LIVE REPORT - FIELD OF HEAVEN 7/25 SAT
YUUF
Posted on 2026.7.25 16:21
雨上がりの“ヘブン”に鳴りはじめた桃源郷
朝から苗場を叩き続けた豪雨が、昼を過ぎてようやく勢いを緩めた。ボードウォークを抜けた先、木々に囲まれたFIELD OF HEAVENには、雨上がりの澄んだ空気が漂う。文字どおり、音楽ファンにとっての“ヘブン”。この場所に登場するのは、ロンドンからやって来た4人組、YUUFだ。
手を振りながらゆったりとステージに現れた4人。長い髭が印象的なドラマー、オリバー・オーバーガードは向かいの山々を見渡しながら、「Hello, Fuji Rock! ありがとう。Wow……これまで訪れた中で一番美しい場所です」と感激した様子で語る。「楽しむ準備はできていますか?」。その一言だけで、場の空気はすっかり和んでいた。
幕開けは“Calzaghe”。ポコポコと跳ねるドラムを合図に、重厚なギターと唸るベースが絡み合う。ヒューゴ・コッツは冒頭からチョーキングを多用した鋭いギターソロを放ち、一気に観客をYUUFの世界へ引き込んでいく。そのままなだれ込むようにはじまった“Night Air”では、バンドの個性であるアンドリン・ハーグのハンドパンが幻想的な響きを広げ、アンソニー・ボートライトはボウイング奏法でベースを鳴らし、サイケデリックな空間をさらに増幅させる。自然とフロアはゆっくりと揺れ始め、ヘブン全体が呼吸をしているかのようだ。
「日本に来るのは人生で初めてなんです。しかも、こんな素敵な場所で。本当にありがとう。」アンドリンの言葉に温かな拍手が送られると、“Iman”へ。ギターとハンドパンがユニゾンするように浮遊し、その隙間を軽やかなビートが駆け抜ける。ちょうどその瞬間、雲の切れ間から太陽が差し込んだ。高揚するリズムとどこまでも美しいメロディ。思わず胸が熱くなる。このステージほど、この音楽が似合う場所はない。ヒューゴのライトハンド奏法も鮮やかだったが、それ以上に印象的だったのは、技巧を誇示するのではなく、ただ「気持ちいい音」を鳴らすことに徹する4人の姿勢だった。
シェイカーが軽やかに鳴り、“Open At Noon”へ。中東音満載のギターフレーズとともに、緩急自在の展開が観客を心地よく揺さぶる。音源で聴くのとまったく異なる豊かな響きを放つハンドパン、そして再び飛び出すアンソニーのボウイング。ベース一本で空間を歪ませるようなサウンドは、まるで森の奥へ迷い込んだかのような感覚を生み出す。
「イラッシャイマセ! フジロック! 私たちはユーフ!」ヒューゴが覚えたてであろう日本語で呼びかけると、客席から大きな笑顔と歓声が返る。ほんの一言で距離が縮まり、場全体が温かな空気に包まれる。そして、“Calima”から“Alma’s Cove”へは息をのむような流れ。シェイカー、コンガ、ハンドパンなど幾つものパーカッションを自在に操るアンドリンが、YUUFというバンドの世界観を鮮やかに描いていく。アンソニーは何度もハートマークを掲げ、客席へ愛を届ける。「みんなの顔が見られてうれしいよ」。そんな言葉に続き、“Oh Baby”ではバンドのリードで大合唱。バンドとオーディエンスが交わすコミュニケーションが、とにかく楽しい。こんなライブはそうそうない。
「僕たちはイギリスから来たけれど、それぞれ違う国の出身なんだ。」ヒューゴがデンマーク出身のオリバー、スイス出身のアンドリン、フランス出身の自身を紹介し、最後にイギリス出身のアンソニーを紹介してバトンを渡す。そのまま始まったベースソロでは、ボウイングによって浮かび上がるアンビエントな低音が会場を包み込み、そこへハンドパン、深いリヴァーブをまとったギター、力強いドラムが重なっていく。自然発生的なセッションは、そのまま“Silky Spring”へ。哀愁を帯びたギターが空へ伸びると、一斉にグルーヴが解き放たれ、ヘブン一帯がその波に飲み込まれる。すごい。こんな瞬間を、この大好きなヘブンで体感できるなんて…なんと幸運なのだろう。
オリバーはドラムセットの椅子の上に立ち、「なんて美しい景色なんだ! もっとほしいよね?」と語りかける。そしてはじまったのは、まさかのThe Verveの“Bitter Sweet Symphony”。誰もが知る名曲をYUUF流に大胆にアレンジし、後半に向かうにつれてビートはどんどん巨大になっていく。ヒューゴのギターはジミヘンかというほどに自由奔放に弾き倒し、バンドの圧倒的なグルーヴが全身を包んだ。
さらに“Mesa Mesa”から“Tyler”へ。アラビックな旋律、重低音のボウイング、パーカッション、そして爆発するドラム。静と動を自在に行き来する展開に、観客は完全に没頭。オリバーの周りへメンバー全員が集まり、おどけながらビートをあおる姿も実に愛らしい。卓越した演奏力を持ちながら、どこまでもチャーミング。それがYUUFというバンドの魅力だ。
「このあと隣でマーチするから遊びに来てね。あと1曲いける?」最後を飾った“Ørken Bloom”では、前のめりに突き進むビートの上で、ギターもパーカッションも歌うように響き渡る。4人が全身全霊で音を重ねる姿に、観客も惜しみない拍手で応える。演奏を終えると、何度も深く頭を下げ、感謝を伝え、最後は全員で記念写真を撮影。ここヘブンは幸福感に満ちた笑顔であふれていた。
雨上がりの森に鳴り響いたYUUFの音楽は、自然と人とを優しく結びつけ、この場所を本当の“ヘブン”へと変えてみせた。こんな感動は、きっとここでしか味わえない。ライブって、やっぱりいい。フジロックって、本当に最高だ。
[写真:全10枚]









