ペトロールズ
ツボ押し三人衆
サウンドチェックを終えて、そのままメンバー3人がドラムセットの前に座ってるマイペースっぷりから、さらにペトロールズのことが大好きになってしまった。そして、そのまま本番へ。お客さんの誰かが友達に「(東京)事変の浮雲さんだよ」と長岡亮介(Vo/Gt)のことを説明しているのが聞こえる。そう、そうだし、今は星野源の作品やライブなどでも大活躍中だし、あとの二人、三浦淳悟(Bs)も河村俊秀(Dr)も、ヒトクセもフタクセもあるセンス溢れるミュージシャンだ。
レアグルーヴ、ソウル、ジャズ、フュージョンからジャムバンドやマスロック的なものまでその構造を解体してペトロールズという機構で再構築したような、そのサウンドはめちゃくちゃ隙間が多くて、長岡以外の二人のコーラスも楽器的な効果を出したり、時には往年の黒人男性コーラスグループの如き艶っぽさを加味してきたりする。
例えるなら、3人のおしゃべりを音楽化したような感じと言えばいいだろうか。
隙間の多いアンサンブルはさしずめゴッドハンドがツボを突いてくるような確実さで、聴き手を良い心地にさせていく。その感じはなかなかセクシーだ。
4曲ほど披露されたところで振り返ってみると、ホワイトステージの後ろの方まで、ミニチェアでゆったり楽しむ、中にはすでに昼寝に突入している人もいる。煽ったり煽られたりすることのないペトロールズのサウンドがそうさせるのだろう。
歌詞もセンスの塊だ。長岡は単語をうまくリフレインさせてフロウを作る名人だと思うが、<忘れそう、忘れそう、自分が作ったメロディ>と歌う”表現”のシュールさの中に含まれるしかつめらしさのないリアリティに唸ってしまう。淡々とした曲調からハードなイントロダクションで空気が変わった”Fuel”は抜き差しの妙とコーラスもビート的に使うアレンジが独特すぎて嬉しくなる。途中、ファンからX JAPANの”紅”をなぜかリクエストされて、一節をドラムを叩きながら歌う河村のお茶目さ。それに乗っかるように、言われてもないのにファンからの「もっと曲やって〜」の声に「え?何?”紅”やるの?」とボケる長岡。そして寡黙な三浦。キャラのバランスも最高だ。
様々な時代のダンスミュージックの構成要素を再構築するという意味ではラストにハウス的な収縮するシークエンスっぽいサウンドをギターとベースで出していたこともまさにセンスの塊。
ああ、いいな、こんなバンド作ってみたい…気軽に思わせておきながらたぶん容易にはできない、そんなバンドなのだ、ペトロールズは。