LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/26 SAT
FAYE WEBSTER
雨の中の静寂、フェイの囁くような歌声に酔いしれた
SEとしてNew Jeansの“How Sweet”が流れるけれど、周りの観客たちは無反応で、え?New Jeansおじさんとフジロックの客層って被ってないのか?なんて考えてしまうけれど、大雨でそれどころではないだけかもしれない。1時間前から降り始めた雨は止む気配を一切感じさせず、「ああ、そういえばフジロックってこういう感じだったな」ということを思い出す。
背後のスクリーンにワインレッドのカーテンが映し出され、登場するミニオン。その様子はどこかフェイにも似ているように見える。メンバーとともに出てきたフェイは、学生服を改造したようなドレスを着ていて、お団子頭にもよく似合う。背後のスクリーンは、ブルーのランドリースペースに切り替わっている。優しいギターの音とともにスタートしたのは“But Not Kiss”。骨のあるドラムと優しく耳に残るピアノのサウンドをフックにし、透明感のあるフェイの歌声が染み渡る。
チルウェイブを取り入れた“Wanna Quit All the Time”はタイトル通りどこか脱力感を覚えながらも心地よいグルーヴが聞こえ、2本のなめらかなギターのサウンドが重なる“Wilco Type Beat”、そして、“Right Side of My Neck”ではきらめくようなバイオリンがアクセントとなって、フェイ自身は表情を変えることなく淡々と「私の首の右には、まだあなたの匂いが残っている」というフレーズを繰り返していたけれど、尚のこと他者とのもっとも親密だった頃を静かに映すような表現でもあって、息を飲むように聞き入ってしまう。海外フェスなどの映像を見ていると、大体どこであっても大合唱が起きていて、静かにフェイの歌声に酔いしれることができるのは珍しいことで、結構貴重な体験かもしれないなんて思ったりもする。
サイケデリックなギターが印象に残る“Lego Ring”のあとの“Suite: Jonny”では、ハンドマイクを持ち、話しかけるみたいに歌うフェイ。とても私的で、自身に起こったような出来事を歌っていると思われる曲が多いからこそ、1つのステージを通じてまるで日記を見ているような気持ちになる。時折見せる笑顔に、思わずときめいてしまう。
ひとりステージに残されたフェイ。「大好きな友達です!」と招かれたのは、午前中のライブを終えたばかりのmei ehara!“Overslept”では2人の声とギターのみというシンプルな構成だったけれど、だからこそ、質の異なるふたりの声が日本語と英語で交互に美しく響く。タイムテーブルが出た瞬間に、ちょっと予想はしていたけれど、やっぱりうれしいサプライズであった。
一日の終わりのような白昼夢のような“Tttttime”は、囁きながら繰り返される歌声が響く。タイトル通り、寝る直前みたいなドリームポップの“Feeling Good Today”では、コーラスとキーボードのみというシンプルな構成だからこそ、しっとりと聴き入ることができた。最後は、定番の“Kingston”。全編を通じて、多くは語らず、過度に感情を見せることなく歌う姿に、すっかり魅了された1時間であった。
[写真:全10枚]