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7/28 – (終了後)

フジロックは僕らのふるさとだ。

始まりは"Let's Get Together Board"(一緒になろうぜ)と名付けたBBS(掲示板)だった。

「さぁ、出ておいで。仲間に微笑みかけよう。みんな一緒になって、愛しあおう、今こそ」

そんなリフレインが印象的なザ・ヤングブラッズの名曲「ゲット・トゥゲザー」から名前をいただいたこれが、フジロック公式サイトの片隅で産声を上げたのは1997年。今では日常生活になくてはならない存在となったインターネットが静かに広がり始めた頃だった。

そこから多くの人が繋がっていくことになる。まずはハンドルネームで呼び合う人たちが、当日の目印にしようと『赤いリボン』を身につけて会場入りしたのが、伝説となった嵐の第1回目。わずか3人のスタッフで、フジロック・エキスプレスの原型を動かし始めたときだった。

台風の影響で、2日目の中止が発表されて数時間後、㊙ゲストDJとして会場にいたジョー・ストラマーがやってきて、その話をするとこんな言葉が返ってきた。

「なんだって?会ったこともない人が繋がるってのか、インターネットってのは」

驚きを隠せなかった彼がこの掲示板にメッセージを残すことになる。実を言えば、そんな話をするきっかけとなったのは、彼の名を騙った書き込みだ。本人に確認を求めると、見事に否定されたのだが、そのメール・アドレスに使われていたドメイン名、riot.orgが面白かった。orgとは『オーガニゼイション』を示す。それならばfujirockers.orgがあっていいじゃないかと、当時は「裏」公式的な色彩を持つこのサイトが生まれることになる。

あれから18年、すでに過去のものとなったのが掲示板。今ではツイッターやフェイスブックといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じてその繋がりが広がり、絆が生まれていった。どこかでそれを確認させてくれたのが今年のフジロックだったように思える。

その歴史を振り返るとさまざまな出来事が頭に浮かぶ。フジロックをインスパイアさせたグラストンバリー・フェスティヴァルを、プロデューサーの日高氏が初体験したのが1986年。日本ではコンサートで観客が立ち上がると制止されていた時代だ。彼はそれに抗ってスタンディングのライヴを連発し、大ヒットしたアーティストを除けば、来日なんぞ考えられなかった時代に多種多様なアーティストを手がけていた。実を言えば、そんなアーティストのひとりが27年ぶりに来日したガーランド・ジェフリーズだ。

さらには、まだディスコしかなかったあの当時、日本で初のクラブ・セッションを企画。古典的な音楽、スカ、R&B、ジャズで踊るなんて想像もできなかった頃に、DJとしてギャズ・メイオールらを来日させ、後にバンド・デビューすることになるダンサー・グループ、ザ・ジャズ・ディフェクターズも招聘している。そのメンバーのひとりが、はやり27年ぶりに日本を訪ねて苗場に来ているのだが、面白いのは87年に彼らが来日した時のライヴで前座として姿を見せたのが、今年ヘヴンで演奏していたスカフレイムス。ここでも時代を超えた人間の繋がりを実感することになる。

フジロックそのものに目を移せば、象徴的存在となっていたジョー・ストラマーや忌野清志郎が他界し、舞台裏で働いていた仲間で亡くなった人たちもいる。さらには、今年の開催を前にあの掲示板を通じて繋がったフジロッカーの訃報も受け取った。おそらく、誰もが同じような体験をしていることだろう。が、そんな仲間たちが同じ場所で生きている我々と何かを共有しているように思えてならないのだ。

加えて、フジロックが始まった頃、日本が未曾有の震災やチェルノブイリを超える原発事故を経験することなど、誰が想像できただろう。あの事故から3年半、今も故郷に戻れない原発避難者は10数万人を超え、福島第一原発事故が収束するめどもたってはいない。これは過去ではなく現在進行形の出来事なのだ。一方、特定秘密保護法や集団的自衛権が世間を騒がせ、政治家が以前は口にさえできなかった徴兵制という言葉がメディアに姿を見せている。さらには『ヘイトスピーチ』に代表される人種差別の横行など、安閑とはしていられない時代に生きていることを感じさせられるのだ。

それでもフジロックは、とてつもなく大きな希望を感じさせてくれる。世界中から苗場に集まってくる人たちが国籍や人種なんぞ無関係に、宝物のような空間と時間を共有しながら、『生きることの意味』を体感しているのがわかる。おそらく、それを象徴していた瞬間のひとつが、数日間の旅を経てソロモン諸島からやってきてくれたナラシラト。彼らがフジロックに触発されて作った傑作「マウント・フジ」を歌った時じゃなかったろうか。

