FUJIROCK EXPRESS '25

LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/26 SAT

THE SKA FLAMES

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Posted on 2025.7.26 23:52

活動40周年、約束の場所にて

フジロックには2021年以来、約4年ぶりの出演となるスカ・フレイムス。今年、結成40周年(!)を迎える彼らは、基本的にマイペースな活動を維持している。いくつかの脱退やメンバーチェンジなどはあったが、オリジナルのメンバーも複数名残っており、日本のスカの屋台骨を支え続けている。かつて、サイドギターを担当する宮崎研二氏にインタビューした際に、次のように言ったことを覚えている。

「ずっとスカ・フレイムスを続けたいから、俺らはちゃんと『職に就く』と決めた。だから、アマチュアバンドなのよ」

今でこそ複数の職を持つことは珍しくないが、40年前の音楽シーンは、メジャーとの契約を目指すのが当たり前の時代であったことは想像に難くない。別で職を持っていながら、ここ数年はバンドの活動が活発化しているように思う。

フレイムスもまた、フジロックには並々ならぬ想いを抱いている。彼らのフジロック初出演となった2002年は、今なお語り継がれる、通称「スカ祭り」の年。ジャマイカの不良更生施設「アルファ・ボーイズ・スクール」で音楽の英才教育を受けた者たちが結成し、スカのオリジネーターとなったザ・スカタライツ。さらに、そのスカタライツのオリジナルメンバー、ドン・ドラモンドの薫陶を受け、「アルファ」を経たのちに単身イギリスへと渡ったリコ・ロドリゲスは、若者を中心としたスカ・リバイバル、「2トーン」の中核を担うザ・スペシャルズに参加したほか、スカ/レゲエの作法そのままに、ジャズの名門レーベル「ブルー・ノート」のカタログに名を残している。

そして、関東を拠点としていたフレイムスに対して、関西のスカシーンの雄、デタミネーションズも「スカ祭り」に名を連ねていた。惜しくも2004年に突然の解散を迎えてしまったが、スカを創った者たちと、スカに憧れた極東の者たちがひとつの枠に収まった集合写真が、当時の空気を伝えるものとして残されている。その写真は、我々フジロッカーズ・オルグ主宰、花房浩一の手によるもので、日本のスカシーンにおける記念碑的な一枚となっている。

2025年となった今、スカタライツのレジェンド達をはじめとして、リコも、デタミのサックス奏者である巽朗(たつみあきら)までもが鬼籍に入り、かつてのスカ祭りに参加したバンドは、フレイムスのみとなってしまった。この日のヘブンには、2002年の祭りを体験した者もいるはずだ。

豪雨の直後、雨足はやや弱まったものの、まだまだ止む気配のない状況で登場したスカフレイムスの面々。まずは、ヴォーカリストの伊勢浩和を除いた楽器隊が、”Big Foot”を奏で、そのゆったりとしたリズムがフィールド・オブ・ヘブンの森に囲まれた空間へと流れ込む。フレイムスのライブは決まって心地よい音像から緩やかに始まる。音の一端を捉えたオーディエンスはといえば、すぐさま軽めのステップを踏み、その身をだんだんと動かしていく。

伊勢を待つ間、楽器隊の指揮を執っていたのは、かつて、スカ・フレイムスのファンであり、野音こと日比谷野外音楽堂で行われた「スカ・エクスプロージョン」の客席からステージを見ていた過去を持つ、アルトサクソフォン奏者・石川道久。”Big Foot”から流れるように、” I’ll Close My Eyes”へと繋げ、ようやく伊勢が登場。元より足に不安があるため、ステージ上には椅子が用意されているが、まずはスタンディングで歌い出すあたり彼の矜持というものが現れていたように思う。杖を手放し、両手を広げ、大きな身体から発せられるツヤと伸びのある声は健在だ。オーディエンスははずぶ濡れになりながらも、彼の声に浸っている。

歌い終わり、相変わらずご気分ナナメな天候を見た伊勢は、雨に打たれるオーディエンスをねぎらうかのように「スカフレイムスには晴れ男が揃ってます」と前向きな言葉をかけた。たとえそれがリップサービスでも、こちらとしては嬉しいものだ。

フレイムスの大きな魅力として、特に結成当初からのメンバーがそれぞれ際立った動きや演奏をする、ということが挙げられる。メインギターを務める紫垣徹のギターフレーズは、スカやその元となったジャズというよりも、ブルーズ色が強く出ている。サイドギターで、主にカッティングを担当する宮崎研二は全身白いスーツで身を包み、ことあるごとに最前列まで出張ってきては、オーディエンスの反応を確認。これは、40年もの間、フレイムスというバンドを頑なに続けてきた者の余裕に他ならない。パーカッションの中須彰仁はといえば、興が乗ってくると、決まってクネクネとした独特のダンスで同郷・奄美大島の幼馴染である伊勢に絡んでいく。そんな、少年に戻った2人が発した「Are you HAPPY?」の問いかけには、オーディエンスもついつい子供のようにはしゃいでしまうのだ。

ある程度の時間が経ってくると、おそらく長くフレイムスを見ている者は、奇妙なくらいに浸れて心地よいセットリストが続いている、と感じたかもしれない。言い換えれば、最後にやってくるであろう「お約束」に向けて、腹をくくった可能性がある。

そして、その「お約束」は、やはり最後にやってきた。カリプソ風味の”Rip Van Wincle”、伊勢の朗々としたアカペラ終わりから立ち上がる歓声を、存分に受け切ってからのドラムショット一発、性急なビートでもって一気に駆けあがる”I Won’t Never Let You Go”、そして、キーボードと乾いたギターによる短いイントロから、ホーンを巻き込んで最後まで全力疾走する”Tokyo Shot”のシングルカット3連発は、彼らの真骨頂とも言えるルード(不良)なコンボ。若者はハツラツとし、方や、往年のファンはヘロヘロに。これ以上ないほどの「ハッピー」に溢れたライブの締めくくりは、表情のみならず空においても、見事なまでの「晴れ」で締めくくられた。

晴れ男が揃っているというのは、本当だったのだ。

[写真:全10枚]

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7/26 SATFIELD OF HEAVENXSUMI