アトミック・カフェに咲いた魂の花
てっきり、3人編成(中川敬、高木克、リクオ)だと思ってアヴァロンへと来てみたら、まんまソウル・フラワー・ユニオンだった。しかも、誰一人欠けてはいない。ついさっき、ホワイト・ステージで突っ走ったばかりだと言うのに…脱帽だった。
「NUCLEAR RACE OR HUMAN RACE」というTシャツが、誇らしげに中川の胸からメッセージを発している。どちらを選ぶかと言ったら…って、少し考えればわかること。メンバーの後ろを見やれば「ATOMIC CAFE」の旗が、これまた誇らしげに掲げられている。
声を挙げることにかけて、SFUは天下一品。それは、今回の震災のみならず、阪神大震災に沖縄、果てはパレスチナに至るまで、現場を見てきたからに他ならない。そんなことを、関西流のユーモアを交えて、適切なことを柔らかく言える数少ない存在だと言える。
MCを極端に減らしたホワイトでのライヴと違って、アヴァロンでは完全にリラックスしていたようだった。中川はユーモアのみならず、子煩悩な一面すらもさらけ出し、「子供の前でこれを歌ったら、狂喜乱舞やね」と呟いてから、”アンパンマンマーチ”へ。こちらは自ずと、幼少時代へとフラッシュバックし、次の瞬間には、さもそのアレンジが元からあったかのように、しっくりとハマっていた感覚が襲ってきた。
“極東戦線異状なし!?”は、「この戦争を止めさせろ」と直球な歌詞が並ぶ。出演時間の限られたイベントでは、あまりやらなかった曲だ。しかし、この「アトミック・カフェ」という、物事を考えるきっかけを与える場には、最も相応しい曲だった。”満月の夕”の歌詞を追えば、ガレキが散乱する映像や、被災した人々の表情すらも浮かんでくる。そもそもは阪神大震災の状況を歌ったものだが、それがそのまま東日本大震災の被害状況とも重なり、復興に向けて歩んでゆこうとする意思も縫い込まれている。まさに今の日本の状況を示していた。
そして、終わりはやはり”うたは自由をめざす”だった。ホワイトと同じく、「辺野古・高江・祝島・玄海・福島…」と、基地や原発で揺れる「発火点」の名前を引き合いに出し、最後は「苗場から/うたは自由をめざす」としめくくられた。苗場も、音楽のエネルギーが渦巻くポジティヴな「発火点」という意味があるのだろう。
やはり、今の日本には魂の花が必要だ。そんなことを改めて思ったのだった。
文・西野太生輝
写真:花房浩一