールド・レストランのような趣を復活させてくれないだろうかと期待してしまうのだ。そして、もうひとつ嬉しかったのが、何年ぶりだろう、戻ってきてくれたジーンズのリーバイス(Levi’s)。初期のフジロックでコンスタントにサポートしてくれていた彼らが戻ってきてくれた背景に、昔のスタッフが関わっていることに驚かされていた。

さて、そんな今年の会場内外での顛末を伝えてくれたのは以下のスタッフの数々。会場で一生懸命動いてくれた彼らに感謝して、そして、また、ここに集まってきたみなさんと再会できることを祈って、〆の文章を終えようと思う。ありがとうございました。

■日本語版
森リョータ、阿部光平、丸山亮平、あたそ、阿部仁知、イケダノブユキ、石角友香、梶原綾乃、三浦孝文、若林修平、Asakawa Maho、東いずみ、越川由夏、泉みや、Eriko Kondo、YAMAZAKI YUIKA、渡辺紗礼、こっこ、ヌー子、浅野凜太郎、井上勝也、エモトココロ、堅田ひとみ、粂井健太、古川喜隆、小林弘輔、佐藤哲郎、白井絢香、suguta、髙津大地、HARA MASAMI(HAMA)、平川啓子、前田 俊太郎、松藤 万里子、ミッチ イケダ、宮田遼、安江正実、リン(YLC Photography)

■E-Team
Nina Cataldo、Jonathan Cooper、Park Baker、Sean Scanlan

■フジロッカーズラウンジ
mimi、obacchi、SEKI、yamato

■ウェブサイト制作&更新
平沼寛生(プログラム開発)、迫勇一、坂上大介

■スペシャルサンクス
三ツ石哲也

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片想い https://fujirockexpress.net/24/p_985.html Sun, 28 Jul 2024 16:24:29 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=985 小雨が降ったり止んだりで、気温的には快適な15時の苗場食堂に登場したのは、片想い!2012年は苗場食堂でRADIOHEADの裏をつとめ、2014年には木道亭に出演と、じつに久しぶりの登場である。2019年には片岡シン(Vo、三線)の舌がんによりライブ活動の休止などもあったが、無事ここ苗場で彼らと再開できたことはとても嬉しい。今年カクバリズムからの唯一の出演アーティストということで注目も高く、会場には多くの人が集まった。

1曲目は、ファンファーレをバックにポエトリーな一曲“管によせて”。片岡は手元に用意した紙を見ながら、フジロック3日間のラインナップをいくつか読み上げる。「七尾旅人、SZA、オーリトーリ!」と、今日3日間の尊敬すべきアーティストをたくさん呼び寄せている(まだ出ていないノエルまで)。「しばしパーティのときを!」と片岡が宣言すると、“party kills me(パーティーに殺される!)”が始まり、わっと歓声が上がる。オラリー(Vo)の「死にそうだよ/胸が痛いよ」揺らぎのある響きがなんとも切なげで胸を打つ。音楽をやめてもいいけど、ここ苗場で会えなくなっちゃうのはイヤだよ!というメッセージにキュンとする。

“チェイサーブルース”のシンプルな音数は、苗場のざわざわとした環境音と混ざり合って心地いい。“バタ供のうた”は、前へ前へと進んでいくごきげんなドラムに、突き抜けるようなサックスの響き。まるで役を演じるかのような、わはははは!と感情いっぱいに歌う片岡のパフォーマンスもまた愛おしい。跳ねるようなボーカルが踊らせる“トランス=ロマンティック”を挟むと、後半からは「片想いヒットメドレー」と題して、過去の人気曲を立て続けにプレイする。

“いとしいな”からはじまり、“踊る理由”では歓喜の大合唱が起きる。MC.sirafu(Gt,Key,Tp)によるラップや、歌に差し込まれる「苗場にいる理由がわかりますか?」という煽りも会場のテンションを上げていく。中盤の「ぼくが泣いてる理由なんて/わからないだろう」の部分では、観客みんなでしゃがんで、一気にジャンプする。“棒切れなど振りまわしても仕方のないことでしょう。”で各メンバーのソロをたっぷりと披露すると、“センチメンタル☆ジントーヨー”で幕を閉じた。

