今年のフジロックの晴天ぶりは、彼のポジティブなエネルギーが空に届いたからに違いない。そんなことを考えずにはいられない、気持ち良い音楽を苗場に響かせてくれた伊藤ふみお。KEMURI時代からフジロックの常連で、ソロでは2年ぶりの出演となる。

今回は、土曜の朝一発目のフィールドオブヘブン。奥地寄りの一発目のステージとなると、正直お客さんの入り具合が微妙だったりする時間帯。どうなんだろうな、と気にしながら11時頃フィールドオブヘブンに着いてみると、既にたくさんの人で溢れていた。この前にも何かステージがあったのではないか、と思ってしまう程である。

ひとたびライブが始まると、朝のウォーミングアップと思っていた自分が申し訳ないくらいガンガンに踊らせてくれるスカパンクナンバーが続く。中でも、この日だからこそ俄然テンションが上がったのは、TOOTS AND THE MAYTALSのカバー”Monkey man”だ。TOOTS AND THE MAYTALSは、午後のグリーンステージに出演、そして、The Specials(彼らも”Monkey man”をカバーしている)が夜のグリーンステージトリ前に出演となっているからだ。本家まで待てない！と言わんばかりに、ヘブンがスカのパティーフロアと化す。

今回のステージで新曲もいくつか披露した中、その清々しさがヘブンの雰囲気に溶け込んでピッタリだったのは、”zangetsu”。そして一度聴いたら耳に残るキャッチーな”invisible heat”。この他、”KORIBAKA”、”心の鐘”や”Everybody needs some music”などのソロ曲ももちろんやったのだが、やっぱり針が振り切れるほどスイッチが入ってしまうのはKEMURIの曲だ。

とうとう会場が最高潮に盛り上がる時が来る。名曲”Ato-Ichinen”が始まったのだ！ここまでは、ちょっと後ろの方で遠慮がちに楽しんでいた人も、もうそんな悠長なことはしていられない。イントロが始まると共に、前方へと足早に駆け抜けていくフジロッカーが続出。やっぱり、こうでなくっちゃね。輝く太陽の下、ヘブンには今朝一番の大きな砂煙が舞い上がった。2007年のグリーンステージでフジロック最後となるライブを披露したKEMURI。その時と同じ晴れわたる青空の下、実に5年ぶりに苗場でこの曲を聴くことができたのは、今年のフジロックの大きなハイライトだ。

ご存知の通り、KEMURIは今年の5月、この秋開催されるAIR JAMにて再結成することを発表。今回のMCでは、KEMURI再結成後もソロ活動は続けていく、ということを改めて語っていた。彼曰く、KEMURIであっても伊藤ふみおであっても、やろうとしていることは同じ。聴いてくれる人が楽しい気分に、そして笑顔になってくれることを目指している、と。そう言って、最後を”Egao-no-hana”で締めくくった。

彼がステージで放つ魅力は、KEMURIであってもソロであっても変わらない。苗場の空だけでなく、見る人の心をパッと明るく、そして活き活きとさせてくれるパフォーマンスは今も変わることなく健在だ。それを考えると、宮城で行われるAIR JAMでの再結成は必然だったのではないかとさえ思う。彼らが音楽を通して届けてくれるパワーは、これから日本を復興させていく中、前向きに生きていく上で心の支えのひとつとなってくれることだろう。そして、ひとつでも多くの笑顔の花を咲かせることができるように、私達ひとりひとりができることを見つけて行動していかなければ、そう思わせてくれるステージだった。