SUPER FURRY ANIMALS
超毛深い動物たちのサイケデリックな世界
雲が多くなってきた夕暮れの苗場。涼しい風が吹き始めたホワイトステージにまもなく登場するスーパー・ファーリー・アニマルズ(以下SFA)は、今年のはじめに活動を再開したばかり。2009年から約5年間の活動休止充間を経て、SFAがフジロックに帰ってくる。18:00になり、ブーンと重低音を響き始めると、待ちきれない観客から叫び声が上がった。
ブレイクビーツなイントロがライヴ開始を告げ、真っ白な防護服に身を包んだ SFAの5人がステージに登場した。ボーカルのグリフが「拍手」と書かれたパネルを見せると、ホワイトステージに集まった観客はもちろん大喝采で応えた。バンドが“Slow Life”を演奏するなか、グリフはジュウレンジャーの赤いヘルメットを被り、マイクをこめかみに突きつけながら歌う。おなじみのパフォーマンスに歓声が上がった。活動を再開したからといって、決してドラマチックなことなどはしない。彼らの変わらぬ佇まいがファンたちの胸を熱くしているようだった。
ドリーミーな“Hello Sunshine”、ボコーダーをかけて歌う“Juxtapozed With U”、ミッドテンポで上げる“Golden Retriever”。緻密に練り上げられたサイケデリックなブリットロックの中を浮遊するグリフとキアンのユニゾンを聴いていると、どんどんその世界観に引き込まれていく。一瞬、自分がどこにいるのか忘れそうになるほどだ。一方で“Receptacle For The Receptacle”ではサビの部分で、チョコバーを食べて、サクサクという音をマイクで聴かせたり、同曲の最後にギター2本とベースをステージの真ん中で交差させて高く掲げ、弦をこすり合わせるパフォーマンスを見せたり、ちょくちょく「拍手」のパネルを見せてきたり。大真面目に演奏しているくせに、シュールな演出を忘れず、観客を楽しませてくれる。
一番の盛り上がりを見せたラストソング“The Man Don’t Give A Fuck”では途中キアンをステージに残して、メンバーたちが一旦去り、毛むくじゃらの着ぐるみにくしゃくしゃのウィッグをかぶって再登場した。バンド名どおりのスーパー・ファーリー・アニマルズ(超毛深い動物たち)である。パネルを使って拍手を煽りに煽って、最後に「ありがとう」と「おわり」のパネルを掲げると、大歓声がSFAを包んだ。シュールなジョークと、夕暮れの空に溶け込むサイケデリックな音楽。独自のSFAワールドを楽しんだ後の観客の表情はとても満足そうだった。