GREEN STAGE, | 2012/07/28 21:05 UP

THE SPECIALS

それぞれの「スペシャル」な思い出とあこがれ

黒地に白抜きのロゴ、照明は白のみで「2トーン」を演出し、その雰囲気づくりは完璧だった。キャラクター(ウォルト・ジャブスコ)がいないのは、今回の再結成に参加しなかった生みの親、ジェリー・ダマーズに関係しているのだろう。

「2トーン」創設者のジェリーがいないことに、賛否両論はあるはずだ。彼は今、リコ・ロドリゲスらとビッグバンドを組み、Jerry Dammers’ Spatial A.K.A Orchestra名義で活動している。だけれども、ただ単に「スペシャルズ」といえば、今回出演した、テリー・ホールが歌う、スタイリッシュなTHE SPECIALSであり、長い下積みを経て成り上がったTHE SPECIALSなのだ。メンバーが抜けたり、入れ替わったりしただけでなく、それぞれが年輪を重ね、見た目もずいぶんと変わった。だけれども、音だけはレコードに忠実だった。再結成というものは、当時リアルタイムだった人間ならば思い出を掘り起こしたいがために期待し、当時を知らない者は、追体験ができればよい。音だけは「そのまま」でいてほしいのだ。

開始前、さらりとロンドンオリンピックの「なでしこジャパン」に触れていた。説明はなかったが、おそらく初戦が彼らの本拠地・コヴェントリーで行われたからだと思われる。その日本向けの話題のあとで、”Gangstars”へ。ここから先は、当然のことながらTHE SPECIALSの歴史を丸ごと出すセットとなっていた。

リズムギターのリンヴァル・ゴールディングは、曲の前に必ず煽りを入れてくる。それは直接的なものだったり、ヒントにすぎなかったりと様々だ。いくつかの例を出すと、「ダンス!」と言えば”Monkey Man”(スカ独特のダンスで、「モンキーダンス」というのがある)で、「ワン・ツー」とカウントを出せば”Little Bitch”という具合。クラブヒットとなった後者では、パンクさながらのモッシュが沸き起こっていた。

レスポールを持ったロビーは、スーツで固めた他のメンバーとは違い、袖を切りっぱなしにして、腕に刻まれたタトゥーをあらわにしている。彼のリードギターは、ファッションとリンクするパンクや、ニューウェーブといったスペシャルズの全盛期、70年代後期〜80年代初頭の雰囲気を色濃く残している。モニターに大きく映り込むタトゥーを見やれば、そこには白黒の市松模様があった。

長くジェリーとの話し合いを行っていたといわれるドラム、ジョン・ブラッドリーは、手首の素早い返しでもって、乾いたショットを繰り出す。テリーは、そっけない素振りを見せながら、手のひらでは常にリズムをとり、当時と変わらない歌声を披露していた。

本編が終わり、テリー以外のメンバーがオーディエンスに求められる形で登場し、インスト曲”Guns Of Navarone(ナバロンの銃)”が響き渡った。グリーンを埋め尽くした顔には、青春に浸って感慨にふける者、伝説に触れて感動する者、「2トーン」では表しきれない、様々な色の表情があった。


写真:中島たくみ 文:西野太生輝
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