LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN7/27 SAT
GEORGE PORTER JR & FRIENDS
Photo by MITCH IKEDA Text by 三浦孝文
Posted on 2019.7.28 03:33
天国のアート・ネヴィルに捧げる極上のファンクネス
フジロック開催の直前に亡くなってしまったザ・ミーターズの創設者のひとりであり、ニューオーリンズ音楽の精神的支柱でもあった、
フジロックの二日目もあっという間に闇に包まれた。雨がどんどん強まり雨具程度では防げない様相を呈してきたフィールド・オブ・ヘブンに、アートへの敬意と追悼を表するということもあるだろう。相当の数のオーディエンスが集まっている。
開演時間の19時ちょうどに、バンドメンバー全員がずらっと登場。ジョージがトリオ編成でライヴを行う際のメンバーであるマイク・ レムラー (キーボード) とテレンス・ヒューストン (ドラムス)、ニューオーリンズを代表するファンクバンドのダンプスタファンク(Dumpstaphunk)のリーダーにして、ネヴィル・ブラザーズのアーロン・ネヴィルの息子、アイヴァン・ネヴィル (Hammond B3 organ)、ダンプスタファンクに所属する2名のギタリスト、アートの息子のイアン・ネヴィルとトニー・ホールという布陣だ。
ジョージが野太い声でリードする“More Time”で、のっけからどファンクなグルーヴを出現させると、会場全体の熱が一気に上がるのを感じた。打ちつける雨のことなんか忘れて笑顔でビートに合わせ手を叩き、身体をスウィングさせている。それに応じるかのごとくバンドは、渾然一体となってがっぷりとファンクネス度数を上げていくのだ。ステージを照らす灼熱の赤の照明も抜群の演出。続く“Liver Splash”では、トニー・ホールによるエディ・ヘイゼル顔負けの歌い上げるギターソロのあまりの恰好よさに、思わず声を上げてしまった。
テレンス・ヒューストンのドラムも特筆しておきたい。ニューオーリンズ・ファンクと言えば必ず出てくる、「セカンドライン」と呼ばれるリズム。地元のお祭りやお葬式のパレードのブラスバンドの後ろで、空き缶などを叩いたり、踊りながらついてゆく人々の列が繰り出す音が由来なのだが、いまひとつピンと来ていなかった。テレンスの繰り出す、リズムのメインを押さえつつも終始ドラムソロをしているかのような手数の多さで、叩き出しているのを目の当たりにして、「これがそうか!」と自分の中で腹落ちしたのだ。やはり生で、現場でこそ本当に発見できるのだと実感した次第だ。
レゲエ風のカリブ海の潮風を“Soul Island”でパッと会場が華やいだ後は、「ア~ヤッ!」の掛け声から満を持してミーターズの超名曲“Sissy Strut”が投下された。アートに捧げるがごとく、アイヴァンが弾く、跳ねまくるオルガンの鳴りがたまらない。もはや降りしきる雨のことも、レポートのことも忘れて踊り狂う自分がいた。見渡すと会場全体が同一の状態。フロアを見やるジョージも笑顔でご満悦のご様子だ。ステージもフロアも笑顔で満ちている。
“What’cha Say”からそのままなだれ込んだ“Fire On The Bayou”。年輪を感じさせるジョージの「匠」という言葉がぴったりなソロに、テレンスが繰り出した雷神様かというほどの超絶ドラムソロを挟み、みんなでフックを合唱して歓喜のステージを締めくくった。バンドメンバー同士熱くハグし、会場に集まったみんなと集合写真を撮影。名残惜しそうに笑顔でたたずむジョージの姿が忘れられない。
鳴りやまない拍手と歓声に、バンドがまさかのカムバック。イアンがブルージーでたまらないフレーズを奏で“People Say”でバンドもオーディエンスも完全燃焼。踊り倒していたら、最後には雨が上がっていた。まさしくヘブンがファンク天国と化したステージだった。アートも天国で今夜の光景を笑顔で見下ろしていたことだろう。
[写真:全10枚]