FUJIROCK EXPRESS '26

LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/24 FRI

HYUKOH

  • HYUKOH

Posted on 2026.7.25 01:16

彼岸から都市、そして現在地へ旅するような凝縮された1時間

昨年はSunset RollercoasterとのプロジェクトAAAでグリーンステージに立ったHYUKOH。2026年は「Seoul Jazz Fes」やモンゴルのフェス「PlayTime Fes」に出演するなど、AAA以降のアクションを見せているが、新曲やニューアルバムの声はまだ聞かない。果たして今のHYUKOHが何を見せるのか。結論としてやはり夜のHYUKOHは格別だった。スピリチュアルとか彼岸と呼んでもいいようなライティングが作り出す空間で彼らのレパートリーは映える。そして僭越ながら、何よりAAAの活動を経て演奏への向き合い方が格段に高く、バンドを楽しんでいるように見えたのだ。演奏の精度、粒度。そしてこれほど気持ちの乗ったオ・ヒョク(Vo/Gt)を見たのは個人的に初めてだったのだ。

サウンドチェックが終わった20:00時点でレッドマーキーは後方まで満員。近年、韓国や台湾などアジアのオーディエンスが増えたことも、その熱量をさらに倍加している。スタートまでのBGMは“Berghain”(ロザリア、ビョーク&イヴ・トゥモア)などオペラっぽいムードを醸し出している。と、SEはなくメンバーが登場すると、“Silverhair Express”でじわじわグルーヴを増幅するスロースタート。夥しい光を零すミラーボールの演出も相まってラウンジジャズかのよう。続く“Help”もリバービーで独特の音響だ。サイケな中にオ・ヒョクの叩くボンゴが無国籍な色合いを加える。イ・インウ(Dr)のスネアとバスドラを交互に鳴らすイントロに歓声が上がると、まだじわじわ攻める系の“Hey Sun”。歌い出しからファルセットの難しいラインをオ・ヒョクこともなげに決める。スモークに包まれたステージから聴こえる演奏もボーカルもタフなのに現実感がない。

EP『through love』から3曲続けたあと、流れが“Graduation”のループするギターを始め、リフが積み重なりブレイク、一瞬の白い光からテンポアップした瞬間、レッドマーキーに小爆発のような盛り上がりが起こり、アウトロからそのまま聴き馴染みの深い残響のないイム・ドンゴン (Ba)のベースフレーズ。素朴なぐらいのそれが大歓声を起こし、HYUKOHバージョンの“Young Man”へ。AAAのそれともSunset Rollercoasterのそれとも違い、よりロックでアンセミックな響きだ。HYUKOHにとってもSunset〜にとっても新たな意味を持つレパートリーに育ったことが理解できる。ここからはもう1曲1曲イントロの歓声が大きくなるばかりで、ミドルテンポの“Goodbye Seoul”も、メロディの特異性とリリックにファンが多いと見た。そしてイム・ヒョンジェ (Gt)のプログレ〜ハードロックなギター志向が堪能できる“Flat dog”。そう、ヒョンジェは土曜日、BongjeinganでORANGE ECHOのステージにも立つが、この曲は結構両バンドの接点なんじゃないか?と感じた。

自由なリアクションを見せるフロアがさらに脇立ったのが“Wanli”、“MASITNOSOUL”、“Citizen Kane”、“Tokyo Inn”のソリッドなアッパーチューンの連なり。序盤の彼岸めいたサイケデリアは都市を映すビートや音像に違和感なく接続していた。彼らの場合、ジャンルは多彩な上に1曲の中でも明確にソウルとかファンクとかR&Bと呼べる定石を打たない。好みの違うメンバーが生み出すいい違和感がHYUKOHをどこまでもロックバンドと呼びたくなる所以だと改めて感じる。

それにしてもオ・ヒョクのギター&ボーカルとしての地肩の強さはいい意味でこのバンドをポップな存在たらしめている。再びスローチューン“New Born”に帰着したバンドは1時間弱の旅をそのまま見せてくれたようなニュアンスだ。これまでのキャリアを凝縮に凝縮したセットリストは“Gondry”で締め括られたのだが、《we stay the same》で終わるリリックも穏やかに繰り返されるスライドギターのリフレインも、ここからまた続いていくバンドの未来やメンバーの人生を描くように響いた。期待を込めて言えば、新曲やアルバムとともにフジロックを再再訪して欲しい。

《Setlist》
Silverhair Express
Help
Hey Sun
Graduation
Young man
Goodbye Seoul
Flat dog
Wanli
MASITNONSOUL
Citizen Kane
Tokyo Inn
Comes and Goes
New Born
Gondry

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7/24 FRIRED MARQUEE