FUJIROCK EXPRESS '19

LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN7/26 FRI

NST & THE SOUL SAUCE MEETS KIM YULHEE

  • NST & THE SOUL SAUCE MEETS KIM YULHEE
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Photo by 平川啓子 Text by 三浦孝文

Posted on 2019.7.26 16:19

平和は自ら行動し創るもの

フジロック初日の昼下がり。風が心地よく通り抜けるフィールドオブヘブンに登場するのは、韓国からやってきたレゲエ/ダブバンドのノ・ソンテク&ザ・ソウル・ソース・ミーツ・キム・ユルヒだ。

ここヘブンと言えば、想起されるのは2002年のフジロック。大阪のデタミネーションズに、東京のスカ・フレイムス。マイケル・バミー・ローズ、トニー・グロウコ・ユタ、エディ・タンタン・ソーントンを据えたリコ・ロドリゲス・バンド。そして、ザ・スカタライツ。リコは、スカ・フレイムスとザ・スカタライツのステージに飛び入り参加し、ヘブンはスカ・レゲエ天国と化していた。フジロッカーの多くがレゲエやスカの魅力にズブズブと取り憑かれてしまったのはここでの、あの瞬間と言って間違いないだろう。

そんな最高の舞台で、総勢7名のバンドがカリブ海の潮風を感じるダウンテンポな音を繰り出し、“The Night of Mt. Naeba”からゆったりとステージがはじまった。初出演した2016年のフジロックにインスパイアされたバンドリーダーのノ・ソンテクが作った曲だ。バンドメンバーそれぞれが自分のパートでリードを取り、自己表現をしていくと、心地よい音に誘われてかステージ前方に続々と人が集まってくる。

2曲目で満を持して、朝鮮の伝統的民俗芸能であるパンソリのシンガー、キム・ユルヒが登場した。数々の賞を受賞している歌い手である。ダビーな重たい音の上を、歌声が流麗に飛び回りつつも迫力を持って迫ってくる。2016年から一転して、単なるレゲエバンドから完全に脱皮したスペシャルなバンドがここにいる。昨年、パレスオブワンダーを沸かせた民謡クルセイダーズを思わせるようなハイブリッド感に思わず膝を打ってしまう。影響を受けた音楽に自分の出自の音楽の血を混ぜる。こうして新鮮な音楽が産まれてくるのだなぁ…。

扇子を手にして、情感たっぷりな声でヘブンを包み込むキム。この胸を衝いてくる感じ。これが「恨」(はん)というものなのだろうか。お経のように厳かでもあり、そして日常を生きる民の息遣いが聴こえてくる。キムが語りかける唄にバンドも呼応して、ビートが熱を帯びどんどん磨きがかかっていく。ドラムとパーカッションの超絶な掛け合いに、オーディエンスから拍手喝采が飛び交い、みんなが笑顔でダンスしまくるのだ。

リーダーのノ・ソンテクが、最新作『Version』のミックスと共同プロデュースを手掛けた、LITTLE TEMPOやOKI DUB AINU BANDの内田直之氏を感謝とともに紹介し(ミキサーブースにいたと思われる)、最後の最後まで場に渾身のグルーヴを醸成して、最後は一同並んで笑顔で手を振ってステージを後にした。

ピースサインの旗を終始はためかせていたオーディエンスも印象的だったが、バンドもオーディエンスも笑顔にあふれた、ピースフルなステージだった。ここのところ、何かと情勢が思わしくない韓国と日本だが、こうして音楽でひとつになれるのだ。難しい状況の中、リスクを覚悟で音楽の可能性を伝えに苗場までやってきてくれたことに心から感謝したい。

[写真:全10枚]

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7/26 FRIFIELD OF HEAVEN