LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/27 SUN
吾妻光良 & The Swinging Boppers
ゴキゲンなジャンプブルーズに笑顔はじけた昼下がり
フジロックもあっという間に最終日。もう朝起きた瞬間から寂しくてしょうがない。いやいや、こんなことではいけない。今日という日、今という瞬間を楽しまねば!と意気込んでやってきましたフィールド・オブ・ヘブン。ここのヒッピー文化に根ざしたピースフルな雰囲気がたまらなく好きだ。そしてヘブンで繰り広げられる音楽も最高。往年のヴィンテージなロックやソウル、ブルーズな音が飛び交うのだから。
13時を回ったヘブンは炎天下だ。汗が滴り落ちるほどの暑さの中、年配のミュージシャンたちが最高に楽しいリハをしている。ゴキゲンな“T-Town Blues”にヘブン一帯は笑顔満載。この時点で大盛り上がりだ。これからここヘブンに登場するのは、今年で結成45周年を迎える平均年齢67歳の12人編成の名うてのジャンプブルーズバンド、吾妻光良 & The Swinging Boppers!フジロックは何と21年ぶりの出演となるそうだ。
開演時刻にバッパーズの面々が登場。総勢11名、壮観だ。オープニングはスタンダードナンバーの“Things Ain’t What They Used To Be”。ピアノ、ベース、ドラムスのトリオからはじまり、サックス隊、トランペット隊、トロンボーン順に軽めのソロを披露していく。ピアノが弾くテーマに戻ると全員で合奏。満を持して真打ち、吾妻光良が登場しアルバート・コリンズよろしくいなたくソロを弾き倒すのだ。“クリムゾン・キングの宮殿(In The Court Of The Crimson King)”のカバーという流れにびっくりまさかの流れにオーディエンス一同仰天。「ロックフェスだからキング・クリムゾンのジャンプブルースバージョンでした。怒ってる方もいるかもしれませんが、いいんです」とのっけから飛ばす飛ばす。
その後もゴキゲンな勢いは止まらない。人生をこれまで楽しんだ者たちだからこそ生み出せた歌詞が沁みる‟最後まで楽しもう”、あんなに税金払ってるのに!という怒りを笑いに昇華させる‟俺のカネどこ行った”、ステッペンウルフの超名曲“ワイルドでいこう!(Born To Be Wild)”ジャンプ&ジャイヴカバーでは、「盆と琵琶」と歌い笑いを誘ってくる。政治や社会風刺を表現しつつも遊び心をたっぷりと。フジロックという場に本バンドがいかにドンピシャかお分かりいただけることだろう。
日頃サラリーマンでもある筆者には膝を打つ歌詞が満載で個人的に大好きなナンバー“150-300”をやってくれたのも嬉しかった。スカの疾走感や跳ねるピアノが最高なんだよなぁ。定番ジャズスタンダード“On the Sunny Side of the Street”で楽しませてくれた後、吾妻から終演に向かっているMCが出るとフロアから残念がる歓声が巻き起こり、メンバー紹介を順にしていく。出身地を主張する者、微熱があるにもかかわらず出演している者、このバンドは口を開けば笑いを引き起こすのだ。
2026年1月11日(日)の渋谷公会堂公演のことを宣伝し「来いとは言ってないよ」とおどける。ここ数年の人手不足のことを歌ったスローブルーズ“誰もいないのか”。「イントロは何だっけ?」とか言いながら。渋い!巧い!かっこいい!の3連発なバンドのアンサンブルだ。渾身の「もっと早く言えよ!」の雄叫びからダブルネックでいなたく弾き倒すとこなんて最高の一言。
前曲ラストの「俺は昔から虫が苦手だ!」とかけて「虫は好きですかー?」、「虫は嫌いですかー?」とオーディエンスに問いかける。嫌いな方の歓声が多いのを見て「俺も嫌いだ―!」とジーン・フィリップスの“Big Bug Boogie”をアップビートに発進。ブラス隊の特大ブロウが何とも痛快だ。「殺虫剤持ってこーい」と締めくくり、またチラッと来年1月11日の公演の宣伝を言って爆笑を生み出し「ナマステー」とステージを後にした。
鳴り止まない拍手にカムバックし、有志(キーボード、ベース、ドラム、トランペット、サックスの6名)でちょっとだけ、昼の軽音楽という感じで聞いていただければと披露されたのはボブ・ハワードの“Swingin’ On The Moon”。仲間たちと長年一緒にやり続けてきたジャンプブルーズへの愛いっぱいのステージでフジロックの最終日を彩ってくれた。先ほどまでの寂しい気持ちもどこかへ飛んでいったよ。
[写真:全10枚]