FUJIROCK EXPRESS '19

LIVE REPORTRED MARQUEE7/26 FRI

TORO Y MOI

  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI
  • TORO Y MOI

Photo by 安江正実 Text by 石角友香

Posted on 2019.7.26 21:36

チャズ・ベアー流・最適温度のファンク

入場者数が多い上にいきなりの土砂降りに見舞われると、いつもはいい風を送り込んでくれるスペースから容赦なく雨が叩きつける。雨宿りのためにTORO Y MOIを見にくる人もいれば、もはやレインウェアを着れば混み混みのテントの中より外の方が広いとばかりに、雨に打たれながら踊る人もいる。雨宿りのつもりで訪れ、「かっこいい!」と嬌声を上げている人もいる。その混雑ぶりに「埼京線よりマシかな?」と満員電車に例える人も。

それでも一定の秩序を守って揺れる人たちの割と穏やかなテンションのおかげで、なんとかチャズ・ベアーによるプロジェクト、TORO Y MOIの最新のステージを見ることができた。夕立で気温が下がったことも、比較的“満員電車”を心地よいものにしてくれたところもある。

ぐっとファンキーだけれど、ちょっとシニカルな視点でフリーランスであることの文字通りの自由と、自由すぎる状況にいると不安になってくる心境を歌った“Free lance”。この曲を含む新作『アウター・ピース』。ミニマルな構成要素ながら十分にグルーヴィで、東京でもNYCでもロンドンでも、世界中のクラブやベッドルームで過不足なく響く嫌味じゃないオシャレなこの音楽がライブでどう鳴らされるのか? そこが最大の興味の対象だった。

定刻にステージが新作のアートワークのようなピンクに染められると、ベーシスト、キーボーディスト、ドラマーという布陣。オープナーは“Rose Quatz”で、現在のライブアレンジが施されている。3曲目には日本でもTORO Y MOIの名前を広く知らしめたアルバム『Underneath The Pine』(通称:グレープフルーツのジャケットのアルバム)から“Still Sound“が披露されるが、リリースから8年という時間をあまり感じさせない。今のバンドの肝はベースだと思うのだが、それがどの曲でも堪能できる。さらに言えばベースラインとスネアこそが命であるファンクという音楽を2019年にアップデートしたサウンド・プロダクションと言えるだろう。

ライブアレンジでもコンパクトに1曲1曲を詰めてきた様子で、ちょっと淡白ではあるが、チャズ・ベアーという人の音像に対するセンスが過不足なく伝わるのだ。決してトゥーマッチにならないボーカル、オルタナティヴでラッパーともR&Bシンガーとも、ポップスシンガーとも違う演者としての佇まいは日本のユース、アジアのユースにも応用可能なフィロソフィをまとっていて、それも彼の息の長い人気を支えていると感じた。

キャリアの中のさまざまなアルバムを横断しつつ、今のアレンジで届けてきたチャズ。メンバー紹介をした後に、新作の中でも中毒性の高い“Free lance”をラストにセット。レッドマーキーの外でも、あのボイスエフェクトを真似したくなる「アアアアアアアアアアア」を歌っている人は少なくなかった。

爆上がりするわけでもなく、でも大人数でパーソナルと言っていいようなグルーヴを研ぎ澄まされた音像で楽しむーーこんなこと、大雨のレッドマーキーでなければなかなかない。まぁもちろん、願わくば隣の人に遠慮しない場所でこのライブを踊りながら楽しめたら天国だろうな、とは思うけれど。不思議な一期一会がその場では生まれていた。

[写真:全10枚]

TAGS
7/26 FRIRED MARQUEE