FUJIROCK EXPRESS '19

LIVE REPORTWHITE STAGE7/26 FRI

TYCHO

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Photo by アリモトシンヤ Text by 梶原綾乃

Posted on 2019.7.26 21:28

研ぎ澄まされた、彼らの美意識を耳にせよ

TYCHOは元々、スコット・ハンセン(g/key/prog)率いるエレクトロニック・ミュージック・プロジェクトだったが、サード・アルバム「Awake」以降はバンド編成になっている。加えて、先週リリースされた最新作「Weather」に至っては、ヴォーカルが追加された。TYCHOの音楽的探求方針に戸惑いを感じたファンもいるかもしれないが、今日見たパフォーマンスは、TYCHOの世界そのもので、それはそれは美しい景色だった!

ステージ前半は、ザック・ブラウン(b,g)、ロリー・オコナー(dr)、ビリー・キム(key,g,b)らバンドのメンバーとともに、新旧曲を織り交ぜて披露。一曲目“A Walk”で、海中で漂うかの如く浮遊感を含んだ音が会場を包む。続いての“L”では、はらりはらりと音の粒がこちらに降り注いでくる。1曲1曲の最後の音が、ふっと消える瞬間まで、余韻が丁寧に作られていて、切なさで胸がいっぱいになる。リズムの作りとしては、スコットの操るプログラミングの低音と、ザックが持ち変えるベース、そしてロリーの力強いドラミングで成り立っているものだと思われる。演奏に人の手が加わることによってバンドの体温が上がることもなく、かといって温度を下げることもなく、なんだか絶妙なところを守っている。ここに不思議な心地よさが生まれるのだろう。

中盤はヴォーカルにセイント・シナーを迎えての“japan”。白地に黒い線が数本刻まれた独特な衣装を身にまとって現れた彼女、見た目から、声からどこを切り取ってもシャープで整っていて、無駄がない。声の抑揚、メッセージ性などは限界まで削っているのだろうか?フラットでさっぱりとした地声、透明感にあふれたファルセット。スコットは彼女の歌声を聴いてすぐ、確かな手ごたえを得たようだ。彼がそう思うのも納得である。

終盤は、ふたたび4人に戻ってから、観客とクラップで一体となった“Awake”。低音をバリバリときかせた“Horizon”、カット&ペーストで紡ぎ出された音像がきらびやかな“Epoch”と、アルバム表題曲&人気曲を連発の大サービス。最後は再びヴォーカル曲で締めるという三部構成で、惜しまれつつも幕を閉じた。

ドリームポップの心地よさと、アンビエントの哀愁など、さまざまな顔を持ち合わせているTYCHOの音楽。それでいて、音や余白はすべて必然性にあふれている。音に込める熱はあつすぎず冷たすぎず、有機質と無機質の中間を目指しているよう。それはヴォーカルが乗っても、同じだった。音や要素を引き算していくことは、簡単なようで難しいことだと思うのだが、TYCHOはいつもそれをすんなりとやり遂げる。これからも引き続き、その美意識を磨いていってほしいと思うばかりだ。

[写真:全10枚]

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7/26 FRIWHITE STAGE