FUJIROCK EXPRESS '26

LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/25 SAT

ブランデー戦記

  • ブランデー戦記

Posted on 2026.7.25 16:01

誰かの郷愁に留まらない、新時代のレトロ・オルタナティヴ

ブランデー戦記 ── どこかミステリアスな響きを持つ名のこのバンドは、2022年8月に結成された、蓮月(Gt/Vo)、みのり(B/Cho)、ボリ(Dr)からなる大阪発の3ピースロックバンドだ。バンド自身初となるフジロック出演は、雨の降る二日目朝のレッド・マーキー。このステージで彼女たちがオーディエンスに見せつけたのは、オルタナティヴなガレージ・ロックと昭和ポップスや歌謡曲の哀愁を帯びたメロディ、そして現代的な気怠さを融合させたブランデー戦記の世界観だった。

ステージには「BRANDAY SENKI」のロゴが刻まれたバックドロップ。鐘の音とアラートめいたSEが鳴り響く中、まずはみのりとボリが登場。SEに合わせ、ボリがドラムでリズムを刻み始めると、ラストに姿を見せたのはギターヴォーカルの蓮月だ。Y2Kのポップ・パンクや往年のグランジの香りを感じさせる装いで、彼女は凛として舞台に現れた。静かにギターを構えると、フジロック初ライブの幕が切って落とされた。そのオープニングを飾ったのは “27:00” だ。重低音が響くダウナーでダークなグルーヴと、感情の揺らぎと孤独を浮き彫りにする蓮月のアンニュイなボーカルが、午前3時の形容しがたい「静寂に潜む憂鬱と情念」を苗場の朝へと鮮烈に描き出した。

オープニングソングが終わり、間髪入れずに投下された “Kids” では、一転してグランジテイスト溢れる強烈なファズギターのリフが炸裂し、聞き手の感情を揺さぶる。続いて、《嫌なことは辞めてさ 好きに生きるんだよ / ケチなやつ / ダサいやつはもういらない》と人間の感情をド直球で解き放つ新曲 “もういらない” を繰り出すと、その勢いそのままにデビューアルバム『BRANDY SENKI』の冒頭を飾る “The End of the F***ing World” へ 。《飛ばしてよ / 散々な毎日が良くなることはない / このスピードは誰にも邪魔させない》という言葉とともに、世界の終わりを想起させるような退廃的な美しさと昭和味あるエモーショナルなメロディがレッドの空間に広がっていく。

シニカルでありながらドラマチックに展開するアンサンブルが際立つ “悪夢のような” を経て、蓮月が次の曲 “Fix” の背景にある情緒的な記憶を静かに語り始めた。「人間同士の関係がうまくいかなくなっても、一緒にいるしかない。苦しくてもお互いを見つめて、関係を修復していきたい。そんな想いを込めて書いた曲です」。そして披露された “Fix” で、蓮月は歌詞に込められた思いを、歪んだギターとフックの効いたサビのメロディに乗せて歌った。

そして、終盤に差し掛かって披露されたのは “ラストライブ” だ 。「終わり」や「別れ」という不可逆なテーマを宿したこの楽曲で、エモーショナルなメロディラインと圧倒的な音圧で観客の心を強く揺さぶる。そこから畳み掛けるように始まったデビュー曲 “Musica” では、90年代ロックを彷彿とさせる質感を持ちつつ、サビでは非常にキャッチーで叙情的なメロディが奏でられ、蓮月のボーカルが持つ哀愁とハスキーな響きも相まって、聞き手の心に熱を与えていった。ブランデー戦記の世界観全開のライブ、そのラストソングは “Coming-of-age Story” だった。若者特有の焦燥感と青春の痛みを肯定する伸びやかなアンセミックなサウンドが放たれ、切なくも爽快な余韻を残してライブは幕を下ろした。

グランジやオルタナ、そして昭和ポップスや歌謡曲の情緒的な遺伝子を継承しながら、現代の若者が抱えるリアルな寂しさや衝動を卓越したソングライティングでポップスへと昇華させてみせたブランデー戦記 。朝のレッド・マーキーに刻まれた、この生々しくも美しく歪んだ彼女たちのバンドサウンドは、これからも多くのリスナーの心を掴み続けるに違いない。

<セットリスト>
27:00
Kids
もういらない
The End of the F***ing World
悪夢のような
Fix
ラストライブ
Musica
Coming-of-age Story

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7/25 SATRED MARQUEE