LIVE REPORTGREEN STAGE7/26 FRI
JANELLE MONÁE
Photo by MITCH IKEDA Text by 若林修平
Posted on 2019.7.27 07:46
ニューソウルクイーンの決意と覚悟
カンザス州・カンザスシティ出身のシンガー・ソングライター、ジャネール・モネイ。ここ十数年の間にデビューしたソウル・シンガーの中で、最も存在感・発信力のある女性アーティストと言っても過言ではないだろう。そんな彼女が初来日・初フジロック出演を果たす。
プリンスやマイケル・ジャクソン、アニタ・ベイカーなど聴いて育ち、プロになってからもあらゆるプロ・アーティストと共演・共作を果たしながら、あらゆるものを吸収しクリエイティブ・スキルを培ってきた彼女。一方で、労働者階級の家庭に育ち、黒人女性のクイアでもある彼女が、これまで目の当たりにしたり受けたりしたあらゆる差別が、彼女の中に「主張」することを身につけさせた。そんな彼女のパフォーマンスを観るために、アティテュードを感じるために、多くのフジロッカーがグリーンステージに集まった。
『2001年宇宙の旅』のテーマ曲に乗って入場して来たジャネール、彼女の象徴と言ってもいいモノクロのカラーリングをベースとしたコスチュームを身にまとっている。新作のタイトルトラックでもある“Dirty Computer”から始まった彼女のライブは、伸びやかでキレのあるメロディの“Crazy, Classic, Life”から、80年代のプリンス直系な“Screwed”へと続く。さらには、ジャネール自らギターを持ち軽快なリフを刻み込むフューチャー・ファンクな“Q.U.E.E.N.”、80〜90年代のポピュラーR&Bを彷彿とさせる“Electric Lady”、モダンR&Bバラードな“PrimeTime”と、バラエティに飛んだセットリスト構成だ。
ここまでで幾度となく驚きをくれた彼女のパフォーマンスだが、それを支えるダンサーとバックバンドのパフォーマンス力も相当なものだ。ジャネールと同様にキレッキレのダンスを見せるダンサーたち、パワーと圧の凄まじいリズム隊、まるでプリンスのようなギタープレイを見せるギタリスト、そして随所で存在感を発揮していたホーン隊。それらどれが欠けても、ジャネール・モネイのライブは成立しない。
そんな強靭なメンバーたちに支えられながら、ライブは終盤へ突入する。プリンスが亡くなる直前まで一緒に制作していたと噂の“Make Me Feel”、アカペラ・バージョンでしっとりと歌い上げた“Cold War”、そしてラストはアウトキャストのビッグ・ボーイと共作した“Tightrope”。そのアウトロ、まるでジェイムス・ブラウンのようにキメとブレイクを繰り返すジャネール。その佇まいには最高に熱量のあるソウルが満ちていた。
今日のステージに在ったのは、彼女の圧倒的なパフォーマンス自体もそうだが、何より彼女からの強いメッセージだったように思う。それらを際立たせていたのは、ステージを照らしていたバイセクシャル・プライド・フラッグ(ピンクとブルーとその中間色となる紫、LGBTQのシンボルカラー)のライティングだったような気がしてならない。人種、性差、同性愛、宗教、階級などといった属性の違いによって生まれる、全ての差別と戦い続けることへの決意と覚悟。これからも、ジャネール・モネイはアーティストとして、モノクロの衣装そしてプライド・フラッグと共にこれからも強い声明(メッセージ)を送り続けるだろう。
<セットリスト>
『2001: A Space Odyssey』Intro Song
Dirty Computer (feat. Brian Wilson)
Crazy, Classic, Life
Screwed (feat. Zoë Kravitz)
DJango Jane
Q.U.E.E.N. (feat. Erykah Badu)
Electric Lady (feat. Solange)
PrimeTime (feat. Miguel)
Pynk (feat. Grimes)
Yoga (Janelle Monáe & Jidenna song)
I Like That
Make Me Feel
Cold War (slow a cappella version)
Tightrope (feat. Big Boi)
[写真:全10枚]