FUJIROCK EXPRESS '19

LIVE REPORTRED MARQUEE7/27 SAT

DANIEL CAESAR

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Photo by 北村勇祐 Text by 梶原綾乃

Posted on 2019.7.27 22:24

悲しみを内包した優しさ

この日レッドマーキーのメイン・アクトでトリを飾るのは、カナダのシンガー・ソング・ライター、ダニエル・シーザー。弱冠24歳で、アルバムはグラミー賞にノミネートし、昨年ホワイトステージに出演したカリ・ウチスとの曲“Get You”が大ヒットするなど、R&B界期待の若手である。舞台は豪雨の中、やや浸水気味のレッドマーキー。たまたま休んでいる人も、彼を目当てで待っていた人たちも、しっとりと耳を傾ける先は、まぎれもなく彼だった。

1曲目は、“Cianide”。なめらかな地声と、優しく包み込んでくれるようなファルセットに、早くも歓声が上がる。“Love Again”は、地響きのような低音と艶めいた歌声が絡み合い、想像以上にセクシーで踊れる曲に仕上がっていた。最初のドラムの音だけで大歓声の“Japanese Denim”とか、ダニエル自ら鳴らすアコギの乾いた音がこだまする“Complexties”などで途中何度か、雨が止んだかと錯覚するくらいの静寂を感じた。でも、レッドマーキーの出口をみるとそんなこともなくて、とても不思議だ。彼の歌声に耳をすますと、ほかの世界をシャットアウトしてしまうくらい、ぐいぐいとその世界に引き込まれるのだろうか。

演奏中、スクリーンには終始「DANIEL CAESAR」の文字と、戦争、砂漠、子供、女性などの映像がとめどなく流れていた。「Freudian」のジャケットにも登場する、ブルガリアの「友愛の塚」(戦闘追悼碑)を思わせる、力強くももの悲しい主張。トップアーティストであっても、どこか憂いを帯びた彼の眼差し。それは「CASE STUDY01」で語られる、実家の教会を抜け出したエピソードの傷跡なのかもしれない。

みんなが待ちに待っていた“Get You”も披露するなど、あっという間の13曲。最新のヒップホップ+R&Bを鳴らすトラックの数々に、祈りと悲しみが詰まった彼の優しい歌声がじんわりと響く。大雨で弱った私たちの心からの支えは今、彼だけだ。

[写真:全6枚]

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7/27 SATRED MARQUEE