GREEN STAGE, | 2012/07/29 16:40 UP

FUCKED UP

これが俺(たち)のスタイルだ

言い方はとても悪くて申し訳ないが、ハゲでヒゲもじゃでだらしない体型の男が、ライヴ後にはみんなから賞賛され、愛される素敵な男性に変わる。こんなとてつもないストーリーが用意されているとは、本当に驚いた。カナダはトロントのハードコア・バンド、FUCKED UPのフジ初出演である(来日はMCでも言っていたが2回目)。

メンバー6人がステージに姿を現すと、迫力のトリプルギターを軸に勢い良く突っ走る” Queen of Hearts”でライヴをスタートさせると、もうやりたい放題。予想以上にパワフルな音で興奮するなあと感じていると、早くもシャツを脱ぎ捨てて上半身裸になったヴォーカルのダミアンがいつのまにかステージを降りて、客席へ。「俺のもとに来いよ!」といわんばかりにお客さんの近くで叫び続ける。2曲目の” Under My Nose”でライヴはさらに加速。ダミアンはその毛むくじゃらの巨漢をもみくちゃにされながらも必死に叫んでいたが、彼めがけて飛んでくるダイヴを助けたり、近くにいた人々にマイクを向けて叫ばせたりと大忙しの様子。でもそんな彼とお客さんの間で、早くも大きな輪が生まれていた。同じく必死の戦いを続けるセキュリティ・スタッフとも抱擁を交わし、仲間を増やしている。

差し出されたジェフ・ユナイテッド千葉のタオルを振り回した後に演奏された”The Other Shoe”の盛り上がりも良好。心地良いテンポの中、女性ベーシストを含んだハッピーなコーラスがホワイトステージを笑顔にする。また、カラっとしたメロディが風に乗る” Running on Nothing”やこんなに暑いとこう思いっきり叫びたくなる”I Hate Summer”などを演奏しながら、ライヴはより熱気を帯びていく。その中で独壇場を繰り広げるダミアンは、寂しい頭に花飾りを装着したり、帽子を何着被せられるかなど遊び心を見せつつ、パンツがずり落ちて半ケツを晒しながら最前線で変わらずに戦い続けた。ちょっぴりステージに戻ったりもしたけど、結局すぐに客席に降りて叫ぶのは、彼のポリシーなのかなと。

このように最後まで走り続けた約50分のライヴは、パワフルさと親しみやすさが自然と同居していて不思議だった。「バンドのことはよく知らないけれど、とりあえずライヴを見てみようかな」と気軽に見ていた人も、最後には心を奪われてしまったのではないだろうか。あの一体感には清々しさすらあった。挨拶をしてステージ上の5人のメンバーがはけていっても、ダミアンだけは居残って人々とハグしたり、写真撮影のサービスなどでライヴ後の喜びを分かち合っていたのも印象的だ。それは名残惜しそうに5分ぐらい続き、最後は大きな拍手に包まれながら控え室へと去っていった。本当に素敵な漢だったぜ。


写真:中島たくみ 文:伊藤卓也
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