キュウソネコカミ
夢の舞台で大暴れ
サウンドチェックの段階から、レッドマーキーは大盛況。そんなフロアを見回して、ヤマサキセイヤ(Vo./Gt.)は「いっぱいおる! 良かった、恥かかんで済んだ!」と大興奮だ。そしてリハーサルと称して”良いDJ”を全力で演奏し、オーディエンスを沸かせる。「大学の頃の夢を、一緒に見ようぜ!」と鼻息荒く挑むステージで、彼らはどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。
JETの”Are You Gonna Be My Girl”のSEに乗って再び登場すると、「どうした、フジロック? まさか俺たちが出られるなんて本気でビビった!」とのセイヤのMCを合図に”ビビった”へ。テンションMAXで飛ばすキュウソのキテレツで癖になる性急なサウンドに、フロアは一気にヒートアップする。「踊れるか、フジロック!」と煽って披露した”ファントムヴァイブレーション”、フロア中がハンドクラップに包まれた”GALAXY”と、ライヴが進むごとにレッドマーキーはキュウソ色に染まっていく。”KMDT25″では「よっしゃ、今からシンプルに盆踊りしようや」と語り、フロアに盆踊り大会を発生させてしまう。
「レッチリみたいな曲、作りました!」と披露した”ビーフorチキン”では力強いビートがオーディエンスの興奮を力強くけん引する。フロアで跳ねまわる観客を見て「予想以上に盛り上がってくれてありがとう」と満足そうに語ったセイヤだったが、続く”DQNなりたい、40代で死にたい”はブチ切れモード全開。大きなアヒルの浮き輪をオーディエンスの頭上に投げ込み、「掴むんじゃねえ!」「押すな!」「(アヒルを)キープしろ!」と観客を怒鳴り散らしながら浮き輪の上に乗ろうとする。案の定、アヒルに乗ったままひっくり返ってしまうのだった。
「これが中国四千年の歴史や!」とヨコタシンノスケ(Vo./Key.)が叫んでスタートした”お願いシェンロン”では、「筋斗雲」と書かれた黄色いボード板をセイヤが持ち出しメンバーに担がせ、その上に乗ってフロアを移動する。レッドマーキーに小田和正の”たしかなこと”が流れる中、セイヤは「そばにいさせてくれ!」「フジロック、これからも邦楽バンドを呼んでくれ! できるだけ頑張る!」と叫びながら運ばれていく。お手製の筋斗雲に乗ってバンドメンバーに担がれながらレッドマーキーを後にするセイヤの全身全霊のパフォーマンスを見ていると、ちょっとグッときてしまうから不思議だ。現実はアニメのように上手く行かない。筋斗雲も迎えに来てはくれない。でもそんな夢のない現実に抗うために、彼ら黄色いボード板に「筋斗雲」と書いてメンバーに担がせるのだ。彼らの徒手空拳のパフォーマンスにオーディエンスはハートをガッチリと掴まれてしまった。
今年のフジロックのステージでも数々のアーティストが音楽でオーディエンスに笑顔を届けてくれたが、キュウソほど爆笑と失笑のはざまにひっそりと感動を残していったバンドはいないだろう。小さいお子さんは特に釘付けになって必死に見ていた。