息をするように音楽をして、ハレもケもまるっと表現する片想いは、人生の営みが詰まっているなと思った。いろんな山も谷も乗り越えて帰ってきた片想いとまたここで再会したい。

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真夏のデンデケデケデケ(never young beach) https://fujirockexpress.net/24/p_988.html Sun, 28 Jul 2024 15:00:21 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=988 グリーンステージでは、ノエル・ギャラガーがお約束の歌を歌いだす夜22時すぎ。苗場食堂は、なぜか人だかりができている。これから登場するバンド、真夏のデンデケデケデケは、検索しても出てこないしプロフィールにも特にメンバーが書かれていない。身に覚えを感じつつ、ベンチャーズでもやるのかなと向かってみると、リハーサルでは“恋は桃色”を演奏していた。定刻を少しすぎてメンバーが登場すると、全員ひょっとこのお面を被っていて、おそろいのハッピには、「ネバーヤングビーチ」の文字が。やっぱり〜!

この日のメンバーは、安部勇磨(Vo,Gt)、巽啓伍(Ba)、鈴木健人(Dr)、岡田拓郎(Gt)、下中洋介(Gt)に加え、今日初めて一緒に演奏するというTAIHEI(key)を加えた特別なセット。お面を外し、「真夏のデンデケデケデケ改め、never young beachです!」と安部が叫ぶと、“なんかさ”が始まり観客は歓喜の声を上げる。軽やかなギターカッティングに豊かなベースラインが、苗場の夜をやさしくなぞる。安部はのっけからごきげんにア~オ!とシャウトをかました。

下中のギター・ソロが炸裂する“哀しいことばかり”、安部の伸びやかな歌声でめちゃくちゃ踊れる“Motel”、跳ねるようなビート感がたまらない“Hey Hey My My”など、間髪入れずに曲を披露していく。つかの間のMCでは、最初に苗場食堂に登場したときは25才だったが、もう34歳だという話に。「今日は、しこたま楽しんでいこうね〜!」と、会場を盛り上げた。

緩急をつけつつも、後半からは怒涛の名曲ラッシュで“どうでもいいけど”では、「俺もなんか/大人になった」と高らかに叫び、舞台から落ちる勢いのメンバーソロへと突入していったのがとてもよかった。“あまり行かない喫茶店で”や“明るい未来”と、馴染み深いナンバーをこれでもかと繰り出して、観客のテンションはとどまるところを知らない。最後は「夏の歌をみんなで歌おう!」と“夏のドキドキ”。7月の気持ちいい空に大きなシンガロングが響き渡る。そしてアンコール“お別れの歌”になると、さっきのテンションをゆうに超える、観客たちのエネルギーが決壊した!笑って、手を上げて、みんなで歌って。安部の幸せそうな表情と同じくらいみんなも楽しそうな顔をしている。ライブで同じ時を共有する楽しさって、こういうことだったよなあと改めて思った。

グリーンステージの出演経験があるバンドが苗場食堂に出るなんて、なかなか難しいことだと思う。でも彼らはここを帰ってくる場所だと思ってくれていて、こうして時々遊び心をもってやってくる。帰るのが惜しいフジロッカーたちに、最高の夏を届けてくれた彼ら。たくさんの感謝を送りたい!

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RIDE https://fujirockexpress.net/24/p_888.html Sun, 28 Jul 2024 12:15:35 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=888 フジロック2024最終日のレッドマーキー、いよいよ最後のアクトになってしまった。9年ぶりにフジロックに登場するのはRIDE。昨年は『Nowhere』『Going Blank』の再現ライブで来日、今年3月には新作『Interplay』発売。これだけ歴史があって話題を集めているのに、なかなかライヴを目撃できていなかったので、フジロックで出演が発表されて以来、大変楽しみにしていたのだ。

ブルーのSEとともに現れたマーク・ガードナー(G,Vo)、アンディ・ベル(G,Vo)、ステファン・ケラルト(Ba)、ローレンス・コルバート(Dr)。打ち込みのキック音が鳴り、ドラムカウントが始まると、バックスクリーンに「RIDE」の文字が現れ、最新アルバムより“Monaco”が始まる。ローレンスの力強いドラミングに、我々オーディエンスの胸の高鳴りを感じる。

