FUJIROCK EXPRESS '25

LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/25 FRI

MAYA DELILAH

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Posted on 2025.7.26 01:54

すべてが調和した夜

フジロック初日も19時前の黄昏時。「夜に向かっていくフジロック、いいよね!」と。MCジョージ・ウィリアムズの言う通りだ。

ここ、ヘブンのトリ前を飾るのは北ロンドンからやってきたシンガーソングライターのマヤ・デライラ。今年3月にデビューアルバム『The Long Way Round』を名門ブルーノートからリリースし、収録されたR&B、ソウル、ジャズ、ファンクにフォーク…ボーダーを自由に横断する多様な音楽性と凄腕ギタリストとしても注目を浴びる才媛である。

MCのジョージ・ウィリアムズがステージに呼び込むと、まずキーボード、ベース、ドラムのバンド3名が登場。ベースがリードするラフなセッションがはじまる中、上からショートパンツ、ソックスまで赤で統一した装いのマヤ姿を見せた。黒のストラト・トーンを肩にかけ、ギターを軽く爪弾くだけでマヤのスキルの高さがうかがえる。“Actress”からアンニュイにスタート。艶がある歌声もたまらない。流麗極まりないソロをかますと爆発的な歓声が巻き起こるのを見るに、この手の音好きが集結したようだ。

「コンニチハ―!みんな調子どう?暑いね!」とにこやかに挨拶し“Look At The State Of Me Now”を披露。中でも最も聴きたかった曲だ。2つの真紅のスポートライトが灯る静謐な雰囲気に息を呑む。たった今、ここで大切に届けられる歌。楽曲とはキーもサビの音程もまったく違う。まっすぐな表現が胸にスッと入り染み渡っていくかのようだ。暖かいメロディとアンサンブルに早くも目頭が熱くなってしまう。

続くは自分自身について書いた曲だという、まんまなタイトルの“Maya Maya Maya”。子供時代を振り返った音色がとても優しく鼓膜を震わせる。自らを優しく抱きしめるような曲だ。陽も完全に落ち、ステージが美しく煌めきはじめた。苗場の山々に囲まれたこの瞬間、なんと心地いいのだろう。

バンドメンバーの3名を紹介し、はじまった“Pretty face”。これまたスッと腹落ちするような説得力ある楽曲。キーボードのヴィンテージな鳴りが最高なのだ。巧みなギターソロで場を沸かし、オーディエンスにハンドクラップを促し楽しい雰囲気を醸成していく。

ピアノの暖かい音でリードする“Never With You”へ。マヤの歌声が温かく、神々しいほどの響きをはなっている。そのまま、“Jeffery”といううっかり殺してしまった虫に捧げたインスト曲に突入。ステージ前の縁に座って美しいフレーズを繰り出すのだ。キーボード、ベースがそれぞれソロを披露していいって積み重なるように創作された(グレイトフル・)デッドのようなカントリー調のサイケデリアもたまらない。

「これまでに披露した曲とはちょっと異なった、ファンクソングをやるよ!一緒に踊ってね」と“Squeeze”で冒頭からブリンブリンにグルーヴィーなベースが腹と腰にズシズシ響く。「2ステップをやってくれる?フジ!」、更に「ハンドクラップも入れようか!」とみんなで左右に足踏みし、手を叩く。このみんなで創り上げるグルーヴの一体感はどうだ。これぞライヴの醍醐味だ。マヤがエディ・ヘイゼルのごとしソロでしびれさせた後、スライドをきめながら締めくくるそのショーマンシップには唸るしかない。最高だ。

「ニューソングを聴きたい?」とアメリカで数ヶ月前にできたばかりの今宵世界で初披露となる新曲“What’s the Deal”*と“I Love You, but”*を立て続けに繰り出した。暖かいアコギの音色主体で進むフォーキーさから一変して浮遊するキーボードの調べの上をずっしりと響くベースが摩訶不思議な曲へ。ギターにリヴァーブのエフェクトがかかりまくりだ。サイケデリアを創り上、寡黙なベース音でしめやかに締めくくるのが何ともニクイ!

「Coldplayのファンはいる?」と大好きだという‟Sparks”を弾き語りでカバー。ユスリカに襲われながら、ギターを刻むタイミングを間違えたりしつつも懸命に、かつ真摯にオーディエンスに音を届けている。またしてもここで新曲“Dreams of California”*が登場。ローレルキャニオンなサウンドがここヘブンにぴったりはまるフォークロック。マヤが途中で奏でた可愛らしいピアニカの音色が曲に彩りを加味している。

最後は、フジロックに出演できたことへの感謝を伝え“Begin Again”でしめやかに締めくくり。客電をつけ、集った全員で撮影して「I Love You! Thank you!」とにこやかにステージを後にした。

本ステージを目撃して浮かんだ言葉が「調和」だ。ヘブンというピースフルな場、この天候と時間帯に、多彩な音楽に乗せて届らる芯が通った歌声、縦横無尽なギタープレイ、マヤの表現の機微に完璧に応じるバンド、そして静かな感動でヘブン一帯を覆ったオーディエンス。すべてが溶け合いひとつになったような感動のステージだった。

*新曲のタイトルは、マヤの曲紹介から聞き取ったものになり、誤っている可能性があることを予めご了承ください。

[写真:全8枚]

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7/25 FRIFIELD OF HEAVEN