LIVE REPORTRED MARQUEE7/28 SUN
TAKKYU ISHINO
Photo by Masanori Naruse (Official Photo) Text by 紙吉音吉
Posted on 2019.7.31 03:08
フジロック、苗場最後の朝に虹がかかった
2日目。これまで経験したことが無いような豪雨に見舞われた今年のフジロック。かなりきつい思いをした人もたくさんいたと思う。僕たちエキスプレスのスタッフも同様に機材を壊した者もいたし、テントが流された者もいた。GAN-BAN SQUAREでの石野卓球のステージは、天候不良によりキャンセルされた。
3日目。昨日の豪雨が嘘のように晴れ渡った苗場。これが山の天気か。そう思わせる、いわばフジロックを象徴したような天気だった。あっという間に時間は流れ、グリーンステージではお決まりの“Power To The People”がかかる。ここから会場内は、レッドマーキーの時間となる。最後まで楽しもうというフジロッカー、そして今年もフジロックに終止符を打つ石野卓球を見ようと残るフジロッカーがたくさんいた。
卓球のステージをどのように感じただろう。今年ほど、斜めに見られる年はなかったのではないだろうか。音楽以外でのニュースが飛び交い、SNSではさまざまな憶測が語られた。なにか特別なことが起きるんじゃないか…。そう期待した人も多かったのではないか。いつもなら、“その期待は裏切られ、通常営業の卓球のステージ、期待を我関せずといつも通りのステージを展開し、観客を沸かせた”なんて書いていたかもしれない(きっと本人は今年もそういう感じなんだろうけど)。しかし、今年、我々フジロッカーは、いつもとは違うものを見たんだ。
もろもろの仕事を終え、レッドマーキーに到着したのは、朝4時半を回っていた。あと30分。これで今年のフジロックが終わってしまう。そんな悲観と焦燥が入り混じった気持ちでレッドマーキーを覗くと、大勢の観客が踊っていた。サイドの出入り口からは、人が溢れんばかり。後方までしっかり埋まっている。毎年この時間のレッドマーキーで、ここまで観客がいることはそうないので、かなり驚いた。空はとうに明るくなっている。フジロックの終わりが刻一刻と迫るなか、最後になる卓球のステージを堪能すればするほど、物憂げな気持ちになっていく。卓球はと言えば、たんたんとDJをしているように見える。後半も後半、“富士山”がかかり、「おお! 今年のフジロックは、富士山で始まり、富士山で終わるのか! 粋だねぇ」なんて思ってテンションがあがり、観客と一緒になって、ふじさーんを連呼。素晴らしいステージだった。本当にありがとう卓球さん。なんて思っていたら、ここで“虹”がかかる。そしてバックには、今年のフジロックの映像が。
ふりかえる事もたまにある
照れながら思い出す
遠くて近い つかめない
どんな色か分からない
ゆっくり消える虹みてて
トリコじかけになる
この時間、ここに居られて本当に良かった。今年のフジロックのハイライト。過酷なフジロックだったからこそこの曲が効く。瀧のことを思ってこの曲が効く。最終日だからこの曲が効く。いろんな共感があったと思う。だからこそ、あの時間にあの盛り上がりがあったんだろう。割れんばかりの歓声と苗場にかかった“虹”がフジロックのカーテンコールとなったのだ。ふとステージを見れば、ウルトラのツアーTシャツを纏った卓球。なんだいるんじゃん、瀧。今でもこの文章を書いていて鳥肌が立っている。
[写真:全3枚]