戻ってきたよ、とマークが言うと、“Leave Them All Behind”へ。芯の太い音の波が会場を包み、ギターのフレーズがうごめく。マークとアンディのコーラスはぴったりと重なり、くらっとするような美しさを放っていた。太い音圧で魅せた“Twisterella”、寄せては返す波のようなリズム隊の響きがたくましい“Last Frontier”、さらに“Dreams Burn Down”!唸るようなベースに力強いドラミング、どこか深い海まで潜っていくようなトリップ感……とても気持ちいい。ジリジリと響く低音とやわらかな高音の対比、他の音にかき消されないギリギリの力強さを持つヴォーカル、これぞライドの美学。惚れ惚れずる。

キーを落としたアレンジで歌われる“PEACE SIGN”はノイジーな感じが増していてかっこいい。たくさんのオーディエンスが腕を上げて、ピースサインをする様子はとってもピースフルだった。“Lannoy Point”のミニマルなフレーズが繰り返されると、あのセンチメンタルなギターフレーズが音像の中に潜りだす。なんてすさまじい音圧。ヴォーカルですらひとつの音の柱になっていて、空間全体がこもっているのが目に見えるよう。これがシューゲイザー。本当に心地よかった。

ジャリジャリと粒子の荒いギターと、甲高い歌声が浮遊する“OX4”は、意識ははっきりしたまま心に浮遊感をもたらし、
“Vapour Trail”では爆発的なシンガロングで会場が一体となり、熱いドラミングに絶対的な包容力を感じた。ラストはなんと、“Chelsea Girl”。暴れるようなドラミングと大歓声のなか、ふたりの歌声が絡み合う。じっとりと湿度の高い音と会場の熱気が、レッドマーキーをいっぱいにしたまま、彼らの公演は終わった。

シューゲイザーやノイジーなバンドを「白昼夢」と表現することがあるけれど、RIDEにはその言葉が相応しくないと思うくらいの、確かな力強さを持っていることがよくわかった。音の緩急と、ノイズのバランスの美しさに、ベテランたる所以をこれでもかと見せつけられ、彼らをより好きになってしまった。今や活動再開してからの歴史のほうが長くなったRIDE。新作中心のセットリストの中で、彼らの今に接近できた、貴重な機会だった。

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YIN YIN https://fujirockexpress.net/24/p_6098.html Sun, 28 Jul 2024 11:52:48 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=6098 17時。気温も終始落ち着いていて、時折降る雨もそこまで強くない。快適なフィールド・オブ・ヘブンに現れたのは、お待ちかねのYIN YINだ。「オランダのクルアンビン」と評されるエキゾ+ファンク・ディスコ・バンドで、音源を聴いてみるとアジアン感がすごい。東南アジアのインディーシーンに影響を受けたというし、どう考えても日本を意識している。これは逆輸入じゃなくて逆輸出?とにかく、いい体験ができそうだとわくわくしていた。昨晩のクリスタルパレスでは、ライブは人はぎゅうぎゅう、熱気はむんむん。昨日の演奏で彼らに惚れて、ここに駆けつけた人も多いのでは?

4人のメンバーが登場すると、1曲目“The Year of the Rabbit”で歓声が上がる。ストロングなギターリフ、ファンキーなベースが響き渡り、そこにこぶしのきいたキーボードのメロが乗る。さっそくヘブンはトロピカルな空気に包まれる。「まもなく、4番線に、池袋方面行きの電車が参ります」そんな日本の日常音を切り取った“Pia Dance”は、跳ねるようなベースラインに、キーボードのオリエンタルな音階が響いていく。自然とクラップが発生して、会場は勢いよく盛り上がりを見せた。お待ちかねの“Tokyo Disko”では、YMOに接近したシンセサイザーの響き、バンジョーや琴を思わせるサウンドの絡み合いがなんとも心地良い。後半になるとセッションがトライバルに変化していき、サンバのリズムまで持ち込まれるお祭り騒ぎだ。観客は跳ねたり体をくねらせたりと、思い思いに楽しんだ。

