FUJIROCK EXPRESS '19

LIVE REPORTWHITE STAGE7/28 SUN

HYUKOH

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Photo by 古川喜隆 Text by 石角友香

Posted on 2019.7.28 17:28

アジアパワーというより、抜きん出た個の魅力

今年のフジロックはアジアルーツのアーティストが熱いという実感は初日のMITSKIや、ライブとDJを行うKHRUANGBIN、YAEJIらへの注目度の高さで予感していた。HYUKOHももはや韓国を代表するロックバンドという形容では収まりきれないワールドワイドな活躍で知られるバンドだ。

楽曲の良さと演奏そのもので見せるライブはサービス抜きの質実剛健なもの。以前、2017年にnever young beach(以下、ネバヤン)をゲストアクトに行われた来日公演の際に驚いたのだが、K-POP全般を愛するファンはフジロックでもやはり散見された。というか、彼女たちのアンテナの張り方は実に幅広い。が、今回は作品も浸透し、それこそネバヤンの安部勇磨が共演以降、親しくなり、衝撃を受けたという新曲“LOVE YA!”をラジオで紹介したこともあり、奇しくもネバヤンと同日出演となったこの日、ホワイトステージに確認しに足を運んだ人も多かっただろう。

ブルーのセットアップを着たオ・ヒョク(Vo/Gt)は最後までサングラスを外さず、シャイな感じで感謝を述べるにとどまった。奇抜なシルバーのパンツにパープルのノースリーブというイム・ヒョンジェ(Gt)、ひたすらパワーヒットする上裸のイ・インウ(Dr)、デビュー前のバンドマンのようないでたちのイム・ドンゴン(Ba)と、今日は点でバラバラに好きなものを着ている感じだ。

しかし音を出せば軍靴の響きのようなSEに導かれ、ミニマルにタイトな音を重ねてソリッドなアンサンブルを聴かせる“Wanli”、ポストパンクなタイトなドラムが焦燥を掻き立てる“Citizen Kane”などで、バンドの骨太さを伝える。しかもオ・ヒョクのボーカルは特段張上げるでもなく、よく通る声質で、厳選した音に似合う表情豊かなものなのがこのバンド最大の魅力だ。

アジアの都市をタイトルに冠した曲がいくつか選曲され、自分たちの地元であるソウルに対してはダイナミックなビートの“Goodbye Seoul”、特徴的な機械的なドラムと、リフに80年代の日本のAOR的なものをにじませる“Tokyo Inn”など、彼らの眼に映るアジアが作品になっていることも興味深い。HYUKOHのフィルターを通したロック、ファンク、ポストパンクなど、比較的ハードな曲は“Settled down”のスリリングで厚みのあるプレイで昇華された印象。一旦はけてアンコールしたわけではないのだが、そのあとはガラリと印象を変えて、この場を一つにするような選曲で届ける。ベースのイム・ドンゴンがアコースティックギターを担当し、親密で素朴な優しいメロディを持つ“Gang Gang Schiele“を4人の息を合わせて鳴らす。特にボーカルのメロディライン、語りかけるようなオ・ヒョクの表現力には耳を済ませてしまう。そして、冒頭の話題にもあった、「ドント・ビー・アフレイド」から始まる、愛だけが溢れる“LOVE YA!”の包容力。ビートルズの時代から変わらない、何か大事なことを伝えたい時のアレンジや構成を持つこの曲。もしかしたらこの曲への思いをオ・ヒョクが語れば、初めて聴く人には感動的だったかもしれないが、それをせずに演奏に託したことは彼やバンドの性格なのだろう。

誰にも頼れないとき、ふと夜中に目が覚めてしまったとき、この“LOVE YA!”という曲に随分助けられた。もちろん彼らの魅力はそれだけじゃないが、世の中には無償の愛、仲間からの愛が存在することを伝えるこの曲は、この日のホワイトステージでもっと響いてよかったと思う。必ず再訪してほしい。

[写真:全10枚]

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7/28 SUNWHITE STAGE