「見知らぬ土地に来て、ずっとここにいたい。君の瞳が綺麗で、ずっと忘れないよ」

満面の笑みを浮かべて、涙を流しながらこの歌を大声で歌った人たちはその意味を十二分に感じていたはずだ。

また、とびきり幸せな表情を見せてくれる子供たちがいる。パレス・オヴ・ワンダーのスタッフが、英国から一緒に連れてきた生後8ヶ月の赤ん坊の笑顔にどれほど癒されたか。ずいぶん増えた子連れフジロッカーの新世代が無邪気に走り回る光景を見ていると、望むべき未来が顔を覗かせてくれるのだ。彼らもきっと互いを愛し、気遣い合う『フェスティヴァル(祭)の文化』を体感してくれたに違いない。

さらには環境問題から、原発や人種差別といった社会問題に、真正面から向き合う人々やミュージシャンもずいぶん増えている。アヴァロンに復活しているアトミック・カフェも元をたどれば、84年から87年まで日高氏やその仲間たちが続けてきたイヴェントだ。そんな動きを通じて、さまざまな人々が声を上げ問いかけることで、政治的社会的な問題を避ける風潮が、少しずつ変化しているのではないだろうか。言うまでもなく、誰も政治や社会、経済から目をそらして生きてはいけない。向き合って当然なのだ。

「大きな木を根こそぎ掘り起こして移しても、簡単に根は張らないよ」

グラストンバリー・フェスの主催者、マイケル・イーヴィス氏にフジロックが始まったことを告げた時、そう言われたのを思い出す。フジロックがただの模倣なら、その言葉に正統性はあるだろう。が、はたしてそうだろうか?特にここ数年の動きを見ていて、あまりに巨大なビジネスと化したと思えるのが前者。32年にわたってその変化を見続けている筆者に言わせれば、オルタナティヴなものとビジネスの間で微妙な綱わたりをしながら成長を続ける後者にもっと魅力を感じるのだ。

ロック・フェスの歴史など存在しなかったに等しいこの国で、古来からの『祭の文化』が重なり合って、しっかり地に根を下ろしたのがフジロック。それを証明しているのが、この場所に集まってきたフジロッカーズじゃないだろうか。彼らは偏見なんて微塵も感じさせず、アナーキーなまでに多種多様な音楽やアートを全身で受け入れているのだ。前夜祭が始まる前からはち切れんばかりの笑顔を見せ、クロージング・アクトが演奏を終えたその後でも、くたくたになりながら微笑んでいる。そんな彼らこそが『フェスティヴァルの文化』を作り上げてきたと思うのだ。

おそらく、フジロックは、どこかでふるさとのようなものなんだろう。また来年、同じ顔が新しい仲間を引き連れて同じ時間と空間を共有するために戻ってくる。それまであと1年弱。でも、どこかで僕らが途切れることなく繋がっているように思えるのだ。そうは思わないかい?

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なお、今年のエキスプレスを手伝ってくれたスタッフは以下の通り。まだまだ未熟かもしれないが、新しいスタッフも含めて、フジロックを愛して止まない仲間たちが日本だけではなく、韓国、台湾、オーストラリアなどから集結してくれました。素晴らしいレポートの数々、そして、彼らの仕事に感謝です。もちろん、最も感動するのはみなさんの笑顔。ありがとう。

日本語版(http://fujirockexpress.net/14/
写真家:森リョータ、古川喜隆、北村勇祐、平川啓子、岡村直昭、Julen Esteban-Pretel、MITCH IKEDA、前田博史、佐俣美幸、鈴木悠太郎、粂井健太、熊沢泉、suguta、宮腰まみこ、Masami Munekawa、アリモトシンヤ、 安江正実、森空、藤井大輔

ライター:池田信之、輪千希美、名塚麻貴、松坂愛、千葉原宏美、丸山亮平、小川泰明、大山貴弘、石角友香、三浦孝文、菊入加奈子、ノグチアキヒロ、東いずみ、あたそ、山本希海、Paula、青木大輔、松村大介、森脇ヒロシ、”Special Thanks” 西野太生輝

英語版(http://fujirockexpress.net/14e/
Shawn Despres, Dave Frazier, Sean Scanlan, Elizabeth Sams, James Mallion, Patrick St. Michel, Lisa Wallin, Matt Evans, Jamie Tennant, Alisa Yamasaki

更新およびフジロッカーズ・ラウンジ
坂上大介、寺崎壮司、平沼寛生、中原愛実、宮崎萌香、飯森美歌、湯澤厚士、関根教史、藤原大和、山岡紀子、小幡朋子 、池之上祥子

ウェブデザイン・プログラム開発
三ツ石哲也、坂上大介、平沼寛生、宮崎萌香

プロデューサー
花房浩一

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