ふと、耳に覚えのあるコード進行が続く。なんと“Merry Christmas Mr. Lawrence”。YMOフォロワーであろう彼らの涙が音となりヘブンに響き渡る。クラフトワークや曇ヶ原に続くサプライズに、会場は温かい拍手が溢れた。そしてDick Dale & His Del-Tonesのようなサーフ感満載の楽曲“The Perseverance of Sano”や、爆発的なセッションを繰り広げる“The Rabbit That Hunts Tigers”など、いろんな角度から我々を驚かせてくれる。後者はドラム・ソロ中に残りのメンバーがステージに座って酒を飲み交わすなど、お茶目なひと幕も。さらに、「日本でライブができて夢が叶いました!」と流暢な日本語でスピーチをしたり、メンバー紹介まで日本語でする太っ腹感。彼らの英語MCは英語に疎い私でも大変聞き取りやすかったのだが、そのサービス精神と盛り上げ上手なところに驚いた。

終盤は、待ってました“Takahashi Timing”!ディスコなパーカッションに、あの奥ゆかしいメロディが流れると会場は大盛り上がり。ギターのエリックはシンセサイザーも担当し、ツマミをいじりながらじりじりとこちらを焦らしていく。あとは、タカハシの大コール。元ネタであろう、PAチームのタカハシ(Never to Lateなあたり、仕事ができる方なのでは)も紹介し、敬意を表していたのもよかった。そのまま最後は“Dis ko Dis ko”。ギターは速弾きソロで会場を圧倒し、人々はみんなで手を上げたり下げたりと振りで一体感が生まれた。飛んだり跳ねたり、踊れや騒げやの極太グルーヴができあがったいい状態で幕を閉じた。

まだまだ伸びしろを感じるところもあるのだが、センスがよくて、盛り上げ上手で、キュートな彼ら、めちゃくちゃ推せる。次に来てくれるときは、もっと我々がおもてなしをしてあげたい。そんな気持ちでいっぱいになる充実のステージだった。

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ESNE BELTZA https://fujirockexpress.net/24/p_874.html Sun, 28 Jul 2024 09:56:08 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=874 フジロック2024最終日、ホワイトステージのトップバッターを飾るのはスペインはバスク地方出身のESNE BELTZA。昨年でいうとITACA BAND(こちらもスペイン出身!)のような、大所帯の賑やかなミクスチャーバンドである。じつは今回のツアーを最後に解散を発表しており、ステージには「AGUR DENERI ESNE BELTZA 2007-2025」の文字(AGUR DENERIは、翻訳すると「さようなら皆さん」)が映し出されている。切ないけれど、フジロックで観られるのはこれが最後。知っている人も知らない人も、ホワイトステージに集合!

定刻になると、メンバーがぞろぞろと登場。男女Wボーカルに、DJや、3名のホーン隊がいるのが特徴的だ。1曲目“Gotti!”は、メスティソとカントリーが融合した牧歌的なナンバー。さっそく会場をクラップで煽ったり、トランペットが中央でソロを決めるなど、ESNE BELTZAワールドへと手招きしてくれる。“Harresiko kunbia”では、XABI SOLANO(vo,Trikititxa)の情熱的で勇ましいボーカルが炸裂。LOVA LOIS(Vo)は早口のリリックを畳み掛け、会場の熱を加速させる。そして腕を上げたり、しゃがんだりと、パフォーマンスが続いていく。曲を知らなくても楽しめる、絶対的な保証がある。

“Argitzeraino”では、液晶にパレスチナの旗が現れる。DJのスクラッチがアクセントの1曲で、ソラーノの持つバスク伝統楽器・トリキティシャのソロが豊かに響く。“Bagoaz!”では、「リピートアフターミー!チピチャパチピチャパ KORRIKA!」と、コール&レスポンスをしてから楽曲へ。こだまする「KORRIKA」コールで、さらに盛り上がっていく会場。KORRIKAは「走れ!」という意味で、この歌はバスク語の自由を歌っている。まろやかなトロンボーンの音色と、思わずステップを踏みたくなる軽快なカッティングに合わせた、力強い反抗の歌。思わず唸ってしまった。

