LIVE REPORTWHITE STAGE7/27 SAT
UNKNOWN MORTAL ORCHESTRA
あっけにとられ、いずれトリコに......
未知の人間オーケストラとはよく言ったもので、音源だけ聴いていたら現代のサイケデリアとメロウネスを表現する、一筋縄ではいかない手強そうなバンドというイメージを持ったままだったかもしれない。少なくとも初めてライブを見た私自身は少しそんなイメージを持っていた。持っていたのだが……。
アーティスト写真でアジアのテイストを持ったシックでおしゃれなファッションを着こなすルーバン・ニールセン(Vo/Gt)は、黒縁眼鏡をかけ、ラメなのか光るプリントが派手なTシャツを着て登場。ベーシストと美しいハーモニーを聴かせる“From The Sun”にビートが入った瞬間、バスドラムの風圧にレインジャケットもフードも揺れる。ホワイトステージの音響は今日もえげつない。ガッとオーディエンスが湧いたところで、ギターソロを弾きながら、こともなげにフィールドに降り、オーディエンスの間をソロを弾きながら練り歩くという、初っ端からこれ!?という、驚きの展開を見せたのだ。ルーバンのいるところをテレキャスターを掲げて目印にし、先導していくスタッフもたくましい。ステージに戻るときも片手をついてひょいと戻る。なんなんだこの人のインナーマッスルの強さは。
ルーバンに目を奪われていたが、メンバー全員、相当な辣腕だ。特にムーグを弾いたり、サックス、トランペットと忙しい年配の男性(彼が何者なのかは後で分かる)、シンプルだが強烈な打音でバンドを支えるドラマー、生ベースとシンセベースを1曲の中でも弾き分けるベーシスト、穏やかな笑みを浮かべてメロウなフレーズを繰り出すキーボーディスト。全員が見たことのないタイプのセクシーさを持ったプレイヤーで、終わる頃には全員のファンになってしまった。
改造ムスタングなのだろうか?エフェクターの組み合わせなのか、かなりファズというかノイジーなギター、そしてエレキシタールもノイジーなサウンド。コードではなくリフとフレーズで、歌いながら弾くスタイルは歌とギターがルーバンならではの構造で連動しているとしか思えない複雑なものだ。何がどうしたらそんなフレーズが思いつくのか。スクリーンをポカンと見つめる人、そのすごさにどんどん興奮が増す人、ただただ揺れる人。
メンバー紹介で、年かさの男性がルーバンのお父さんだと分かると、オーディエンスから「おとうさーん!」という声援が飛ぶ。音楽の趣味が似ているとかいうレベルじゃない独特な楽曲を親子で奏でているという事実に感銘を受けてしまった。しかもお父さんの吹くサックスやトランペットが鋭さと洒脱を加味して最高なのだ。いや、世の中は広い。こんな親子バンドが存在するのだから。
フュージョン的なコード感のある“Ministry of Alienation”、イントロで歓声が上がった“Multi-Love”では昼間の自然の中で夜のムードのあるダンサブルな空間が生まれ、さらに横揺れする人が増えていく。ラストはエキゾチックなアフロビート味の“Can’t Keep Cheking My Phone”で、ライブ開始当初は想像もできなかった親密さがホワイトステージを包み込んだ。
チルウェイヴやフューチャーファンク、いやあらゆる時代の音楽やジャンルを貪欲に消化して、このバンドならではの、この世のものと思えないビザールなアンサンブルとグルーヴを生み出している。でもそれは中毒性が高く魅力的で、この音楽を作り出すメンバーの人間力に圧倒されたのだった。
[写真:全10枚]