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7/25 FRIGYPSY AVALON

辻仁成

ミュージシャン辻仁成、本領発揮

「辻仁成」の名前をラインナップに見つけたとき、いったいこの人はフジロックで何をやるんだろう?と思った人は少なくないはず。歌?トーク?または朗読?まさかの記者会……(いやいや、これはない)。多くの肩書きをもつアーティストだけに、何を見せてくれるのか想像はどんどん膨らんでしまったけれど、実際アバロンのステージに用意されていたのは、マイクが一本にアンプというシンプルなセット。本人も、黒い革のブーツにパンツ、Gジャンという飾らないいでたちで登場してきた。

アコースティックギターを抱えて、集まってくれたファンに軽く笑顔を見せ、リラックスした様子でなんの前置きもないままライブをスタートさせる。1曲目から「こどものころに憧れた(中略)笑顔のたえない優しい妻」なんて、ちょっと自虐的?ともとれる歌詞がでてきて、つい先日お別れされたばかりの方の顔を想像してしまい、客席からクスクス笑いが聞こえたりも。しかし、さすがに大ヒット曲を持つ歌い手、ハスキーで、なんとなく心にひっかかってくる声で観客を少しずつ自分の方へひきつけていく。そこにいたのは作家でも映画監督でもない、正真正銘”ミュージシャン辻仁成”だった。

彼の歌に魅了されたのは観客だけでなく、苗場の山に住むとんぼもしかりだったようだ。マイクスタンドにずっととまって、逃げる様子もない。本人も気に入ったらしく「今日はこのとんぼさんと一緒にライブをやります」と、曲の中にも即興でとりいれたりして、フジロックのステージを演出していった。

“ZOO”のイントロが流れると、やはり会場の空気がざわっと動き出す。これが長く歌い継がれている曲が持つ底力。ステージへの集中が増し、その場に集まった人の目と耳が辻仁成へと注がれていく。これが聞きたくてこの場所に来た人も少なくないだろう。このライブ初めての手拍子もおこり、一番の盛りあがりをみせた。

結局、ライブ中マイクスタンドからはなれずにいたとんぼさんを見て「ここにね、ずっととんぼがいるんですよ。オレ、何かいいことあるのかな?最近あんまりいいことないんだけど(笑)」と、しっかり笑いをとることも忘れない。最後は「みんなに会えて最高です!」と満足そうな表情で観客に向かって手をあげ、ライブを締めた。そして、最終的にはマイクスタンドから自分の手へとんぼを移すことに成功。ふたりでステージを去っていった。うん、やっぱりこの人、何か持っている。

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