ツインボーカルがパチっとハマった、ちょっぴりセンチメンタルなカントリーナンバー“Gogoak”、TEKKANNON(Tb)、ISSA(Sax), Show-Ya(Tp)が豪快に前方でプレイする“Hona bostekoa”と続く。ソラーノがステージから降り、「しゃがんで、しゃがんで〜!」流暢な日本語で声をかけ、観客に囲まれながらタンバリンとメスティソのシンプルなセッションを行うひと幕も。特に素晴らしかったのは、歌えてしまうくらいキャッチーなメロのラテン・ナンバー“Sueños de Color”の親しみやすさ。そして、会場のクラップを止めた一瞬の静寂から演奏が始まった“Pasodoble”の爆発感。いろんな楽しみ方を知っていて、いろんなルーツを持つ音が鳴っていて、でも芯が一本太くあって。17年という長い歴史が積み上げてきた厚みを噛み締めた。

「さようなら、フジロック!」と言われたのはなんだか寂しかったけれど、20近い楽曲を力の限り披露して、たくさん盛り上げて、楽しませてくれた。彼らを見るに、きっとこれは哀しい別れなんじゃなくて、希望の別れなのだろうと思う。まだ続くESNE BELTZAのラストラン、ここ日本で彼らと併走できてよかった!

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THEATRE BROOK https://fujirockexpress.net/24/p_918.html Sat, 27 Jul 2024 22:28:30 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=918 フジロックに何年か通っていると必ず目にする佐藤タイジという名前。ROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRAやアトミック・カフェトークなど、数々のステージに名前を重ねる彼のバンドこそ、THEATRE BROOKだ。フジロックは2000年から出演していて、来年デビュー30周年を迎える大御所バンド。初めて見るならば、やはりフジロックで見なければ。そう思い、13時すぎのフィールドオブヘブンにやってきた。中條卓(Bs)、沼澤尚(Dr)、2人のDJ(DJ 吉沢dynamite.jp、与西泰博)と、錚々たるメンバーとともに入場した佐藤タイジ(Vo,Gt)は、透明感のある白い羽織とパンツ、黒いTシャツで登場した。 ボリュームのあるグレーヘアがかっこいい。

DJがレッド・ツェッペリン“Immigrant Song”を流すと、そのまま“俺の手にはギター”。中條のベースが響き、佐藤のワウのきいたギターが軽やかに乗り合わせる。クリアかつ信念のある佐藤の歌声が、フィールド・オブ・ヘブンにまっすぐ広がっていく。そのまま佐藤はアコースティック・ギターに持ち替えて“ドレッドライダー”へ。晴れながらも雨がぱらつく会場に、さらに気持ちいい風を通すようなナンバー。右に左にステップを踏まずにはいられない。いえあ、と笑って“悲しみは河の中に”。DJのスクラッチと、力強いドラミング、知的なベースが絡み合う。佐藤はメンバーと目線をあわせ、力いっぱいにギターをかき鳴らす。

佐藤は「OUR GENERATION MUST END WAR」と書かれた緑色のプラカードを掲げ、「(ROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRAに出た)後藤くんにもらってきた」という。フジロックはこういうことやってもみんな理解してくれると思う、我々が生きている間に戦争を終わらせることができると思う、とまっすぐに語り、そのまま“無実の子”を力強く歌い上げる。するとヘブンの空はカッと晴れて、そこにお天気雨が降り注いだ。まるで天が味方しているようなこの瞬間は、とてもドラマチックだった。

続いて、新曲が続く。“わたしをアムスに連れてって”は、佐藤の妻がアムステルダムのホテル一覧を見ていたこと、「パパ、私をアムスに連れて行って」という娘のひと言から生まれた異国的なナンバー。会場はざっと雨が降ってきて、レインウェアの人々が踊り出すカラフルな光景になっていった。“白クマとボノボ”では、同じ遺伝子を持つチンパンジーとボノボそれぞれの習性を例に出し、「大事なのはprogress、no evolution。進化ではなくボノボです」と訴えかける。ボノボはメスがリーダーで、集団間で助け合うことができるそうだ。人間も大切なのは進化ではなく進歩だということを強く訴えかけた。

