MOREFUN - INTERVIEW 7/26 SAT
Jリーグ苗場支部を立ち上げたヘイッキさんがいま一番やりたいこと「昔は叩かれることもあった」
フジロックで通算18回目を迎えたJリーグ苗場支部の今とこれから
音楽とサッカーを愛するフジロッカーたちが、今年も苗場で声を枯らしている。
2004年から開催されている『Jリーグ苗場支部』が、2025年7月26日の午前11時30分からOASISエリアで開催。通算18回目を数える名イベントが、フジロック2025の二日目を盛り上げた。
日本のサッカーファンだけではなく、海外サッカーや野球のファンも集結する『Jリーグ苗場支部』。同支部を立ち上げ、この日も乾杯の音頭をとったヘイッキさんに話を聞いた。
▼Jリーグサポーター80人以上が集まる名イベントに成長
暑い日差しが照りつけるフジロックのOASISエリアに、色とりどりのユニフォームが集まった。
北は仙台、南は沖縄まで、全国に点在するサッカークラブのファン・サポーターが入り乱れる異色の光景だ。
今年で通算18回目となった『Jリーグ苗場支部』の仕掛け人は、J1京都サンガF.C.のユニフォームを着て現れたヘイッキさん。過去に勤めていた会社がフィンランドと取引をしていたため、同国のポピュラーな名前であるヘイッキがあだ名になったという。
OASISに集まった人々と同様、ヘイッキさんも大のサッカー好きであり、ベテランのフジロッカーだ。毎年のようにOASISへ集まり、サッカー談義や音楽談義に花を咲かせてきた。
「首位ですいません(笑)」「あの選手いいですね」「次節は勝ちます」と、炎天下の中で異常な盛り上がり見せたサポーターたちだったが、この光景は当たり前ではないという。
「『Jリーグ苗場支部』ができたきっかけは単純でした。当時、フジロックには海外クラブのユニフォームを着ている人が多くて、逆にJリーグのユニフォームはほとんど見なかった。それが何だか悔しかったんです。だから、Jリーグのサポーターがもっと主張できるような場を作りたかった」と立ち上げを決意した。
ファッションアイテムとして注目を集めるようになったサッカーユニフォーム。フジロックでは、ロックバンド『Oasis』のギャラガー兄弟が愛するイングランド1部のマンチェスター・シティをはじめとした、海外クラブユニフォーム着用者が目立つ。
それでも近年では『Jリーグ苗場支部』の活動もあり、Jリーグクラブのユニフォームを何度も見かけるようになった。この日のOASISエリアには老若男女を問わない80人以上が集まり、笑顔で交流を楽しんだ。
「昔はmixi(ミクシィ)が全盛期で、『ドラゴンドラを上がった先にある苗場スキー場の頂上で東西フットサル対決をやろう』と集まっていました。最初は10人から15人で、山頂フットサルを楽しんでいたんです。
そこで、せっかく集まれるのならば下の会場でも乾杯をしたいという話になった。それがいまの形につながっています。当時は地域リーグからJ1まで、一人ずつ自己紹介やチャントを歌ってもらいましたが、いまでは時間がとてもかかってしまう(笑)。だから新型コロナウイルスが流行してからは、乾杯がメインになりました」といまの形が定着した。
活動やムーヴメントはどんどん盛り上がりを増している。
はじめはゲリラ的に開催していた集まりがいまではフジロックの恒例行事だ。さらに『Jリーグ苗場支部』はJリーグ公式が取り扱うほどの名イベントに成長した。
そんな中、『Jリーグ苗場支部』は再び変化の時を迎えていた。
▼ヘイッキさんが一番やりたいこと
Jリーグは来シーズンから、従来の春秋制(2月、3月に開始し、11月、12月に終了)を撤廃し、秋春制(8月、9月から翌年の5月、6月までを予定)に変更する。
これまでは、熱戦が繰り広げられてきたシーズンの真っただ中に開催されていた『Jリーグ苗場支部』。筆者はオフシーズンの開催によって発生する盛り上がりの低下など、様々な影響を危惧していたが、ヘイッキさんは心配していないという。
「秋春制になることで、むしろ試合と(日程が)被りにくくなって、ここに来やすくなる人が増えるかもしれない。『試合があるのに、何をやっているんだ』と昔は叩かれることもあったんです。でも、こうやって継続してきたから『Jリーグ苗場支部』って楽しそうという見方に変わってきた。
いろいろな理由をつけて叩きたい人は今後も出てくるかもしれませんが、自分たちはこれからもフジロックとJリーグを愛する全国のみなさんに対して、『1年に一度、苗場に集まって乾杯しましょう』と伝えていきたいです」と変化をポジティブに受け止めていた。
この日、集まったサポーターからは「『Jリーグ苗場支部』のおかげで、いろいろなつながりができた」と喜びの声が聞こえてきた。アウェイに遠征へ行った際には、ここで知り合った他クラブのサポーターから、オススメの店とスポットを紹介してもらったり、注目の選手や音楽を共有し合える。まさに敵味方を超えた関係性だ。
OASISに集まった方々と恒例の記念撮影を終え、サポーターたちとの交流を楽しむヘイッキさんに、今後の『Jリーグ苗場支部』について聞いてみた。すると「一番やりたいことがあるんです」と気持ちのいい笑顔が返ってきた。
「もっと多くの人に集まってほしいのはもちろんです。その上で『Jリーグ苗場支部』には拡張性があると思っています。例えばきょうもプロ野球、海外ユニフォームを着た人が何人か来てくれていますが、もっと増えてほしい。
あと、一番やりたいのは韓国のチームやアジアのクラブを巻き込んで、相手チームを煽り合うみたいなことをやりたい。面白そうじゃないですか(笑)」
『Jリーグ苗場支部』を通じた人の輪がどんどん広がっている。
サポーターたちは「次はスタジアムで会いましょう。そしてまたフジロックで!」と再会を誓った。来年のフジロックでは、どれだけカラフルな『Jリーグ苗場支部』が見られるだろうか。
[写真:全6枚]