Moon♀Mama ( PIKA☆+ナスノミツル+トンチ+勝井祐二 )
ピカ☆の見せてくれた、夢のかけら
アルタードステイツ、是巨人のナスノミツル(Ba)、ROVOの勝井祐二(Vio)、スティールパンという「20世紀最後にして最大のアコースティック楽器発明」と言われるドラム缶から作られた音階のある楽器の奏者であるトンチという豪華メンバーとサポートメンバーである伊藤繁(Dr)を従えて、ゆっくりとステージに姿を現した、ピカ☆(Vo&Gt)。
「こんにちは~。ムーン♀ママで~す。」という声と共に、”マーメイド”の演奏が始まる。「朝起きてお粥の中を覗いたら人魚が泳いでいた曲」というその曲は、スティールパンのふんわりとした音とヴァイオリンの豊かで美しい音が心地よく響き、まるで幻想的な大人のための童謡のよう。すぐそこに木々が広がるジプシー・アヴァロンに、座ったり寝転んだりしながら気持ちよさそうに聴き入る観客達。ゆったりとしたギターのサウンドも相まって、その安らかな雰囲気に、思わず眠ってしまいそうになる。
“REASON”、”龍の棲家”、”幸せの可視”では、時に、普遍的でぶっ飛んだ、宮沢賢治のようであり、映画のクライマックスシーンのようでもある壮大な詩を、ピカ☆が素朴でありながらも芯の強い声で歌い上げる。その姿は女性らしさを残しつつも、気丈さやたくましさで溢れている。
「明日も平和でありますように。」と、最後に演奏された”歌う人”。ピカ☆の歌声とギターのみで始まるその曲は、地球上の様々な人をピカ☆独自の目線で歌った、ただ生きていることを全肯定してくれるような一曲。ベースとドラムが支えるリズムの中に、スティールパンとヴァイオリンの躍るようなサウンドが加わり、その世界観は更なる広がりを見せた。
「世界中にキスしたい」という歌詞にあるように、ピカ☆の作る世界の中には愛が満ちている。人に対してだけではなく、自分の周りに存在する、全てに対して。音楽を通じてピカ☆の持つ別世界に思わず足を踏み入れてしまったような、不思議な時間であった。
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