ラストは、いつでも音楽だけは最高や、と“ありったけの愛”。ありったけの力で歌う佐藤のなんとまっすぐなことか。会場はハンズクラップでひとつになり、それぞれが踊りながら、歌いながら、音楽へのありったけの愛を噛みしめる素敵なラストとなった。佐藤はふたたび、戦争は我々の世代で終わらせること、実現は可能だということを説いて幕は閉じた。

スケールの大きい話だけれど、佐藤の言葉にも行動にも説得力があった。私達はちっぽけで、ひとりが行動してもどうも無力に感じてしまうけれど、まずはTHEATRE BROOKを信じることからでいい。平和を信じる力こそが、これからの未来を作っていくんだと、彼らのライブを観てそう思った。

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KRAFTWERK https://fujirockexpress.net/24/p_845.html Sat, 27 Jul 2024 14:01:38 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=845 クラフトワークは、多くのミュージシャンにとってのDNAだ。自分の好きな音楽のルーツを辿ったとき、染色体の1本はかならずリンクしているはず。レジェンドミュージシャンは数あれど、ここまで多くの影響を与えてきた現在進行系のバンドはなかなかいない。その姿を直接目撃できるんだから、なんて素晴らしい機会なんだろう。

彼らを観るのはSONICMANIA以来で、3Dメガネは置いてきてしまったがまだ持っている。サマソニの印象が強かったぶん、ラインナップが発表されたときは驚いた。苗場でクラフトワーク?でも、石野卓球がフジロックのインタビューで「あの環境でクラフトワークって、一番違うもの同士じゃん。でも、それがいいよね」と語っていた記事を読んでから、とても楽しみになってしまった。

ステージには大きなテーブル4台。フチが緑に光り始め、アインス、ツヴァイ、ドライ、フィーア……と、8カウントで“Numbers”が始まると、ステージ上手袖から、ラルフ・ヒュッター、ヘニング・シュミッツ、ファルク・グリーフェンハーゲン、ゲオルク・ボンガルツの4名が歩いてくる。網目状に光る全身タイツもまた緑色に光っていて、“Computer World“でテーブルが黄色になると、スーツもまたリンクして色が変わっていくから面白い。彼らは直立で立ち、ほぼ体を動かさない。手の動きから、その場でプレイしていることは確実だが、そのふるまいはさらがらロボットのようだ。古き良きスペーシーなサウンドに、観客の体は思わず動き出す。続く“Home Computer”でタイツが色とりどりに輝くと、カラーバーやノイズような記号的モチーフがつぎつぎと液晶に映し出される。キックの地響きが気持ちよく、カラフルにあふれるメロディたちがどこかトライバルで、新鮮な印象を与えてくれる。

“Spacelab”では、宇宙船が苗場めがけて着陸する様子をVJで描き、観客を夢中にする。場内マップが映し出されたり、グリーンステージにそのまま宇宙船が到着するシーンまであって、なんと粋なサプライズだろうか。メイン・フレーズはリリース音にスタッカートが効いていて、モダンに感じさせるアレンジなのもよい。カチカチと強いクリックが鳴り響く“Man Machine”では、全身タイツもテーブル照明も赤くなる。「Machine」の文字が斜めに積み上がっていく映像に会場は大いに歓喜した。

“Autobahn”のジャケットヴィジュアルが表示されると、照明はそのまま青へ。VJでは車が発進し、高速道路を走り出す。すると、周囲の景色がどことなく苗場までの道に見えてしまう(勘違い)。しっかりボーカルを感じられる曲だが、ラルフ・ヒュッターが軽く足を揺らしながら歌っていて、無機質な中に生まれた体温にドキッとしてしまう。エンジンの音、車が通過する音、電子的に組み立てられたリアルなその音に、耳を澄ませる。続いてアインス、ツヴァイ、ドライの掛け声から、“The Model”で歓声がさらに湧く。あの奥ゆかしいメロディにのって女性モデルが動くVJになり、タイツと照明は白く変化する。

