JENNY LEWIS
ガーリーな世界観で魅せた癒しの歌声
レッドマーキーにステージ上には、青地に白い星柄、中央には淡い虹が描かれた大きな垂れ幕が下がっている。昨年の7月にリリースされたジェニー・ルイスのソロ3rdアルバム『The Voyager』のイメージを表現しているようだ。スピーカーから、キーボードスタンド、ギターまで同じ柄で統一され、レッドマーキーがドリーミーな世界に様変わりしている。
定刻になると波の音のようなSEの流れ、バンドメンバーがステージに入ってきた。ドラマーがビートを刻み始めると、白いスニーカーに淡いパステルカラーのラインが入った袖なし短パンのオールインワンに身を包んだジェニーが登場。そのままライロ・カイリーの“Silver Lining”の演奏が始まると、多くの人が前につめよった。可愛らしい声で「Thank you!」と言い、前方のスピーカーの上で飛び跳ねながら、手拍子を煽る。アラフォーとは思えないほど変わらないガーリーな世界観にうっとりしてしまう。中盤にプレイしたライロ・カイリーの“With Arms Outstretched”では、バンドの女性ギタリストが弾くアコースティックギターのみの演奏で美しいコーラスを聴かせてくれた。背景と同じ柄のギターをかき鳴らしながら、ときにロックに、ときにしっとりと美声を聴かせるジェニー。ライロ・カイリー解散後は精神的にダウンした時期もあったようだが、こうしてフジのステージに立っている彼女は、心からパフォーマンスを楽しんでいるように見えた。最後に歌った“Acid Tongue”ではジェニーがアコギを弾き、バンドメンバーたちが1本のマイクを囲んでコーラスをするというパフォーマンス。「わたしは嘘つきだって分かっているでしょう」と切なく歌うジェニーの歌声と絶妙なハーモニーが心に響き、感動的なラストだった。
インディーロックに近いノスタルジックなカントリーと、アンニュイな歌声、ガーリーな世界観で、マーキーに集まった観客を魅了したジェニー・ルイス。猛暑になったフジロック3日目の疲れを、爽やかなそよかぜのように癒してくれた。