LIVE REPORTRED MARQUEE7/26 FRI
突然少年(selected by ROOKIE A GO-GO)
全ての出会いを音に昇華した40分
10時半頃、レッドマーキー横を通ると、早くも大武茜一郎(Vo/Gt)が絶唱するサウンドチェックが聴こえた。もうその時点で何かこみ上げるものがあった。自慢できることではないが、特段、彼らの活動をこの1年ずっと追ってきたわけではない。フラットに聴いてきたつもりだ。それでもサウンドチェックの一瞬の音に尋常ならざるものを感じた。誇り高き、昨年のROOKIE A GO-GOから、メインゲートを潜り抜けた勝者の凱旋だ。
「おはようございます!突然少年です。よろしくお願いします!」という大武の第一声からじっくり記憶や感情を立ち上がらせるように全員が楽器を鳴らす。しょっぱなから盛り上げるとか、そういうことではなく、まさに彼らが気が遠くなるほどのライブを重ね、出会ってきたあらゆる人のことを空間に投影するような演奏だ。自らのスタイルを突き通す意地のようにも思えるし、彼らにとっては自然なことなのかもしれない。“開戦前夜”を渾身の力で演奏し終わったあと、横や後ろを見渡すと、前方で熱心に声援を送っている、まさに旅の途中で出会った人たち以外に、徐々にレッドマーキーに人が集まってきている。
「ここに来れたのはギターのおかげです」と、彼らが世界と繋がるにも、世界を拒絶するにも最大の武器について歌う、その名も“ギター”を演奏し始める。〜武器でもありラブレターでもある〜ギターについてそんなことを思わせてくれるバンドが今、目の前にいることに立ち尽くしてしまう。感動でもあり、脅威でもありちょっと嫉妬でもあり、でも最終的には歓喜の感情だと思う。
立て続けに彼らの現状の代表曲と言えるオルタナティヴロックのDNAを継承し、自分たちの音と言葉でかき鳴らす“火ヲ灯ス”。カニユウヤ(Gt)の演奏は、感情の垂れ流しでも爆発燃焼のどちらかだけではない、なぜその音なのか、プレイなのかを感じさせる言葉やダンス以上に雄弁な芸術だ。去年、彼はフジロックで聴いたイースタン・ユースのギターの音だけで涙が出たと言っていたが、その人にしか鳴らせない音がある。それはカニもそもそも持っていると思う。その音に慄然としていたら、大武がフロアに降り、観客の中に乗り込んでいる。突き動かされる何かに素直にしたがっているだけ。演出でも賑やかしでもないその行動の後で「初恋の相手を呼んだけど、きてくれませんでした」という一言が切なかった。
タイトルは“ひとり”だが、まるでフジロックのアンセムのように聴こえたその曲の内容は概ねこんな感じだ。眠くなったら一緒に寝よう、お腹が空いたらご飯を食べよう、好きな人には大好きって言おうーー苗場で聴くとなんてストンと腹落ちするのだろう。ライブを見ている人の表情がまっすぐステージに注がれていくのが体感できたくらいだ。
登場した時、上裸だったのは戸田源一郎(Ba/Cho)と良原涼太(Dr/Cho)だけだったが、ラストナンバー“22歳のやくそく”の頃には、全員汗まみれの上裸になっていた。出会った人たち、出会った音楽からできあがった突然少年の音楽。最後に大武が「サンキュー、マイ・フレンド、マイ・ファミリー」と、アルバムタイトルと同じ言葉を届けたが、その言葉は彼らを駆動する軸だ。代わり映えがしないようで、少しずつ変わる毎日を生きる、ここにいる人たちの表情に改めて見入る。清々しい顔が並んでいた。
[写真:全10枚]