驚いたのは、セットリストに“sakamoto”と書かれたこのひと幕。ラルフよりmy friends,sakamotoと紹介があり、「Tokyo 1981年」とテロップの乗った坂本龍一とラルフの写真が表示される。彼との出会い、幕張メッセで開催された「NO NUKES2012」のこと、そして“Radioactivity”の日本語詞を監修してもらったということ。彼への思いを込めてなんと“Merry Christmas Mr. Lawrence”が演奏される!荘厳なピアノの調べに、彼らならではのシンセサイザーが乗った特別な演奏に、思わず涙を流す観客も。そしてそのまま、心臓の音が脈をうち、音圧が畳み掛けてくる“Radioactivity”が始まる。大画面に表示される「日本でも」「放射能」「今日も」「いつまでも」の詩は、坂本監修のものだ。核が分裂していく映像を眺めながら、私はつい動けなくなって、目を見開いて、じっとこの時と対峙した。絶対に忘れられない追悼と宣言がそこにはあった。

ここからは、“Tour De France”、“Trans-Europ Express”と、コンセプチュアルな名曲揃い。自転車を漕ぐ息遣いもリアルタイムだし、ゴトンコトンという列車の音もまた見事に再現される。“Autobahn”もそうだったが、クラフトワークは人間が作り出した文化や文明の環境音を鳴らしてきた。その人工的な環境音が、苗場の自然で鳴らされていると思うとなんだか発見がある。それも遥かにモダンで厚みがある音で。しっかり現代に音がアップデートされているのだ。最後に、ダンサブルな仕上がりの“The Robots”や“電卓”の合唱で会場はもうひと賑わいを見せる。最後は“Musique Non Stop”に合わせてそれぞれがソロを披露、ひとりずつ順番に音をオフにし、ステージ脇で礼をして、去っていってしまった。

ああ、どうやらすごいものを目撃してしまったようだ。歴史的な瞬間を拝ませていただいて、ありがとうございますという感謝しかない。SONICMANIAで見た頃とはまた質の違う感動がそこにはあった。私たちの血液に流れる音楽のDNAに接近できただけではなく、有機/無機、生/死の壁さえ取っ払ってしまうような、神々しい90分を体験した。

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group_inou https://fujirockexpress.net/24/p_898.html Sat, 27 Jul 2024 11:08:11 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=898 夜も更けて朝4時のレッドマーキー。金曜ナイト券のまま朝を越す元気な人々たちと、眠気でぐったりしている人々が入り乱れるカオスな時間。ここに降り立つ真の大トリは、ほ〜らほらほらほら〜……やってきた!group_inouである。2016年の活動休止以降もそれぞれの音楽活動が活発であったことや、「39歳の免許合宿」が話題になっていたのもあり、正直そんなに時が経っていたなんて思っていなかった。突然の新曲リリース以降、「森、道、市場」や自主企画「PR」を追えなかったから大変うれしい!絶対見る!そんな喜びを噛み締めていたフジロッカーたちに突きつけられた「「「朝4時」」」という壁、あなたにとっては高かっただろうか、低かっただろうか。

ステージに、イルカくんのタオルを掲げたCPと、imaiが現れる。imaiがぽつりと、「お待たせしすぎたかもしれません」とつぶやき歓声を呼ぶと、“EYE”からスタート。相変わらずキレキレのCPと、頭を振り感情をフロアにぶつけるimai。かつて観たgroup_inouがちゃんとそこにいることを感じる。途中ふたりは指を指し笑い合ったりして、この場を喜んでいる様子なのも感慨深かった。

CPの煽り「朝4時!もっと来いよ!」からの“MYSTERY”で、観客のボルテージを上げていくと、そのまま“THERAPY”。イルカのイルカくんは現れなかったけど、イルカコールが響き渡る(イルカくんは9歳なので多分労働基準法に違反するし、なんなら彼だけでもよく寝てほしいと思った)。PVを模したあのVJも相変わらずで大興奮。CPはくねくねとイルカの胸びれの動きを、imaiは尾びれを模したような手のポージングで自由に動き回る。MCでは、「すみません、めっちゃ来てもらって。毎年フジロック来ていますけど、例年の朝4時にこんな光景はみたことがないんですよ」とimai。周囲を見渡すと、イルカTシャツ、イルカタオルを持った人もいて、海外ファンも多いというし、とにかく朝4時とは思えないくらいのオーディエンスが集まっていた。さすがは初日の真・大トリ。

