GREEN STAGE, | 2012/07/29 12:40 UP

奇妙礼太郎トラベルスイング楽団

愉快かつ陽気な楽団が彩る懐かしく新鮮な時間

大阪発の奇妙礼太郎トラベルスイング楽団を知ったのは、本当につい数ヶ月前のこと。たまたま最新作『桜富士山 sakura fujiyama』の音源を聴く機会があったのだが、勝ち気というか、果てしなく陽気で、すっかりお気に入りになり、ずっとリピートしていたところ。しかも、フジに出演すると聞き、もう普段の仕事にも手を付けられないくらい浮かれてしまっていた。

彼らは1日目に苗場食堂にも登場したのだけど、3日目のこの日にはフィールドオブヘブンに出演。総勢10数名からなるスイング楽団とともに登場するやいなや、グンと体を伸ばしてみたり、早くもごきげんな様子で、“わるいひと”や“あの娘に会いにゆこう”などを、ビシッと決めながら聴かせてくれる。彼らの曲は、例えば、ちょっと切ない詞だとも、開き直って、「じゃぁ、もう、いっそくよくよしよう」みたいところがあり、センチメンタルになり過ぎないのがいい。

MCに入ると、「もうこれ足についたら、どこに行っても見れるわ」なんていう奇妙礼太郎の言葉が。何があったのかと思えば、足にセットリストがくっついてしまったようで、しまいにはそのリストをクルクル丸めて、観客の方へと投げてしまっていた。いや、もうあっぱれとしか言いようがないほど、自然体で思いつくままに行動し、話していくのだが、だとしても憎めないというか、むしろ、愛らしい。この日だけで例を挙げてみても―—「フジロックやんな?念のため…(笑)」と声を掛けたかと思えば、急に「長生きしてな」などなど、奇妙節が炸裂しているのだ。それと、なぜか曲終わりに「へへへ」と笑うのだが、それだけでなんとなくこちらまで多幸感がフワッと漂ってくるから不思議である。

“スイートソウルミュージック”では、はちきれんと言わんばかりに、心地よい空気を誘うきらびやかなサウンドが。そして、“桜富士山”では音源とは違って、わざとメロディをハズしながら、あの味のあるしゃがれた声をめいっぱい響かせていく。この楽団の楽曲は、ロックンロールから歌謡、スウィングなど、様々なエッセンスが凝縮されているのだけど、懐かしさがありながら、何だか「誰かと似ているね」なんてことはないのもまた魅力的である。

カヴァー曲“SWEET MEMORIES”では、コーラス&パーカッションとして参加していた杉瀬陽子がスペシャル・ヴォーカリストとして、奇妙と声を絡ませていく。杉瀬が歌うと奇妙はなんだか照れているのか、飛び跳ねたりと、とにかく飽きさせないステージングを魅せてくれる。終盤には、カヴァー曲“星に願いを”と“オー・シャンゼリゼ”を。みんなで大合唱して締めくくり、一度、奇妙はステージ外にはけたのだけど、喝采を聴いてなのか、再び登場してくれた。

ラスト曲は、ワンダフルボーイズのカヴァー“君が誰かの彼女になりくさっても”。「俺、全部知っているで」と言わんばかりに、ズバッと心を見透かされているような気分になるものだから、本当に久しぶりにズドンときてしまった。もうポロポロとよく出るなと思ってしまうくらい、気付けばガチ泣きしてしまっていたのが実のところ…。たぶん、今現在恋をしていなくともしていても、誰もがこの曲に惚れ惚れするのではないだろうか。それぐらい名曲だ。

曲が終わったあとも、この楽団が持つ強靭さをつくづく実感していたのだけど、近い将来もっと彼らのオーディエンスは数えきれないくらいに増えていくはずだ。そんな確信にも似た感覚があるくらい、もうライヴが終わった直後なのにも関わらず、奇妙礼太郎トラベルスイング楽団のライヴを今すぐ観たいと思ってしまっている。


写真:輪千希美 文:松坂 愛
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