FUJIROCK EXPRESS '19

LIVE REPORTWHITE STAGE7/26 FRI

THOM YORKE TOMORROW’S MODERN BOXES

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Photo by アリモトシンヤ Text by 阿部仁知

Posted on 2019.7.26 23:45

トム・ヨーク、解放

トム・ヨークが解放されたステージだった。そんな風に言ってもいいだろう。よくもまあ、こんなに生き生きと動き回って…なんて、親心のような感慨を抱いたのは、おそらく僕だけではないはずだ。

2010年のATOMS FOR PEACE、2012年のRADIOHEADに続いて3度目のフジロック出演となったトム・ヨーク。最新作『ANIMA』リリース後という絶好のタイミングということもあり、21時過ぎのホワイトステージでは、ソワソワした空気が渦巻いていた。そんな気持ちを煽るように流れる現代音楽中心のSEが止まった時、ついに彼が登場。割れんばかりの歓声がホワイトステージにこだまする。さあ、いよいよだ。

1曲目の“Impossible Knots”に続いて、トムがベースを持ち出し“Black Swan”へと雪崩れ込む。若干演奏の調子が悪そうに見えたものの、ATOMS FOR PEACEのバンドサウンドがソリッドに凝縮されたパフォーマンスは、それだけで彼の最新形が存分に感じられる。そして、つい2日前にブレグジットの中心人物ボリス・ジョンソンがイギリス首相になったことも無関係ではないのだろう、荒々しいベースとともに強い怒りをそのまま歌に込めた“Harrowdown Hill”(この曲も英国政府批判の歌だ)には思わず息をのんでしまう。

「こんばんはー!!」と日本語でシャウトするトム。今日の彼は嫌に上機嫌だ。続く“The Clock”ではポップスターさながらに手を左右に振りながら観客を煽り、“(Ladies & Gentlemen, Thank You for Coming)”ではハンドクラップを求める姿も。こんなトムは見たことがない。若干戸惑いを覚えつつも、ズンズンと重低音が身体に響くビートに乗りながら、僕らも手を振り上げる。

最初は音と映像に圧倒されてどう反応していいかわからない様子だったオーディエンスも、“Has Ended”“Amok”と続くにつれ、徐々に身体が動き出していく。吹き抜ける風が気持ちいい。縦横無尽にステージを駆け回るトムとは対照的に、定位置でクレバーにサウンドをコントロールする、20年来の盟友ナイジェル・ゴッドリッチの存在も光っている。彼がいるからこそ、トムはこうも奔放に振る舞えるのだろう。

そして、最新作から“Not the News”。次々と前景が移り変わる幽玄なサウンドスケープは、VJのタリク・バリの鮮烈な映像効果によって更に拡張され、ダイレクトに五感に訴えかけてくる。“Truth Ray”を挟んだ“Traffic”“Twist”が演奏される頃には、我を忘れて踊る僕らに、身体を投げ出すようにビートに身を任せるトム・ヨーク。最高だ。異様にフレンドリーな今日のトムには少し違和感を覚えていたのだが、この空間を通じた感覚の共有こそがトムのしたかったことなのだと合点がいった。僕らの反応を楽しみながら、テンションを上げきったトムは「どうもありがとうございました!」と本編を締めくくる。

まだまだ足りないよとばかりに拍手がこだまする中、アンコール1曲目は“Dawn Chorus”。うって変わってシンプルなピアノを基調としたこの曲でも、トムは僕らを慈しむような視線を向ける。僕らはただただそんな彼の演奏に聴き入る。なんて美しい時間だろう。ATOMS FOR PEACEの代表曲ともいえる“Default”では、曲の最中にも次々と歓声が湧き上がり、ホワイトステージは最高潮に達した。「僕らを観にきてくれて本当にありがとう」と英語で率直に感謝を述べるトム。皮肉屋の彼は本心が見えづらいが、この時ばかりはこの素晴らしい体験への感謝をこの場にいるみんなで共有することができた。

そしてまさかのダブルアンコール“Suspirium”。ピアノと歌、ゆっくりと色が移り変わるタリクのVJ。ナイジェルはスマホでトムを撮影している。リラックスしたムードのまま、この時間が終わるのを名残惜しむように、3人は去っていった。

繰り返しになるが、この日のトムは本当に生き生きとしていた。それは身体性を解放した『ANIMA』のセットだからということもあるだろうが、それ以上にここ苗場の地に集ったオーディエンスとだからこそ実現した、素直な気持ちのあらわれだったように思う。ありがとう、トム・ヨーク。

セットリスト(ライターメモ)
Impossible Knots
Black Swan
Harrowdown Hill
The Clock
(Ladies & Gentlemen, Thank You for Coming)
Has Ended
Amok (Atoms For Peace Song)
Not the News
Truth Ray
Traffic
Twist

Dawn Chorus
Atoms for Peace
Default (Atoms For Peace Song)

Suspirium

[写真:全10枚]

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7/26 FRIWHITE STAGE