“BLUE”、“9”とスローナンバーが続くと、間髪入れずに“R.I.P”、そして“HAPPNING”で大盛り上がり。縦スクロール漫画のVJを観ながら、シュールとナンセンスが渋滞したリリックに惚れ惚れする。はい!はいはい!と腕を上げてみんなで騒ぎ立てたら、“ORIENTATION”でフジロックのカップルペアルック問題に警笛を鳴らし、“COMING OUT”と“KNUCKLE”というキラーチューンの畳み掛け!そのカラフルな音使いと爆弾的なビートは、体力を恐れず暴れる力を体にくれる。ラスト“MAYBE”まで駆け抜けて去っていき、アンコールの声が鳴り止まないなか、スタッフの終了ですコールとともに惜しまれつつも幕を閉じた。

「SMASHの人に褒めてもらおう」とimaiも言っていたが、朝4時スタートにもかかわらずこれだけ多くの人が集まったのは本当にすごいと思う。CPもimaiも、時を重ねたぶんパフォーマンスと音に厚みが出ていると思ったし、深夜だからこそ生まれるハイな気持ちもあって、彼らもフロアも最高のコンディションだった。まだまだ聴きたい曲はいっぱいある!今後も夜の帝王でいいから、ここでgroup_inouを観たいと思った。

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EYEDRESS https://fujirockexpress.net/24/p_883.html Sat, 27 Jul 2024 08:41:40 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=883 フジロック2日目ももう夕方。キツイ日差しも落ち着いていて、ちょうどいい気温になってきた。16時のレッドマーキーは、どちらかというと日本より海外のオーディエンスが多い気がする。登場したのは、フィリピンはマニラ出身、現在はロサンゼルスに住むEYEDRESS。シンガーソングライターであり、ラッパーであり、レコードプロデューサーもある多彩な彼はあのRCA Recordsに所属している。King Kruleをはじめ、DāM-FunKなど、コラボレーションも話題。音源を聞く限り、いい感じにローファイで、ゴスやシューゲイザーの匂いがしたため、ぜひ目撃したいと思っていた。

ギター、ドラム、キーボードにベースを含め5人のメンバーを引き連れて登場したEYEDRESSは、黒いTシャツにキャップにサングラス、下はグレーっぽいパンツと、アーティスト写真のイメージそのままの姿で登場する。バックスクリーンには、EYEDRESSのロゴらしきもの、上には「アイドレスの家」と書かれていて謎が多い(大林宣彦の映画「ハウス」のオマージュではないかという声もある)。

“Can I See You Tonight?”が始まると、ビシビシと地鳴りのするドラムの力強さにびっくりする。“Let’s Skip to the Wedding”でのキックの強さなど、全体的にリズムの強さを主張した音づくりなのだろうか。キーボードを主体とした、輪郭があるようでない幻想的なサウンドと、それに同化して聴き取りにくいヴォーカル。想像していた以上にシューゲイザー感が強めでびっくりした。80’S感がたまらない“Romantic Lover”や、レトロなAORの質感を持った“Toxic Masculinity”など、間髪入れず次々とプレイしていき、20曲近くプレイしてくれた。

欲を言うならば、曲ごとのBPMの緩急とか、頭ひとつ突き抜けたキラーチューンだとか、もっとセットリストに幅がほしいところなんだけれど、それが彼らのやり方なのかもしれない。ほぼ同じテンポでノイジーだとのっぺりとしてしまって、ヴォーカルも聞き取れないというシューゲイザー好きの贅沢ともいえる部分が、かえって悩みになってしまうような気がした。ちょっともったいないと思う。

それでも最後は、TikTokで大ヒットした“Jealous”を背負ってメンバーとともに観客を煽り、“I Don’t Wanna Be Your Friend”では、EYEDRESS自らステージのほうに降りて、爆発的なエネルギーで観客を巻き込んでいった。クールそうに見えてたけど、泥臭いじゃん!かっこいい。EYEDRESSの起爆力は、こんなもんじゃないと思う。最新アルバムもびっくりするくらい曲数が多いし、さらなるパフォーマンスを期待している。

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