envy

Red Marquee | 2011/07/31 03:30 UP
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5年ぶりに苗場に解き放つ、ハードコア精神

 強いものだけが見せる事のできる世界。5年ぶりにフジロックへの出演となったenvyは、今日まさしくそれを提示したと思う。孤高のハードコア・バンドとしての強さをも見せつける形で。

 定刻に昨年リリースの『Recitation』のオープニングを飾る「Guidance」が静かに流れだし、メンバーが登場する…と思ったら、黒装束を身にまとった女優の奥貫薫が登場。これには腰を抜かしそうになるほど本当に驚いた。彼女が同曲にゲスト参加していること(+PVに出演)はご存知の方もいると思うが、そのポエトリーリーディングの再現をこうして目の前で確認できる事にまず感動。そして、これがenvyが紡ぎあげる深遠かつ激しい世界へと優しい入り口となった。

 そのenvyは、初っ端の「worn heels and the hands we hold」から魂のこもったアグレッシヴなパフォーマンスが会場を震わせる。切ないアルペジオの旋律、共鳴するツインギター、力強いドラムの律動に導かれるように、深川の祈りにも似た叫びと轟音が炸裂する彼等の音楽は、激情という言葉で表わされることが多いと思う。しかし、それは芯の強さが当然あるからこそ。その轟音と静寂のコントラストの美しさ、そして様々な感情が激流となってが聴き手の胸の奥に熱いものを残す。

 序盤でポジティヴなエネルギーと猛烈な疾走感を伴った「Dreams Come To End」、そして初期のハードコアとしての資質が全面に押し出される「左手」というナンバーで一気に会場がスパークし、振りあがる拳やモッシュの嵐が物語るように熱気が充満する。メンバーも負けじと精力的に動き回り、上手のギタリストの方は派手にコケてしまうほどに気合が充実。フジロックという舞台に出演していることはあるにせよ、バンドのアグレッシヴさ、情熱が半端ない。15年以上も自己鍛錬し、ハードコアに向き合い、進化/深化させてきた彼等の想いの結晶が全て演奏に込められているかのようだった。

 3曲を過ぎた辺りで、大勢の人がレッドマーキーへと足を運ぶ姿が目に付く。おそらく盟友のMOGWAIのライヴが終わったからだと思うが、この轟音バンド同士の橋渡し(なんといってもMOGWAIとenvyはレーベルメイト)もまたライヴの盛り上がりには不可欠だったのだと今さらながら思う。そして、ライヴはポストロック然とした静と動の美しいコントラストがタイトル通りに明媚な風景をもたらす「風景」、初期の人気曲になる「静寂の解放と嘘」へと繋がっていく。しかし、ここにきてさらにエネルギーを増して、力強いパフォーマンス。お世辞抜きで、今日のステージが僕がenvyを見た中で一番凄いんじゃないか!と、この辺りで確信できた程だ。「暇つぶしで始めたバンドが、まさかフジロックに出れるとは思ってませんでした。」と遠慮気味に語ったが、弛まぬ努力や困難に打ち勝ってキからこそ、今のenvyがある。

 「震災で困っている方々に何かできないかということで、空き時間を使って曲を作りました。」という言葉を挟み、終盤でその復興支援曲「As serenity calls your name」を披露。この曲は自然災害の恐怖、絶望に打ちひしがれた人々の想い、そして生命の尊さを物語る様な重厚な曲調で進み、最後に力強い一歩を踏み出す勇気を与えてくれる長編物語となっている。気になった方々は是非ともダウンロードして、震災で苦しむ人々の手助けをしていただきたいと思う。彼の言う「200円払ったら1曲ついてきた」という気持ちで。

 何度も胸が焦げたライヴもいよいよ終局。胸を掻き毟る様な哀切さと激情にまみれた「狂い記せ」では、あまりにも壮絶な演奏、そしてエモーショナルな轟音にただただ胸打たれ、最後はお馴染みとなった「暖かい部屋」の優しさと激しさが同居したノイズが恍惚の一時を演出した。まさに圧巻のライヴ。僕は何度も何度も彼等のライヴを見ているが、ここまで凄いと感じたのは初めて。冷めない余韻、湧き上がる感動に涙腺も緩むほど。レッドマーキーのトリ前を飾った1時間近いライヴは、envyの存在の大きさを強く感じる貴重な時間であった。

-Set List-
1. 先導(Guidance)
2. 擦り切れた踵と繋いだ手(Worn heels and the hands we hold)
3. 終わりゆく夢(Dreams coming to an end)
4. 左手(Left Hand)
5. 風景(Scene)
6. 静寂の解放と嘘(Lies, And Release From Silence)
7. 安らぎが君の名を呼ぶように(As serenity calls your name)
8. 狂い記せ(Go mad and mark)
9. 暖かい部屋(A warm room)


写真:佐俣美幸
文:伊藤卓也
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