FUJIROCK EXPRESS '25

LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/27 SUN

She Her Her Hers

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Posted on 2025.7.27 16:31

体感マイナス2℃のドリームポップ

昨日は長めの豪雨に見舞われたが、最終日の午前中は再び強い日差しが容赦なく照りつけている。FIELD OF HEAVENのトッパーを務めるのはキャリア十分にして、国内以上に中国など海外のライブで多くの動員を誇り、アジア16都市を回るツアーも行っているShe Her Her Hers。2019年には中国のレーベルと契約も果たしている。が、いかんせんアジアでの活躍は伝えられているものの肝心の音楽性に触れた記事をあまり目にしない。ここは久しぶりにステージを見るのがいい。しかもバンドにとって初のフジロックなのだから。

ベースとヴァイオリン&キーボードのサポートメンバーを含めた5人編成でステージに現れた彼ら。淡々と滑り出したのは“Diagram X”。サウンドがミスト状に降りかかり体感マイナス2℃ぐらいの感覚だ。髙橋啓泰(Vo/Gt)の声とギター、とまそん(Syn)の澄んだシンセのテクスチャーが通奏音を司る。“Bloody Mary Girl”“non zero sum game”と早くも彼らのグルーヴがヘヴンを支配する。なると、なぜこの涼やかなドリーム・ポップをシラフで聴いているんだろうと悔しくなる。軽い酩酊があればこの揺らぎもさらに最高なはず。真夏だからこその贅沢だろう。

一定数、彼らのライブを目当てに集まったファン以外も次第に身体を揺らしていくアンサンブル。高橋のボーカルのオクターブ上下でユニゾンするとまそんのコーラスも涼やかさを醸す“SPIRAL”、“Pre-Logue”でのアンニュイなボーカルともどかしさを音にしたようなギターサウンドを何も損ねずに届けてくれるライブPAも素晴らしい出来だ。ヴァイオリンリフやパーカッションサウンドのサンプリングも曲のフェティッシュな魅力を支えて、より届くアレンジで聴かせる“drip”。空間を拡張するギターサウンドと暑さがまさに白日夢を見ているような気分をナチュラルに増幅する。それでいて歌詞は忘れそうな本音を鋭く刺してくる。“誤魔化していないと痛い、短いドキュメンタリー/主役は君だから/アスファルトに歪んだ輪郭のbad trip”なんて歌詞が耳に忍び込むのだから。エンディングに向かって松浦大樹(Dr)のドラムの手数が増え、すべての音のレイヤーが壁を作りスッと終わる。なんとも冷ややかな感触だ。

続いて”Episode 33“を披露し、おもむろにフジロック初出演の感慨をとまそんは「いつかシーハーズの1年目を観たって言えるよう、続けていく」、松浦は「選択の連続のようなフジロックで会えて嬉しいです」とオーディエンスに感謝し、高橋は「フジロックで出会ったカルチャーや音楽がたくさんあるので、ほんとに今日は幸せです」と、さりげないけれど心から望んでいたことが伝わる言葉ばかりだった。

MC後も”Chelsea“、近作『Pathway』から”Thirsty“、そしてひとりの夜にリピートしたリスナーもきっと多いであろう”Bystanders“が、フジロックという祝祭の場所で鳴らされた。これはきっと記念日だ。

[写真:全10枚]

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7/27 SUNFIELD OF HEAVENXSUMI